韓国債券市場の大口投資家の一つとなるタイが、ここ数年続けざまに韓国の債券を売却し、金融当局を一時緊張させたといいます。タイは2008年と09年の2年連続で最大債券投資国となり、09年末には債券保有残高が16兆7000億ウォン(約1兆2000億円)に達していました。これは、韓国の債券に投資した外国系資金の30%に当たります。しかし、タイは10年から債券を売却し始め、昨年末には債券保有残高が9兆ウォン(約6600億円)台に縮小しました。今年も、9月末までに3兆ウォン(約2200億円)以上の投資金を回収しました。
1997年のアジア通貨危機がタイ・バーツの暴落で始まったことから、金融当局はタイの「異常動向」に目を光らせていたといいます。国際投機筋によるバーツ攻撃など、何か表沙汰にできない事情のために投資金の回収を急いでいる可能性もあるためです。
金融委員会があたふたと状況把握に乗り出しましたが、結論はやや拍子抜けするものでした。韓国の国債格付けが引き上げられた影響で、国際金融市場で韓国国債に対する投資需要が高まった結果、国債価格が大きく上昇したため、差益の獲得に乗り出したというのです。また、今年に入りウォンが高くなったため、韓国の債券を売ってドルに換えれば為替差益が得られるということも理由のようです。
タイ国内の事情もありました。昨年10月に発生した50年ぶりの大洪水を受け、タイでは多額の復興資金が必要になったのです。
タイの韓国債券売却が「異常兆候」ではなく、韓国の格付け引き上げや為替のためだったことが分かり、幸いです。今回は大きな問題にはなりませんでしたが、不測の事態に備え、今後も外国系資金の動向把握に努めなければなりません。