GS美神異聞GS横島
第二章:横島の事情 その1
横島条例事務所がオープンして約一ヶ月
GS協会からの依頼やICPOからの協力要請等いくつかの仕事が来ていた。
さすがに美神事務所の様に億単位の仕事ではないが楽に数百万の仕事料に小鳩目を回し、しばらく遠いところへ行ったっきり帰ってこなかったりした。
「すごいです!こんな金額小鳩見たことありません。横島さんって本当にすごいんですね」
「当然ですよ、横島さんは超一流のGSですよ♪」
週の何日かは事務所に来ている小竜姫はご機嫌で小鳩と話し込んでいた。
普通、新設の事務所にはこんなにすぐに来ないだろう。その証拠に広告は出したのに来ている仕事は皆身内からである。横島はS級であり、その実力は非常に高い。
高いが世間の見る目は”美神令子除霊事務所のバイトあるいはパシリ”でしかない。
それどころかアシュタロスの一件では美神や西条は英雄のように扱われたが横島はあちら側の手先としてマスコミにも広く顔を知られてしまった。
その後のフォローにICPOの公式発表で潜入捜査をおこなったと報道をした。
しかし、当の横島は大量の霊力消耗の為に体内に取り込んだ魔族の霊気構造に対する拒絶反応が起き妙神山の結界の中でハヌマンやヒャクメに色々と治療をされており、人前にでることはできなかった。
本人のでない報道は真実味に欠けていたらしく、一部では未だ横島を妙な目で見る人間も多くいる。
特に大手企業のトップなどはそういう噂のある人間は使いたくはないということだろう。
「俺はそんなご立派な人じゃあ無いですよ。(惚れた女を犠牲に生きてる最低野郎だ)」
自嘲気味に笑う横島に小竜姫は俯き、雪之丞は何かを言おうとして言葉を飲み込み、何も知らない小鳩とタマモは頭上に大きなクエッションマークを浮かべていた。
「そういえば、今日は美智恵さんは来ないんですね。」
話題を変えるように言う小竜姫に小鳩が答える。
「ええ、何でも美神さんの事務所に用があるとかで今日はいらっしゃらないそうです。」
「そうなんですか?」
小竜姫もよく事務所に顔を出すが美智恵はほぼ毎日ひのめを連れて事務所に来ていた。
おかげでここには、ひのめのおもちゃから離乳食が常備してあり、ベッドまであったりする。
もちろん美智恵が持ち込んだ物だがこの事務所は全員が子供好き(タマモはあまり得意ではない様だが、雪之丞は小さい頃施設にいたため実は一番子供慣れしていたりする)のため、たまに、預かったりしているためである。
美智恵にどういう思惑があるかはまた別の話である。
最近、しゃべるようになり、ちょこちょこと歩き回るひのめを美神事務所では少々持て余していたせいもあるが、毎日いやな顔一つせず相手をする人がいる(事務職の小鳩が必ず事務所にいる)ここに預けられるようになりより一層、横島になつくようになっていた。
「お時間はいいんですか?横島さん」
思い出したように言う小竜姫に横島は時計を見る。
「いけね。雪之丞、タマモ時間だ。頼むな・・・」
「おう、任しとけ。きっちりおまえの代理を努めてやるさ」
「大丈夫、雪之丞がヘマしないようにちゃんと見てるから・・・」
二人が言い合いながら出て行くのを見つつ横島は、肩をすくめながら荷物を片付け始めた。
「じゃあ、小鳩ちゃん俺は今日から三日ほど留守にするけど後を頼むね。」
「はい、妙神山ですね。お仕事は横島さんの代わりに雪之丞さんが入ってくださる形で今まで通りに受けておきますね。」
いくつかの書類のファイルを棚にしまいながら小鳩が答える。
「うん、定時になったら鍵掛けて上がっちゃって。鍵は持ってるよね?」
「はい、ちゃんと。行ってらっしゃい横島さん、小竜姫様」
出て行く二人を見送る小鳩だった。