GS横島の選択

 

第九章:蘭玲と横島

 

 

今、横島は桃園を散策している。案内についているのは白い装束に白い髪そして琥珀の瞳を持つ見た目3〜4才位の少年である。

実際の年齢は判らないが現在この瑤地にいる男は横島とこの少年の二人だけであった。

横島を拉致る事ばかりに気を取られた二人は蟠桃会の日より一週間も早く横島を瑤地へと担ぎ込んでしまったのである。

本来であれば蟠桃会以外での男性の瑤地入山はどのような理由があろうと許される物ではなく、横島が入る事など出来ないはずであった。

ところが少年という特例が現在いる上にタマモの帰還(?)は瑤地にとって大きな事件でありそれに紛れた観もある。

アシュタロスの変は此処にも伝わっており、少なからず注目されている。

人界のような建前報道など無く仙界としての独自に情報収集は行われておりそれは規制することなく瑤地及び崑崙の興味を持った全ての者に伝えられていた。

当事者である横島の名は当然知られており、少なからず瑤地の娘さん達(瑤地にいるのは仙女だけではありません。未来の仙女をを目指すまだまだ俗世にまみれたお嬢さん方も大勢おります)の興味を引いてもいた。

何よりも、金母自ら

 

「横島殿は私の客人として迎えます。尚、彼の瑤地内での行動については別に規制をするつもりはありませんので各々自己の責任を持って自由に接するように」

 

と横島とどうにかなっても私は知りませんよご自由にとのお言葉をどう捕えたのか彼の周りにはあまり女性陣は集まってはこなかった。

横島自身そんな気は更々無かったので気にしてはいなかったのだが。

そのせいか横島が目覚めてからずっと入り口の所からのぞき込んでいた少年、白虎族の翠蓬(スイホウ)と仲良くなっていた。

元々子供好きな男である特に金母より行動規制を受けなかった事もあるが二人で散策として桃園などをよくうろついていた。

正確に言えば現実逃避の延長上にあるのだったが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

話は横島が再び目を覚ました時に戻る。

 

西王母が横島の様子を見て出て行くのと入れ違いに部屋に入ってきたのは白い髪に白い瞳白い服と白尽くめな女性。

凛とした立ち姿は武人のそれであり、小竜姫を思わせた。その女性は静かに片膝を付き横島に挨拶をした。

 

「お初にお目に掛かります横島殿。私は現白虎の任にあります蘭玲と申します。以後お見知りおきを」

 

そんな下にたった挨拶なぞ生まれてこの方されたことのない横島は大あわてでベットから飛び降り蘭玲の手を取り立たせる。

 

「えっと、蘭玲さん?俺なんかにそんな事しないでくださいよ。俺の名前は知ってる見たいですけどそんな風にして貰うほど大層な人間じゃあありませんから。」

 

困ったように笑顔を浮かべる横島に蘭玲は微笑みを浮かべ楽しげに話し始める。

 

「本当に貴方は小竜姫達の言っていた通りの人のようですね。私の事は蘭玲と呼び捨ててください。」

「小竜姫様がどう言ってたかしらんけど呼び方の方は了解っす。俺のことも呼び捨ててください。」

「心得ました。では忠夫さん、状況を説明したいのですがよろしいですか?」

 

切り替え早っ!!

なんとなく小竜姫にイメージが似てるかと思ったが寧ろワルキューレ似か?

などと考えつつ頷く横島に蘭玲は微笑みながら説明を始める。

 

「まずは本人の了承無くこの地へと忠夫さんを運んだことを侘びさせて頂きたい。」

 

そう言って又頭を下げる。

 

「いや、それはもういいっすから。ていうか、蘭玲さんが俺を?」

 

コクリと頷くと横島にベットに戻るように促し、自らは断りを入れた上で椅子を寄せベットのそばに腰を下ろす。

 

「本来であれば、小竜姫かタマモ殿が説明すべきなのですが二人とも罰則中ゆえ御容赦願います。」

「罰則?!」

 

横島と自分に茶を入れつつ苦笑というか笑いを噛み殺している蘭玲にどうやら大変なことではないらしいとほっとする横島に蘭玲は好ましげな視線を向ける。

 

「なんすか?」

「いえ、忠夫さんは本当にいい男だと思っただけです。」

「な?!////

 

言われなれない言葉に真っ赤になる横島を楽しそうに見る蘭玲、結構お茶目かもしれない。

 

「コホン。改めて説明させていただきますね?西王母様からお聞きになったかもしれませんがここは瑤地。仙界のひとつで女仙たちのお山、家と言っても良いかもしれません。」

 

仙人、そういったものの存在は横島も知ってはいた。しかし、横島の知識は御伽噺の仙人。つまりは霞を食って生きてるヨボヨボの爺さんである。

 

「仙人ってヨボヨボの爺さんじゃないの?」

 

思いっきり幼稚園児のようなストレートな質問である。

GSというか、これだけ神魔に関わり会いになりながら未だ素人のような知識しか持ち合わせていないこの男は自分が無知であることを知りそれを表に出すことを恥としない。

それどころか、必要とあれば誰にであろうと教えを乞う事が出来るたとえ相手が西条であろうと(嫌々ではあっても…)そういうところは横島の美点のひとつであろう。

教えれば理解する力は横島にはある。なのにここまで彼が無知なのは彼の雇用主に一切教える意思がまったく無かったからであると言えよう。

 

「別に仙人は一人ではありませんよ?資格というか素質の有無はありますが結構な人数がいらっしゃいます。それこそ見た目だけなら老若男女雑多に……」

 

横島の質問にいやな顔をせず説明する蘭玲、素直に頷きながら話を聞く横島。

そうして、二人の話というか蘭玲の説明に時々横島の質問が挿まれてそれに蘭玲が答えるそういう形でのやり取りがしばらく進む。

 

「……じゃあ二人は今はどんな罰を?」

「タマモ殿は転生体で前世の記憶が無く、此処の事を御存じなかったと言うことで本当なら罰も何も無いんですが金母さまに言いくるめられて忠夫さんとの面会謝絶。ついでに金母さまのおもちゃにされてますよ。」

 

男子禁制の瑤地に横島を連れ込んだ罪で二人が罰を受けていると言われ問う横島に今度は笑いを隠しもせずに話す蘭玲。

 

「小竜姫は(邪笑)ちょっと見てみます?」

「へ?」

 

たま〜〜に事務所で見る黒い笑みに似た笑いを浮かべて蘭玲は横島を連れ出した。

 

 

 

 

 

所変わって小竜姫用反省室となっている客間。

 

小竜姫はベットに腰を掛け、何か手元を忙しそうに動かしながらも表情は虚ろで手元は見ていなかった。

 

「ああ、横島さんはもう目が覚めたでしょうか?私のこと怒ってないでしょうか?……」

 

部屋には結界が張ってあり、外の様子はわからないようにしてある。

しかし、室外にいる横島と蘭玲からは中の様子は丸見えだった。

簡単に言えば刑事ドラマなどでよくある取調室の様に中の見える細工がされているのである。

当然のことながら小竜姫はそのことを知らない。

横島たちが来るまで数人中を見ていた仙女やその見習いがいたが二人が来るとクスクス笑いながら去っていった。

 

二人が覗き込むとベットの上にはバンダナをしてジージャンな誰を模したか丸わかりなファンシーな人形(全長50cm程度)が三個転がっている。

 

「横島さん。わかって下さい決して悪気は無かったんです。貴方のためを思って…」

 

現在製作中の横島人形(推定1m)を縫う手を止め、その人形に語りかけギュウッと抱きしめる。

 

「いたたた!」

 

どうやら針が刺さったらしい。

横島人形を放り出すが慌てて拾い又チクチクと縫い始める。

 

「可愛いですねぇ?」

 

やっぱり”黒”笑みを浮かべ横島を見る蘭玲にでっかい汗マークを頭上に浮かべ苦笑する横島だった。

先ほどの西王母の言葉が頭によぎる。

 

 

『愛されているのでしょう?もう少し御自覚なさいな。横島殿…』

 

 

蘭玲が更に追い討ち(?)を掛けようと横島を見るといつの間にか横島は暗い表情に変わっており、一言呟いた。

 

 

「なんでタマモも小竜姫様も俺なんかを……」

「横島殿……」

 

蘭玲が声を掛けようとしたとき横島の袖を引っ張る小さな手。

ビクッとしながらもその相手を見る。そこには白い髪そして琥珀の瞳の幼子が泣きそうな顔で横島を見上げていた。

 

「お兄ちゃんはなんで泣いているの?」

 

そこには気づかずに涙を流す横島がいた。

 

 

 

 

後書き?

相も変わらず遅筆な作品にお付き合いいただきありがとうございます。

こりもせずにオリキャラ追加、私のSSは何処に向かっていくのでしょう?

間を空けすぎた所為でしょうか?蘭玲のキャラが初期設定から違う方向へと進んでいます(汗)

予定以上に横島に接近してしまいそう。

次回には予定していたキャラを登場させたいんですがそこまで行きつけるか?と言うかいつになるんでしょう?

亀の歩みではありますがお付き合い下さいます方がいるうちはがんばりたいと思います。

それでは今回はこれにて……