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番組の宣伝では、
そのときの取材の時間は100時間に及んだと強調されていました。

実際はそれ以上で、メールのやりとりや電話なども含めると、
かなりの時間をNHKに提供しました。
もちろんほとんど無償です。

しかしそれだけ多くの時間を使っても、
私たちの言いたいことはなかなか正確に伝わりませんでした。

それは私たちが教団の中で経験してきたことと、
社会の中で培われたオウムのイメージが、
あまりにもかけ離れていたからだと思います。
そのためこの取材の最中には、何度もジレンマを感じました。

もちろん私も、自分たちが経験してきたことを一般の人たちが
すぐには理解できないのは当然のことだとは思っていました。

オウムはあれだけの大事件を起こしましたが、
そこにいた大多数の人は、そのことをほとんど知らずに過ごしていました。
それも一般の社会にいるときよりも穏やかな雰囲気の中で
修行とワークに励んでいました。

しかし起こした事件のイメージがあまりに強烈すぎて、
そんなことは実際に内部にいた人でなければ理解できるはずがありません。


オウムの中は万事がこんな感じなので、実際にできあがったドラマも、
実際とはかなりちがうものになってしまったところが何カ所かありました。

これは、こちらの言葉がうまく伝わらなかったのと、
ドラマをつくった人たちが自分のイメージによって
過剰な演出を行ったというのもあったようですが。


一例をあげると、独房修行での場面がそうです。

独房の中で泣き叫んで暴れたりというのは明らかな過剰演出で、
実際にはそんなことを一切していません。

あの当時、私が暗闇に恐怖を感じていたことは事実ですが、
それは自然に浮き出てくる自分の心の汚れを
嫌でも直視することになるからです。

そんなときは、カルマが落ちるまでひたすら耐えていましたが、
それでは視聴者にわかりにくいということなのか、
心の中の葛藤を、実際にはしてもいないオーバーアクションで
表現されてしまったようです。


そもそもこの頃の独房修行は、強制ではありません。
入りたくない人を無理矢理独房に入れることはありませんでした。

自分の内側をしっかりと見つめることができ、
そこで見たくない自分の汚れが出てきても対峙する準備ができている人を、
在家信徒、出家信徒の枠を超えて麻原さんが選び、行っていました。

独房修行が強制されて行われることのあった
後期の時代とは少しちがいますが、
その雰囲気がまったく伝わらないどころか、
過剰演出で実態とかけ離れたものとして
伝えられてしまったことは、とても残念です。


もうひとつ残念に思っているのは、麻原さんの振る舞いや態度が
かなりねじ曲がってしまったことです。

ドラマの最後のほうで、織枝が話しかけたときに
鬱陶しそうに応じる姿が描かれていましたが、
あれも実際の姿とはかなりかちがいます。

私がなぜそこにこだわっているかというと、
この部分はオウムの信徒がなぜ麻原さんにひかれ、
そしてあのような事件を起こすまでに至ったかという、
その理由に通じる大切な要素のひとつだと思っているからです。

実際の麻原さんは、弟子が直接にあのように
グルを求めて出向いていったときは、どんなに忙しくても、
きちんと対応をしてくれました。

もちろんその部分を強調してしまうと、
オウムの宣伝ドラマになりかねません。
そのあたりの兼ね合いは、確かに難しいところであったとは思います。


また、ドラマというものは、
本当にたくさんの人が関わって作られていくものです。

NHKの担当のディレクターの人たちとは
本当に長い時間、取材という形での話をしましたが、
それ以外の他の多くの人たちと、
そのような時間をとることは、ほぼ不可能でした。

そして、その多くの人たちは、
やはり、あの凶悪なオウム真理教のイメージが
強烈に焼き付けられているわけです。

ですから、どうしても、
たとえ台本の段階では正確な描写が為されていたはずのことであっても、
実際に出来上がったドラマを観ると、
なんだか、ずいぶんと違ってきてしまったなと
思うこともたくさんありました。


ちなみに最近、あのドラマを元にマンガができました。
現在、ある漫画雑誌で連載されていますが、
それを見ると、ドラマの本来の意向さえも無視して
それぞれのキャラクターが勝手に作られ、描かれている印象さえ受けました。

そのマンガの関係者の方からは、いっさいの取材もありませんでした。
内容から察すると、おそらくは早坂の本も読んでいないし、
裁判記録も、あまり目を通していないのではと思えるほどです。

やはり、イメージだけで作っていくと、
ああなってしまうのは、ある意味、仕方がないのかもしれませんが……。


それはさておき、こういったことから、
ドラマでないと伝えられないことは、もちろんありますが、
ドラマであるがゆえに伝わらない部分がたくさん出てくることも、
今回、しみじみと実感することになりました。


とはいっても、最初はそのことには、かなりの戸惑いはありましたが、
それでも、これまでよりは進歩があったかな、という気もしています。

それはドラマの撮影に立ち会ったときにも、関係者から
「オウムには、これまで報道されてきたこととは
まったくちがう面があったんですね。
それを知ることができてよかったです。」
というように声をかけられることがしばしばあったからです。

また3月にBSでのドラマだけの先行放送が行われたときにも、
「いままで知らなかったオウム像を見ることができて衝撃的だった」
というような感想をネット上で多く見かけました。


正直なところ、この感想は意外なものでした。
実際にオウムの中で過ごしてきた私にとっては、
あのドラマの雰囲気は実態とかけはなれた、
サイコホラーのようなものになっていたと感じていたからです。

しかし逆に、これまでの報道で、
「オウムはものすごくおぞましい集団」という
イメージを持っていた人たちから見ると、
あのドラマから受ける印象は、
私たちとはちがった意味で驚きだったというのは、
私にとっては、あらためて世間のオウム像を知る機会を
与えられることになったのでした。


あのドラマの中のオウムは、私が経験してきたものと、
一般の人が抱いているイメージとの、
ちょうど真ん中くらいのものなのかもしれません。

これはNHKの未解決事件シリーズを担当してきた人たちが、
一年という時間をかけて地道に取材を行った成果なのだと思います。


しかし、次に待ち受けていたのが
5月に放送された、そのドラマにドキュメンタリーが
プラスされたものです。

ドキュメンタリーのところでは、
これまで、オウムの元サマナを対象とした
取材を経験してない人たちが、途中から多く関わってきました。

そのため、当初、聞いていた内容とは、
これまた相当に違う内容となっていったようなのでした。

ということで、その話は、また次の機会に書いてみたいと思います。


関連記事
2012.09.17 Mon l ドラマ編 l コメント (4) l top

コメント

今日は疲れた
こんばんは。2枚読みました。
下記をつぶやきました。
また来ます。

https://twitter.com/kuma_to_ahiru/status/254589324102860801

https://twitter.com/kuma_to_ahiru/status/254592237164457984

https://twitter.com/kuma_to_ahiru/status/254592611065671680

https://twitter.com/kuma_to_ahiru/status/254594012374257665
2012.10.06 Sat l クマとアヒル. URL l 編集
貴重な話を聞かせていただき、ありがとうございます。このブログがなければあの番組をすべて信じるところでした。
これ以外に番組に対して違和感を感じたところもお聞きしたいです。
2012.10.07 Sun l さなぎ. URL l 編集
クマとアヒルさま
コメント、ありがとうございます。
つぶやき読ませていただきました。
貴重なご意見をありがとうございました。
2012.10.08 Mon l 深山. URL l 編集
さなぎさま
コメント、ありがとうございます。
ドラマはあくまでドラマであると分かっていても、
うっかりすると、無意識に信じてしまうって、やはりありますよね。
細かいところでは、やはり、本人が演じているわけではないので、
実際を知っているものとしては違和感はたくさんありますが、
とりあえずは大筋のところを書いてみました。
これからも、機会があれば、ドラマという枠を超えて、
オウムがどんな様子だったか書いていけたらいいなとは思ってはいますが、
今のところ、どうなるかはまだ未定です。
2012.10.08 Mon l 深山. URL l 編集

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