橋下市長の連載記事問題:朝日新聞出版の社長が引責辞任
毎日新聞 2012年11月12日 22時14分(最終更新 11月13日 01時19分)
橋下徹大阪市長の出自に関する「週刊朝日」の連載記事を巡り、同誌を発行する朝日新聞出版は12日、臨時取締役会を開き、神徳(こうとく)英雄社長の引責辞任を決めた。後任となる篠崎充(みつる)社長代行は同日、市役所を訪れ、橋下市長に記事に関する検証結果や社長の辞任などを報告。「深く反省しております。心からおわび申し上げます」などと謝罪した。
篠崎氏らは、朝日新聞社グループの第三者機関「報道と人権委員会」による検証結果を橋下市長に説明。検証結果は記事について、▽出自を根拠に、橋下氏の人格を否定するという誤った考えを基調としている▽主要部分が信ぴょう性の疑わしいうわさ話で構成され、事実の正確性に問題がある▽差別に対する認識や人権への配慮を欠き、編集部のチェック体制が機能していない−−などと指摘。掲載後の対応についても、朝日新聞出版が当初、「公人である橋下徹氏の人物像を描くのが目的」とのコメントを発表するなど、「正当化とも受け取れるもの」で、「問題の本質に気づいていなかった」と批判。「連載中止はやむを得なかった」と結論づけた。
橋下市長は「全て理解できたし、納得できた。僕が一番言いたかったところもしっかりと認識してもらった」と話し、謝罪を受け入れる意向を示した。
問題の記事は、週刊朝日が10月26日号に掲載した「ハシシタ 奴の本性」。ノンフィクション作家の佐野眞一氏らが執筆した。橋下市長は「血脈主義につながる危険な思想」と批判し、親会社である朝日新聞の取材を一時拒否。朝日新聞出版は先月19日、2回目以降の連載中止を決め、第三者機関に記事内容や作成過程などの審理を申請していた。
同社は検証結果を受け、河畠大四(かわばた・だいし)・前週刊朝日編集長を停職3カ月とするなど、3人を懲戒処分。記者の人権研修や原稿のチェック体制の強化など再発防止策を講じるとしている。
佐野氏も12日、差別への配慮を欠いたとする見解と、おわびを発表した。【原田啓之、津久井達】