クレジットノート・デビットノート
※お急ぎの方は下の項目からお選び下さい、該当箇所に移動します。
【1】クレジットノートとは?
【2】デビットノートとは?
【3】管理システムとクレジットノート/デビットノートの関係
【4】クレジットノート? クレジットメモ?
【5】その他質問
【1】クレジットノート
これを分かりやすく簿記的に言えば、
「当社の売掛金帳簿の貸方に記入しました」という通知です。
買った側にとっては、債務が減額されたのですから、クレジットノート(CN)を受け取ったら、買掛金帳簿の借方に記入します。
日本には、似たようなものに「赤伝」があります。日本で働いていた時、マイナス表記された納品書に『赤伝』という朱印を押した記憶がありますが、伝という文字が「伝票」を思わせるために、それがクレジットノートと同質だというと意味が判りにくくなってしまうんですよね。
クレジットノートとは、売上に関する取引の減額(値引き・返品など)に対して発行する請求書の一種です。
品目・数量が複数ある中の部分訂正なら減額相当分のクレジットノートを発行し、請求書全てを取り消すならば全額分のクレジットノートになります。
貿易関係の送料・保険代など諸費用の過剰請求の訂正にも使います。
請求書を発行後、品目・金額以外の請求書内容を訂正・修正する場合にも、同じようにクレジットノート処理をします。(例:顧客先や日付を間違えたなど)。
(注:単価を間違えた場合、全額減額で取り消して新たな請求書を発行する方式と、単価の差額部分訂正をする方式があります。これは会社によりますからどちらが正しいとは言えません。全額洗替えが望ましいのですが...)。
アメリカやイスラエルの企業会計においては、発行した請求書は有効であり、いかなる理由があっても、請求書を破棄することは法的に不可能です。
請求書の番号が連続しているかどうかを監査で調べられ、番号が抜けていると、なぜないのか?と追求されることもあります。
経理の基本は、【売った側(債権者)主導】です。
購入した側が受け取った請求書に何らかの間違いがあっても(見積もりより高い・欠損品がある...)、請求書から勝手に減額した数字を帳簿に計上したり、請求書を捨てることなど出来ません。
売掛側(債権者)が、「間違いを取り消す書類」を発行しなければ、それが間違いであっても売った側の債権として計上されたままです。そのために、クレジットノートという減額専用の様式を使って、売った側が責任を持って訂正しなければならないのです。
コンピューター管理上、請求書とクレジットノートは区分が別です。
書式そのものは通常の請求書と変わりません。ただ、請求書の番号は数桁の数字だけで表記されているのに対し、クレジットノートの番号は「C」から始まるパターンが一番多いようです。
なお、クレジットノートの価額に「マイナス」が付いている場合もあれば、付いていないこともありますので、「マイナスがないなら正規の請求書」と思い込まないように気をつけて下さい。
法的には、価額にマイナス表記されていようがいまいが、書類に「クレジットノート・赤伝・減額」といった言葉が明記されていれば、減額通知です。分からなかったら先方に確認しましょう。
さて、売上債権の減額ですから、仕訳は、
借方(デビット):売上(or売上戻りor各費用勘定)+消費税
貸方(クレジット):売掛金
↑あくまでも、一般企業で使われる基礎的用語の説明です。
業界用語・企業内用語等は、この限りではありません。
企業が使う管理システムでは、クレジットノートを発行した場合、売掛金帳簿の貸方に記入ではなく、借方にマイナス記入で表示される場合が多々あります(ストルノ・逆仕訳)。
この方がパっと見た時に非常に分かりやすい。
『借方は、売上や値引き・返品など、こちらが発行した請求書に基づく記入。対する貸方は、相手からの入金記録』ということが一目瞭然。
これなら残高照合(Reconciliation)が簡単です。また、簿記がよく分からない他の部署の人に説明する時にも便利です。
売上を訂正したクレジットノートの消費税は売上に順応しますから、仮受消費税の減額(借方表記or貸方マイナス表記)となります。
参考URL(英文サイト)
クレジットノートのサンプルフォーム(書式・雛型)が紹介されています。
【2】デビットノート
では、デビットノートとはなんですか。
経理の用語で「デビクレ(デビット:借方vsクレジット:貸方」といえば対照用語だから、「クレジットノート」が売上の減額なら、「デビットノート」は売上の増額ですか?
それもそうなんですが、それだけではありません。
デビットノート(DN。デビットメモ・DMとも呼ばれます)の場合は、企業によって使い方が異なりますが、一般的には、「増額単価修正」や「通常の売上以外の売掛債権増額」のために使われます。
増額単価修正とは、上で書いたように、単価100円であるべきを単価80円と間違えて請求書を作ってしまった場合、「クレジットノートで間違えた請求書の全額(単価80円)を取り消し、改めて単価100円で正規の請求書を発行」する方式と、「単価差額20円分だけを追加請求」する方式があります。
この後者の差額追加請求に使うのがデビットノート。売掛債権の借方増額です。(注:会社によります。本当はクレジットノートで全額取り消して新たに請求書を発行する全額洗替えが望ましいんですが...)。
ま、これは分かりますよね。
では、通常の売上以外の売掛債権増額(普通の請求書ではない)場合。
どちらかというと、こっちの方が重要です。
たとえば、
「A社の社員が、関連会社B社に出張して何日間か滞在。その滞在期間の費用の一部をB社が立て替え、後日清算します」
仮にこれが、「タクシー代の立替」だったとしましょう。
B社は、某タクシー会社と契約をしていて月末にタクシー会社から合計請求書を受け取り、全額を旅費交通費の借方に計上しています。
しかし、そのうちの一部が「A社の社員が出張時に使ったタクシー代」ならば、合計請求書の全額を自社の費用に計上することはできず、A社に請求しなければなりません。
でも、普通の売上ではないから、通常の請求書は発行できません。
そこで、利用したタクシー代に関して、
借方(デビット):A社の売掛金勘定
貸方(クレジット):旅費交通費勘定(or立替費勘定)+消費税
という仕訳処理をし、その請求を通知するのが「デビットノート」なのです。
また、上で説明した輸出入関連のクレジットノートの逆パターンで、輸出時の送料・保険代の追加請求(商品の請求書は発行済みだが、諸費用だけを追加請求する場合)も、請求書ではなくデビットノート処理を用いることがよくあります。
デビットノートは費用請求だけではありません。 たとえば、『サンプル売り上げ』などにも多く使われます。
「試しに1つ売ってほしい。検討してから大量に発注する」と依頼してきた顧客に対し、営業部内に置いている見本品を売るならば、倉庫の在庫には関係ありませんから、通常の売上処理ではなく、デビットノートを発行して処理します。
※このサンプル品は、倉庫から営業部に持ってきた時点で、営業部の販促費として内部処理されています。それをデビットノートでサンプル売上に計上することで、営業部の費用と収入が相殺されるわけです。
尤も、通販専門の化粧品会社など、サンプルを大量に販売することも販売方法の一環であるとしたら、通常の請求書による売上処理をするでしょう。
デビットノートの書式は、通常の請求書と同じ書式か、上で紹介したクレジットノートの書式のタイトルを「デビットノート」とすればよいかと。こうでなければならない、という決まりは特にありません。
『書類のタイトル(請求書、CN、DNなど)、発行年月日、通し番号、発行社名と住所、顧客名と住所、請求内容、請求金額、税率(課税対象の場合)』といった基本事項が明記されていれば、経理書類として全世界どこでも通用します。
【3】管理システムとクレジットノート・デビットノート
私が英文会計を勉強し始めた時、「アメリカでは現金割引のシステムがあり、そのためにクレジットノートが存在するが、日本は合計請求書を使うから云々・・・」とテキストに書かれていました。
しかし、説明を読んで分かっていただけたと思いますが、クレジットノートは現金割引のためだけに存在するものではなく、経理処理を進めるにあたってごく普通に使われるものです。それに(当たり前のことですが)日本の全ての企業が月末合計請求書を発行しているわけではありません。
「アメリカは現金割引があるが、日本は合計請求書云々・・・」という一文は混乱させるだけですから、テキストから消すべきです。「さすが、経理の実務経験が全くない先生が書いた教科書だな...」と思いますね。
イスラエルはアメリカの会計方式と似ていますが、現金割引の慣行はほぼ存在しません。それでもクレジットノート(請求書の減額)は、ごく日常的に使われています。
※ちょっとクドイですが、CN・DNの特質を理解するために是非読んで下さい。
SAPなどのグローバル会計ソフトの普及に伴い、クレジットノート・デビットノートとも、社内一環の管理システムを利用している企業では、不可欠なものになってきました。
一定規模以上の企業では、製造入荷から経理処理まで一環のソフトを使っており、販売受注部が注文を受けて入力すると、経理部に繋がり、経理部が請求書または受注伝票を出力(印刷)する、という仕組みになっています。
返品があると、顧客の売掛勘定残高だけではなく商品在庫に影響します。
クレジットノートに、「商品名・個数・単価」を明記するのは、顧客のためだけではなく、商品在庫管理と原価計算を正しく管理するために、システムに商品在庫の出入記録を残す必要があるからです。
欠陥破損品の返品や割引・値引きは、商品在庫には影響しませんが、原価計算や損益計算にも影響するので、システム上にその明細を残さなければなりません。
上の説明で、 デビットノートの説明に『一般売上以外の債権増額』という項目で長ったらしく説明を書いたのは、立替金・その他諸費用の請求や、商品在庫に影響しない非日常的なサンプル販売は、販売受注部が注文を受けて入力する売上とは別扱いだからです。
これら一連の単価修正(増減額)や請求は、通常経理部しか出来ないことになっています。(受注オペレーターが勝手に単価変更できたら大変!)。
一般的なクレジットノート発行の流れは、
①販売受注部の担当が『クレジットノート処理依頼書』に訂正事項を記入。
②販売受注部の責任者経由で、経理部の原価計算担当の承認を得る。
③経理部の請求書発行担当者がクレジットノート発行処理をする。
デビットノートは、各職場の責任者からの要請で、やはり経理部が発行します。
【4】クレジットノート? クレジットメモ?
クレジットノートは、クレジットメモ(CM。Credit Memorandum)とも呼ばれますが、ノートでもメモでも単語が違うだけで、経理上の使用目的・法的効果は同じです。
どちらにしても、「ノート」「メモ」という言葉がなんだか分かりにくくさせるのですが、ここで使われているノートやメモは、私達が子供の頃から使っている「帳面」や「何かちょっと書いておく小さい紙」ではありません。
元来、NoteもMemorandumも、「契約書に付随する覚書」という意味があります。(一般的には、Memorandumが多く使われています)。
覚書とは、「契約書に付随する内容の一部を変更するための書類」です。
請求書(Tax Invoice,Statement,Bill...)は、売買契約に基づいた一取引に関して、債権発生日と債権額を決定・通知する法的書類です。
その請求書に付随する内容を変更するための書類が、「クレジットノート/メモ」「デビットノート/メモ」になります。
だから英語では、「クレジット・インボイス」とは言わないのです。
(言う人もいるかもしれませんが、基本として)。
あと、別件だけれど気が付いたことをひとつ。
上に書いたように、英文会計のテキストの説明では、「アメリカでは、現金割引の慣行があり、請求書が届いたらすぐに支払いに回し、日本のような月末の合計請求書というものがない」などと書かれています。
しかし実務においては、毎日毎日請求書が来るたびに支払うわけではなく、月中の支払日は決まっています。そうでなければ資金繰りの予定が付かず大変です。
イスラエルにおいては、月に何度も取引する場合、日本と同じように、月中は納品書・返品証明を発行して処理し、月末に合計請求書を発行します。
アメリカで働いたことがないので憶測ですが、アメリカにも合計請求書のようなシステムがあるはずでしょうね。
「現金割引の慣行からすぐに請求書を発行し、すぐに支払いに回す」といっても、たとえば、「大手食品メーカーが、大手チェーンのスーパーに毎日納品している」という場合、「大手メーカーは毎日膨大な量の請求書を発行して郵送し、大手スーパーは膨大な量の請求書を毎日受け取って入力し、毎日支払っている」なんて効率が悪いこと、どう考えても有り得ないでしょ?
初稿:2005年6月。内容は随時更新しております。(最終更新2012年9月25日)
引用転載は事前にメールフォームよりご連絡下さい。


同じような質問をよくいただくので、まとめて。

Q:売掛先が過剰入金してきました。クレジットノートで処理すればいいのでしょうか?
A:ダメです。入金処理で領収書(Receipt)を発行して下さい。
クレジットノートは、既存する債権を減額する(売掛金勘定の貸方に記帳する)書類ですが、反対勘定は収入か費用に計上されなければなりません。債権額以上の入金は単なる「お釣り」ですから、経理システムでいえば入金処理をするだけです。
例えば、請求金額が2万円なのに3万円の入金(銀行振込)があったとします。
仮受処理後に返金したら、過剰分返金の受取証明をもらいましょう。先方の経理担当者と一連のやり取りをしたメールで十分ですので「返金分一万円を入金確認いたしました」という一文が書かれたものを必ずファイルしておいて下さい。
返金した場合、買掛側(過剰支払い側)が領収書を発行する義務は全くありません。何度もくどいようですが、「お釣りを返してもらっただけ」でしかないのですから。
Q:クレジットノート、個数と単価、どちらをマイナスにするのですか?
A:返品の場合、理由にかかわらず個数をマイナスにします。数量過剰・不良品・破損など理由はともかく商品が戻ってきたのですから、影響するのは単価ではなく個数です。噛み砕いて言いますと、請求書を出力すると在庫が減り、売上げ取消しのクレジットノートで個数マイナスにすると在庫が戻ります。そして期末の棚卸しの際、実地棚卸しとシステム上の在庫数は限りなく近い数値でなければなりません。
単価が高すぎたために減額の修正するとしても、間違えた金額を単価マイナスにすると単価計算が狂ってしまうので好ましくありません。
システムを通さず、ワードや手書きなどで独自のクレジットノートを発行するとしても、 一番望ましいのは、「単価ミス分を訂正するために個数をマイナス表記で取り消すCNを発行」、そして、「新たに正しい単価で請求書を発行」という洗替え方式です。
元となる間違えた請求書と突き合せた時や原価を見直す時、一目瞭然ですから。
Q:クレジットノートを発行する時の英語の良い文例など教えて下さい。
A:海外宛てなら 日本のように「誠に申し訳ありませんが当方の手違いで云々・・・」と平身低頭な謝罪文でくどくど説明する必要はまったくありません。
クレジットノートの備考欄に、「To adjust Invoice No 1234, Due to wrong amount」「Unit price overcharged」などサラッと記入しておけば十分。担当から連絡があったら、「sorry for inconvenience」とでも一言サラッと謝っておけばいいでしょう。「人間だから間違えるのよ。だからCN処理するの」くらいな気持ちで構わないのです。
経理は、貸借と数字で理解する業務です。請求書やクレジットノートを貰って細かい説明を聞かなければ意味が分からないような人は、経理で働く資格がありませんから。
※今後も何かあったら追加します
【1】クレジットノートとは?
【2】デビットノートとは?
【3】管理システムとクレジットノート/デビットノートの関係
【4】クレジットノート? クレジットメモ?
【5】その他質問
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【1】クレジットノート
- クレジットノート(Credit Note)とは、
- クレジット=貸方
ノート=通知書、覚書
WE HAVE CREDITED YOUR ACCOUNT
(当社は貴社の勘定を減額しました)
(当社は貴社の勘定を減額しました)
これを分かりやすく簿記的に言えば、
「当社の売掛金帳簿の貸方に記入しました」という通知です。
買った側にとっては、債務が減額されたのですから、クレジットノート(CN)を受け取ったら、買掛金帳簿の借方に記入します。
日本には、似たようなものに「赤伝」があります。日本で働いていた時、マイナス表記された納品書に『赤伝』という朱印を押した記憶がありますが、伝という文字が「伝票」を思わせるために、それがクレジットノートと同質だというと意味が判りにくくなってしまうんですよね。
クレジットノートとは、売上に関する取引の減額(値引き・返品など)に対して発行する請求書の一種です。
品目・数量が複数ある中の部分訂正なら減額相当分のクレジットノートを発行し、請求書全てを取り消すならば全額分のクレジットノートになります。
貿易関係の送料・保険代など諸費用の過剰請求の訂正にも使います。
請求書を発行後、品目・金額以外の請求書内容を訂正・修正する場合にも、同じようにクレジットノート処理をします。(例:顧客先や日付を間違えたなど)。
(注:単価を間違えた場合、全額減額で取り消して新たな請求書を発行する方式と、単価の差額部分訂正をする方式があります。これは会社によりますからどちらが正しいとは言えません。全額洗替えが望ましいのですが...)。
アメリカやイスラエルの企業会計においては、発行した請求書は有効であり、いかなる理由があっても、請求書を破棄することは法的に不可能です。
請求書の番号が連続しているかどうかを監査で調べられ、番号が抜けていると、なぜないのか?と追求されることもあります。
経理の基本は、【売った側(債権者)主導】です。
購入した側が受け取った請求書に何らかの間違いがあっても(見積もりより高い・欠損品がある...)、請求書から勝手に減額した数字を帳簿に計上したり、請求書を捨てることなど出来ません。
売掛側(債権者)が、「間違いを取り消す書類」を発行しなければ、それが間違いであっても売った側の債権として計上されたままです。そのために、クレジットノートという減額専用の様式を使って、売った側が責任を持って訂正しなければならないのです。
コンピューター管理上、請求書とクレジットノートは区分が別です。
書式そのものは通常の請求書と変わりません。ただ、請求書の番号は数桁の数字だけで表記されているのに対し、クレジットノートの番号は「C」から始まるパターンが一番多いようです。
なお、クレジットノートの価額に「マイナス」が付いている場合もあれば、付いていないこともありますので、「マイナスがないなら正規の請求書」と思い込まないように気をつけて下さい。
法的には、価額にマイナス表記されていようがいまいが、書類に「クレジットノート・赤伝・減額」といった言葉が明記されていれば、減額通知です。分からなかったら先方に確認しましょう。
さて、売上債権の減額ですから、仕訳は、
借方(デビット):売上(or売上戻りor各費用勘定)+消費税
貸方(クレジット):売掛金
↑あくまでも、一般企業で使われる基礎的用語の説明です。
業界用語・企業内用語等は、この限りではありません。
この方がパっと見た時に非常に分かりやすい。
『借方は、売上や値引き・返品など、こちらが発行した請求書に基づく記入。対する貸方は、相手からの入金記録』ということが一目瞭然。
これなら残高照合(Reconciliation)が簡単です。また、簿記がよく分からない他の部署の人に説明する時にも便利です。
売上を訂正したクレジットノートの消費税は売上に順応しますから、仮受消費税の減額(借方表記or貸方マイナス表記)となります。
クレジットノートのサンプルフォーム(書式・雛型)が紹介されています。
【2】デビットノート
では、デビットノートとはなんですか。
経理の用語で「デビクレ(デビット:借方vsクレジット:貸方」といえば対照用語だから、「クレジットノート」が売上の減額なら、「デビットノート」は売上の増額ですか?
それもそうなんですが、それだけではありません。
デビットノート(DN。デビットメモ・DMとも呼ばれます)の場合は、企業によって使い方が異なりますが、一般的には、「増額単価修正」や「通常の売上以外の売掛債権増額」のために使われます。
増額単価修正とは、上で書いたように、単価100円であるべきを単価80円と間違えて請求書を作ってしまった場合、「クレジットノートで間違えた請求書の全額(単価80円)を取り消し、改めて単価100円で正規の請求書を発行」する方式と、「単価差額20円分だけを追加請求」する方式があります。
この後者の差額追加請求に使うのがデビットノート。売掛債権の借方増額です。(注:会社によります。本当はクレジットノートで全額取り消して新たに請求書を発行する全額洗替えが望ましいんですが...)。
ま、これは分かりますよね。
では、通常の売上以外の売掛債権増額(普通の請求書ではない)場合。
どちらかというと、こっちの方が重要です。
たとえば、
「A社の社員が、関連会社B社に出張して何日間か滞在。その滞在期間の費用の一部をB社が立て替え、後日清算します」
仮にこれが、「タクシー代の立替」だったとしましょう。
B社は、某タクシー会社と契約をしていて月末にタクシー会社から合計請求書を受け取り、全額を旅費交通費の借方に計上しています。
しかし、そのうちの一部が「A社の社員が出張時に使ったタクシー代」ならば、合計請求書の全額を自社の費用に計上することはできず、A社に請求しなければなりません。
でも、普通の売上ではないから、通常の請求書は発行できません。
そこで、利用したタクシー代に関して、
借方(デビット):A社の売掛金勘定
貸方(クレジット):旅費交通費勘定(or立替費勘定)+消費税
という仕訳処理をし、その請求を通知するのが「デビットノート」なのです。
また、上で説明した輸出入関連のクレジットノートの逆パターンで、輸出時の送料・保険代の追加請求(商品の請求書は発行済みだが、諸費用だけを追加請求する場合)も、請求書ではなくデビットノート処理を用いることがよくあります。
デビットノートは費用請求だけではありません。 たとえば、『サンプル売り上げ』などにも多く使われます。
「試しに1つ売ってほしい。検討してから大量に発注する」と依頼してきた顧客に対し、営業部内に置いている見本品を売るならば、倉庫の在庫には関係ありませんから、通常の売上処理ではなく、デビットノートを発行して処理します。
※このサンプル品は、倉庫から営業部に持ってきた時点で、営業部の販促費として内部処理されています。それをデビットノートでサンプル売上に計上することで、営業部の費用と収入が相殺されるわけです。
尤も、通販専門の化粧品会社など、サンプルを大量に販売することも販売方法の一環であるとしたら、通常の請求書による売上処理をするでしょう。
デビットノートの書式は、通常の請求書と同じ書式か、上で紹介したクレジットノートの書式のタイトルを「デビットノート」とすればよいかと。こうでなければならない、という決まりは特にありません。
『書類のタイトル(請求書、CN、DNなど)、発行年月日、通し番号、発行社名と住所、顧客名と住所、請求内容、請求金額、税率(課税対象の場合)』といった基本事項が明記されていれば、経理書類として全世界どこでも通用します。
【3】管理システムとクレジットノート・デビットノート
私が英文会計を勉強し始めた時、「アメリカでは現金割引のシステムがあり、そのためにクレジットノートが存在するが、日本は合計請求書を使うから云々・・・」とテキストに書かれていました。
しかし、説明を読んで分かっていただけたと思いますが、クレジットノートは現金割引のためだけに存在するものではなく、経理処理を進めるにあたってごく普通に使われるものです。それに(当たり前のことですが)日本の全ての企業が月末合計請求書を発行しているわけではありません。
「アメリカは現金割引があるが、日本は合計請求書云々・・・」という一文は混乱させるだけですから、テキストから消すべきです。「さすが、経理の実務経験が全くない先生が書いた教科書だな...」と思いますね。
イスラエルはアメリカの会計方式と似ていますが、現金割引の慣行はほぼ存在しません。それでもクレジットノート(請求書の減額)は、ごく日常的に使われています。
※ちょっとクドイですが、CN・DNの特質を理解するために是非読んで下さい。
SAPなどのグローバル会計ソフトの普及に伴い、クレジットノート・デビットノートとも、社内一環の管理システムを利用している企業では、不可欠なものになってきました。
一定規模以上の企業では、製造入荷から経理処理まで一環のソフトを使っており、販売受注部が注文を受けて入力すると、経理部に繋がり、経理部が請求書または受注伝票を出力(印刷)する、という仕組みになっています。
返品があると、顧客の売掛勘定残高だけではなく商品在庫に影響します。
クレジットノートに、「商品名・個数・単価」を明記するのは、顧客のためだけではなく、商品在庫管理と原価計算を正しく管理するために、システムに商品在庫の出入記録を残す必要があるからです。
欠陥破損品の返品や割引・値引きは、商品在庫には影響しませんが、原価計算や損益計算にも影響するので、システム上にその明細を残さなければなりません。
上の説明で、 デビットノートの説明に『一般売上以外の債権増額』という項目で長ったらしく説明を書いたのは、立替金・その他諸費用の請求や、商品在庫に影響しない非日常的なサンプル販売は、販売受注部が注文を受けて入力する売上とは別扱いだからです。
これら一連の単価修正(増減額)や請求は、通常経理部しか出来ないことになっています。(受注オペレーターが勝手に単価変更できたら大変!)。
一般的なクレジットノート発行の流れは、
①販売受注部の担当が『クレジットノート処理依頼書』に訂正事項を記入。
②販売受注部の責任者経由で、経理部の原価計算担当の承認を得る。
③経理部の請求書発行担当者がクレジットノート発行処理をする。
デビットノートは、各職場の責任者からの要請で、やはり経理部が発行します。
【4】クレジットノート? クレジットメモ?
クレジットノートは、クレジットメモ(CM。Credit Memorandum)とも呼ばれますが、ノートでもメモでも単語が違うだけで、経理上の使用目的・法的効果は同じです。
どちらにしても、「ノート」「メモ」という言葉がなんだか分かりにくくさせるのですが、ここで使われているノートやメモは、私達が子供の頃から使っている「帳面」や「何かちょっと書いておく小さい紙」ではありません。
元来、NoteもMemorandumも、「契約書に付随する覚書」という意味があります。(一般的には、Memorandumが多く使われています)。
覚書とは、「契約書に付随する内容の一部を変更するための書類」です。
請求書(Tax Invoice,Statement,Bill...)は、売買契約に基づいた一取引に関して、債権発生日と債権額を決定・通知する法的書類です。
その請求書に付随する内容を変更するための書類が、「クレジットノート/メモ」「デビットノート/メモ」になります。
だから英語では、「クレジット・インボイス」とは言わないのです。
(言う人もいるかもしれませんが、基本として)。
あと、別件だけれど気が付いたことをひとつ。
上に書いたように、英文会計のテキストの説明では、「アメリカでは、現金割引の慣行があり、請求書が届いたらすぐに支払いに回し、日本のような月末の合計請求書というものがない」などと書かれています。
しかし実務においては、毎日毎日請求書が来るたびに支払うわけではなく、月中の支払日は決まっています。そうでなければ資金繰りの予定が付かず大変です。
イスラエルにおいては、月に何度も取引する場合、日本と同じように、月中は納品書・返品証明を発行して処理し、月末に合計請求書を発行します。
アメリカで働いたことがないので憶測ですが、アメリカにも合計請求書のようなシステムがあるはずでしょうね。
「現金割引の慣行からすぐに請求書を発行し、すぐに支払いに回す」といっても、たとえば、「大手食品メーカーが、大手チェーンのスーパーに毎日納品している」という場合、「大手メーカーは毎日膨大な量の請求書を発行して郵送し、大手スーパーは膨大な量の請求書を毎日受け取って入力し、毎日支払っている」なんて効率が悪いこと、どう考えても有り得ないでしょ?
初稿:2005年6月。内容は随時更新しております。(最終更新2012年9月25日)
引用転載は事前にメールフォームよりご連絡下さい。
Q:売掛先が過剰入金してきました。クレジットノートで処理すればいいのでしょうか?
A:ダメです。入金処理で領収書(Receipt)を発行して下さい。
クレジットノートは、既存する債権を減額する(売掛金勘定の貸方に記帳する)書類ですが、反対勘定は収入か費用に計上されなければなりません。債権額以上の入金は単なる「お釣り」ですから、経理システムでいえば入金処理をするだけです。
例えば、請求金額が2万円なのに3万円の入金(銀行振込)があったとします。
(1)先方に、「過剰分は次回の支払いの一部にして下さい」と言われたら、、全額3万円で入金し、「請求書No.XXXに対する銀行入金2万円。残金1万円は前受金として受領」と備考欄に記入するか、または、請求分2万円の入金処理と前受金1万円の入金処理で、領収書を2枚発行します。
但し、過剰入金額が販売額をはるかに上回る高額の場合や、次回の支払い期日が2ヶ月以上先の場合は、先方が何を言おうと返金したほうがいいですね。額が大きいと資金貸与や使途不明金預かりなどの下手な疑いをかけられかねませんから。
(2)返金するにしても、銀行振込みで既に入金されてしまったら、銀行勘定と合わせるため、一旦3万を入金せざるを得ません。
全額を顧客の売掛金勘定に計上してから返金してもよいし、余剰分を売掛金勘定に入れずに仮受金勘定を使うことも可能です。どちらがいいかは会社の好きにすればいいかと。
売掛債権分2万円の領収書の備考欄に「過剰入金3万円につき1万円返金」と記入して、1万円はお釣りとして直ちに返します。後日監査などのために、銀行送金などの証拠書類の控えと一緒にファイルしておきましょう。
しつこいですが、過剰分の返金はお釣りでしかないので、返金分に経理的書類を発行する必要は一切ありません。返金する場合の領収書の額面はあくまでも2万円です。
スーパーで800円の物品を買って1000円払ったら、200円に対して特別な証明書を貰いますか? レシートに「預かり1000円・お釣り200円」と印字されるだけですよね?
但し、過剰入金額が販売額をはるかに上回る高額の場合や、次回の支払い期日が2ヶ月以上先の場合は、先方が何を言おうと返金したほうがいいですね。額が大きいと資金貸与や使途不明金預かりなどの下手な疑いをかけられかねませんから。
(2)返金するにしても、銀行振込みで既に入金されてしまったら、銀行勘定と合わせるため、一旦3万を入金せざるを得ません。
全額を顧客の売掛金勘定に計上してから返金してもよいし、余剰分を売掛金勘定に入れずに仮受金勘定を使うことも可能です。どちらがいいかは会社の好きにすればいいかと。
売掛債権分2万円の領収書の備考欄に「過剰入金3万円につき1万円返金」と記入して、1万円はお釣りとして直ちに返します。後日監査などのために、銀行送金などの証拠書類の控えと一緒にファイルしておきましょう。
しつこいですが、過剰分の返金はお釣りでしかないので、返金分に経理的書類を発行する必要は一切ありません。返金する場合の領収書の額面はあくまでも2万円です。
スーパーで800円の物品を買って1000円払ったら、200円に対して特別な証明書を貰いますか? レシートに「預かり1000円・お釣り200円」と印字されるだけですよね?
仮受処理後に返金したら、過剰分返金の受取証明をもらいましょう。先方の経理担当者と一連のやり取りをしたメールで十分ですので「返金分一万円を入金確認いたしました」という一文が書かれたものを必ずファイルしておいて下さい。
返金した場合、買掛側(過剰支払い側)が領収書を発行する義務は全くありません。何度もくどいようですが、「お釣りを返してもらっただけ」でしかないのですから。
Q:クレジットノート、個数と単価、どちらをマイナスにするのですか?
A:返品の場合、理由にかかわらず個数をマイナスにします。数量過剰・不良品・破損など理由はともかく商品が戻ってきたのですから、影響するのは単価ではなく個数です。噛み砕いて言いますと、請求書を出力すると在庫が減り、売上げ取消しのクレジットノートで個数マイナスにすると在庫が戻ります。そして期末の棚卸しの際、実地棚卸しとシステム上の在庫数は限りなく近い数値でなければなりません。
単価が高すぎたために減額の修正するとしても、間違えた金額を単価マイナスにすると単価計算が狂ってしまうので好ましくありません。
システムを通さず、ワードや手書きなどで独自のクレジットノートを発行するとしても、 一番望ましいのは、「単価ミス分を訂正するために個数をマイナス表記で取り消すCNを発行」、そして、「新たに正しい単価で請求書を発行」という洗替え方式です。
元となる間違えた請求書と突き合せた時や原価を見直す時、一目瞭然ですから。
Q:クレジットノートを発行する時の英語の良い文例など教えて下さい。
A:海外宛てなら 日本のように「誠に申し訳ありませんが当方の手違いで云々・・・」と平身低頭な謝罪文でくどくど説明する必要はまったくありません。
クレジットノートの備考欄に、「To adjust Invoice No 1234, Due to wrong amount」「Unit price overcharged」などサラッと記入しておけば十分。担当から連絡があったら、「sorry for inconvenience」とでも一言サラッと謝っておけばいいでしょう。「人間だから間違えるのよ。だからCN処理するの」くらいな気持ちで構わないのです。
経理は、貸借と数字で理解する業務です。請求書やクレジットノートを貰って細かい説明を聞かなければ意味が分からないような人は、経理で働く資格がありませんから。
※今後も何かあったら追加します