(2012年11月12日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
アジアの2大経済大国である日中間で領有権を巡る論争が繰り広げられる中、中国人消費者による日本製品の不買運動に呼応するような形で、日本の個人投資家が中国の資産に背を向けている。
中国株ファンドの設定中止相次ぐ
調査会社リッパーのアナリストらによると、日本国内の資産運用会社はここ数週間で、上海株に投資するために合計で670億円募集しようとしていたファンドの設定計画を中止した。
日本最大の証券会社、野村が個人投資家を対象に行った最新の月次調査では、今後3カ月間で投資対象として「魅力的な」通貨を1つ選ぶよう求めた設問で、人民元が過去最低の評価に落ち込んだ。
日本政府が9月半ばに、論争の的になっている東シナ海の島々を国有化して以来、中国の消費者が日本ブランドの製品を避けるようになったため、化粧品会社の資生堂や時計メーカーのシチズンなどの日本企業では中国での売り上げが急減している。
そして今、日本の家計は同じような対抗手段で応酬し、中国の株式や債券、銀行口座に流れ込む投資を抑制しているとアナリストらは言う。
感情論も影響
「こうした事態には、感情が関係している」。三菱東京UFJ銀行のグローバル市場リサーチ部門の東アジア責任者、クリフ・タン氏(香港在勤)はこう話す。「たとえ島を巡る論争がなかったとしても、成長パターンの減速のせいで、(日本人投資家にとって)中国の輝きはいくらか褪せていたはずだ。だが、政治的な問題が多少の追い討ちになった」
世界最大の純債権国である日本の個人投資家――比喩的に「ミセス・ワタナベ」として知られ、集団として1500兆円以上の資産を所有している――は、外国の資産や通貨の価値に対して大きな影響を及ぼすことができる。
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