エネルギー新時代:大規模蓄電池、早期実用化へコスト低減加速
GSユアサのリチウムイオン電池事業部企画本部、中満和弘部長は、技術開発の進展でLiBの生産効率が当初の想定よりも向上しており、20年の段階で揚水発電の導入コスト水準は「狙えない数字ではなくなってきている」と話す。自動車メーカーの厳しい品質要求をクリアしたLiBこそが系統用蓄電池の本命になると自信をみせる。
<揚水発電並みのコストへ>
RF電池は充放電を繰り返しても性能低下がほとんどなく、寿命が長いのが特徴。住友電気工業(5802.T: 株価, ニュース, レポート)は今年7月、横浜製作所に設置した大規模蓄発電システムの中で同電池の実証運転を開始。14年の製品化を目指す。
現状のコスト水準は10万円/kWhのニッケル水素電池並みとされており、普及に向け「各部材、周辺機器の徹底的なコストダウンに努めている」(伊藤順司執行役員)。部材以外では電解液のコストにも着目する。「(資源の産出地域が偏在する)バナジウムを使わずに(コストメリットのある)汎用的な金属を使った電解液も開発しないといけない」とし、次世代RF電池用電解液の開発も同時に進め、揚水発電並みの導入コスト実現につなげる考えだ。
一方、NAS電池を手がけるのは日本ガイシ(5333.T: 株価, ニュース, レポート)。昨年9月に納入先で発生した火災事故を機に、生産を停止していたが、安全性の検証を踏まえ、今月、生産再開にこぎつけた。中長期の成長を担う重要製品と位置付け「海外での資材調達や生産などを検討する」(広報担当者)ことで、さらなる低コスト化を追求する方針だ。
<電力会社の財務悪化が懸念>
実用化に向けた期待が膨らむ一方、電池各社にとっては、顧客として有力視される国内電力各社の財務体質悪化が懸案となっている。電力各社が中長期の成長に向けた設備投資を抑制すれば、蓄電池市場の成長に水を差しかねない。
ただ、小規模発電設備などを需要地近くに配置する「分散電源のマーケットは全世界では無尽蔵」(住友電工の伊藤氏)との声が聞かれるなど、電力系統用蓄電池のニーズは国内外にわたる。電池各社のもとには既に海外からの引き合いも出ており、海外受注の積み上げが「成長シナリオの実現性を高めるひとつの要素」(国内アナリスト)との見方も強まりつつある。
富士通総研の高橋氏は、大型蓄電池の海外需要について、企業は「(商機を)先んじて抑えていくということが大切」と指摘する。蓄電池分野でグローバル・スタンダードを確立する好機を逃さないためにも、海外への技術流出を抑えつつ、従来以上にスピード感のある開発・営業体制を構築することが日本企業に求められている。
(ロイターニュース 長田善行;編集 大林優香、久保信博)
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