エネルギー新時代:大規模蓄電池、早期実用化へコスト低減加速

2012年 11月 13日 17:07 JST
 
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[大阪 13日 ロイター] 原発再稼働の道筋が見えない中、効率的な送配電を実現する大規模蓄電池への期待が高まりつつある。普及拡大を掲げる政府の新戦略の下、ジーエス・ユアサ コーポレーション(6674.T: 株価, ニュース, レポート)など電池関連メーカー各社は、大規模蓄電池の早期実用化に向け、課題である導入コストの低減に向けた開発を加速している。

各社には既に海外からの引き合いも出ており、国内外の電力不足緩和に役立つ蓄電池事業が日本の成長産業に育つ可能性もある。

<2万3000円への挑戦>

経済産業省は今年7月、2020年時点の世界の蓄電池市場で日本企業が50%のシェアを獲得することを目指す「蓄電池戦略」をまとめ、実証実験の補助などを通じ産業育成に注力する方針を示した。中でも電力系統用蓄電池は、再生可能エネルギーなどを取り入れて電力を効率的に送配電する「スマートシティ」構想に不可欠の技術。主に夜間に風力発電所などで発電した電力を貯蔵し、需要が高い昼間に送電する用途などで活用が期待されている。単純計算すれば、出力1メガワットの大規模蓄電池を国内に約1200基配備すると、大飯原発1基分が稼動せずに済むことになる。「電力システムに革命的な変化をもたらすデバイス」と、富士通総研経済研究所の高橋洋主任研究員は指摘する。

この蓄電池で有望視されるのは、リチウムイオン電池(LiB)や、硫黄とナトリウムイオンの化学反応で充放電するNAS電池、バナジウムなどのイオンの酸化還元反応を充放電に利用するレドックスフロー(RF)電池。いずれも性能面で一長一短はあるが、設置コストが高い点では共通する。コストのベンチマークとされるのが揚水発電の導入コスト。経済産業省によると、同発電の導入コストはキロワットアワー(kWh)あたり2万3000円で、この壁をクリアするのが普及への必要条件となる。

<リチウムイオン電池が一歩リード>

実用化で一歩先を進むのがGSユアサなどが手掛けるLiB。民生機器分野で広く普及しているほか参入企業も多い。ハイブリッド車や電気自動車(EV)向けなど、車載LiB市場の本格的な拡大は15年頃、大規模蓄電池市場はそれ以降とみられているが、家庭用蓄電池などへの展開など「普及のシナリオが見えやすい」(国内アナリスト)。小型化に向き、大掛かりな設備が必要なNAS電池やRF電池に比べ様々な場所に設置しやすいことも導入へのハードルを低くしている。

今後、車載向けの需要増などで量産が進めば、低コスト化が一気に進むと期待されている。三菱自動車工業(7211.T: 株価, ニュース, レポート)がEV「アイ・ミーブ」を発売した時点では、LiBの製造コストは20万円/kWhとされていた。だがGSユアサと三菱商事(8058.T: 株価, ニュース, レポート)などが出資するリチウムエナジージャパン(滋賀県栗東市)が13年春に予定する栗東第2工場の本格稼働後は、製造コストが発売当時の「4分の1程度」(業界関係者)になると見られている。   続く...

 
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