【ハノイ=佐々木学】共産党一党支配下のベトナムで、政府を批判するビラをまいた容疑で20歳の女子大生が逮捕された。釈放を求める意見や署名が海外からも次々とインターネットに寄せられ、政府に不満を抱く人々の象徴的存在になっている。政府側は国営メディアを通じ「逮捕は正当」とする記事を発信し、反論に躍起だ。
「反国家宣伝」の容疑で逮捕されたのは、ホーチミン市食品産業大学3年のグエン・フォン・ウエンさん。国営メディアが伝えた逮捕容疑は、ウエンさんが10月、政府に批判的な団体の指示のもと、南シナ海の領有権問題を巡る中国への対応や土地収用などについて政府を批判するビラをつくり、ホーチミン市の高架道路からまいた、というもの。
10月、地元の警察当局が逮捕状をとって身柄を拘束すると「かわいそう」「慈善活動にも熱心だった」「早く帰ってきて」などの声がネットなどで噴出した。若い女性が反国家宣伝の容疑で逮捕されるのは極めて異例だ。父親が「なぜ逮捕されたのかわからない」と心配している様子などが報じられると、釈放を求める109人の同大学生の署名や国家主席あての文書などが、次々とインターネットのサイトに集まった。