【あの人は今こうしている】
仮面ライダー2号の一文字隼人役だった佐々木剛さん
【芸能】
「最初に変身ポーズをした第14作と、それ以降とじゃ微妙に手順が違う。よ~く見るとわかるよ」
今も続く「仮面ライダー」シリーズ。男の子なら誰でも一度はやったことがあるのが変身ポーズだ。これを最初に披露したのが仮面ライダー2号&一文字隼人役を演じた佐々木剛さん。今どうしているのか。
「申し訳ない、待たせちゃって。今朝8時過ぎまで弐剛会の会員と自宅で飲んでたもんだから」
東武東上線は大山駅南口から歩いて4分。居酒屋「バッタもん」の店前で待っていると、佐々木さんが駆け込んできた。
「この店は5月8日、オレの誕生日の翌日にオープンしたの。店名はB級品の“バッタもん”と、仮面ライダーがバッタをイメージしてるのをひっかけたシャレだよ。つまみは300円からで、生中が500円。安いだろ? 生活費が稼げて、ファンや役者仲間が楽しく飲める場所になればいいと思ってるんだ」
自ら包丁を握る。
「さっき言った弐剛会ってのは、オレの公式ファンクラブでさ。3年ほど前に発足して、会員は100人ちょいかな。オジさんばかりじゃなく、漫画家の村枝賢一さんが連載してる『仮面ライダーSPIRITS』を見てファンになった10代、20代の若い層もいて、北海道から鹿児島まで全国ネットで広がってる。8月にはわざわざ日帰りで福岡からオレに会いにきてくれた熱心なファンもいた。ホント、うれしいね」
さて、「仮面ライダー」の主役・本郷猛役の藤岡弘、がロケ中の事故で大ケガを負い、佐々木さんが急きょ、仮面ライダー2号&一文字隼人役に抜擢されたのは71年7月。
「当初、大型バイクの運転免許を持ってなかった。で、本郷猛のようにバイク走行中にベルトのバックルに風を受けて変身することができず、苦肉の策として両手をクルリと回す変身ポーズが生まれたんだ。ただ、カタチが完全にできてなかったため、最初に変身ポーズをした第14作と、それ以降とじゃ微妙に手順が違う。よ~く見るとわかるよ」
「仮面ライダー」以降も個性派として活躍していたが、82年2月、不注意から当時住んでいた新宿のアパートから失火。右顔面を含む大やけどを負ってしまった。幸い、一命は取り留めるも、俳優の道は断たれた。
「妻と3人の子供を抱え、ちり紙交換、さお竹売り、石焼きイモ屋、警備員などバイトを掛け持ちして、1日16時間働いたよ。でも、結局、離婚しか道はなくなり、ホームレス同然の生活を送ってた時期もある」
そんな佐々木さんに救いの手を差し伸べたのが、かつて所属していた新国劇時代の同期、石橋正次らの役者仲間。彼らの尽力で91年の舞台「会津士魂外伝・山本覚馬」で9年ぶりの復帰を果たした。
「あの時ほど役者になってよかったと思ったことはないね」
95年2月からは日光江戸村の師範代に就き、ここ数年はトークショーや芝居がメーン。とくに劇作家の篠原明夫さん演出による自主制作ビデオ「改造人間哀歌」の上映会に力を入れている。
「この作品は、人はなぜ生まれてきたか? 人を愛するとは? 戦わずして相手に勝つには? をテーマにしてる。オレの心情にすごく響くんだよ」
北区のアパートに一人暮らし。なお、10月10日、店で誕生会イベントを開く。