2012年11月9日(金)

中国共産党大会② 曲がり角迎える中国経済

傍田
「昨日(8日)から開かれている中国共産党大会です。
今夜も、最高指導部の交代を控えた中国の現状と課題について北京と中継を結んでお伝えします。
まずは、こちらの映像をご覧下さい。

この番組『ワールド・ウェーブ・トゥナイト』は毎日、海外に向けても放送されていますけれども、昨日、中国国内での放送の映像と音声がおよそ9分間にわたって中断し、真っ黒な画面が続きました。
ご覧いただいている映像です。
中国でこのようにご覧頂けなかったのはちょうど、中国の民主活動家に対する当局の弾圧に触れた部分でした。
人権や民主化をめぐる中国の現状がありのまま国民に伝わってはならない。
中国指導部がこう神経を尖らせていることをまたもうかがわせる出来事でした。」

黒木
「さて、党大会2日目の今日(9日)は、中国の『経済』が抱える課題を取り上げます。
今日も、鎌倉キャスターが北京で取材を続けています。
共産党大会、2日目の様子はどうでしたか。」

中国共産党大会2日目 現地は

鎌倉
「党大会2日目が終わりました。
昨日、胡錦濤総書記の演説を受けて、党大会の後に新しい最高指導部入りの可能性がある幹部も出席して、今日は27の分科会が開かれました。
中国共産党にとって最も重要なイベントということで、当然地元北京の新聞も一面で書いているんですね、ご覧ください。

例えばこちら、“2020年までに個人の平均収入を2倍にします。”と書いてありますね。
そしてもうひとつ、こちらは“中央政府が初めて国民の収入を倍増させる目標を掲げました”というふうに見出しを書いています。
やはり経済問題それも、国全体の『マクロ』的なところよりも、経済成長の恩恵を公平に国民に行き渡らせると言及したことに、注目しているようです。」

中国共産党 胡錦濤総書記
「社会の公平性と正義を維持し、人民がともに豊かになる道を堅持する。
低所得者の収入を増やす一方、高すぎる所得は調節、違法収入は取り締まる。」

農民工 高まる不満

傍田
「胡錦濤氏が、今のような点に重点を置いた演説を行った、これは中国がどういった事情を今抱えているからと言えますか。」

鎌倉
「それはやはり、これまで中国経済を下支えしてきた人たちの不満が高まっているということがあると思います。
『世界の工場』として中国経済の急成長を支えてきたのは安い賃金で働く『農民工』と呼ばれる労働者たちです。
『農民工』というのは、改めてですけれども農村から都市部に出稼ぎにきている人たちのことです。
都市部に暮らす農民工の多くは、教育や医療などの社会保障が十分に確保されていません。」

背景には“戸籍”問題

鎌倉
「その背景にあるのは、中国特有の事情である『戸籍』の問題です。
それはどういうものかというと、都市部出身の人には『都市戸籍』があって、農村出身者には『農村戸籍』があります。
農村戸籍の人というのは、たとえ都市で生活をしていても、特別な手続きをしない限りはこの戸籍は移せないんです。
実際ここ、北京でも、農村の出身者は原則、『出身地がわかる証明書』を持ち歩かなければならないんです。
例えていうならば、外国人のような立場で暮らしていることになるわけなんです。
多くの農民工が暮らす地区を取材ました。」

農民工 生活の実態

群衆
「島を返せ!」


「日本製品をボイコットせよ!」

今年9月、中国全土に広がった反日デモ。
このデモに、農村出身の出稼ぎ労働者、『農民工』が多数加わっていたことが指摘されています。
彼らが日頃抱えている強い不満を各地のデモで爆発させたことがあれほど大規模な騒乱につながった一因だというのです。
実際、西安でのデモの際、日本車の持ち主の中国人を襲い重傷を負わせたとして逮捕されたのは、21才の農民工でした。
農民工は、中国でどのような立場に置かれているのでしょうか。
北京市郊外の「皮村(ひそん)」という地区を訪ねました。
中国では家賃が高い大都市の中心部を避け、こうした郊外に農民工が集まります。

鎌倉
「この皮村には仕事を求めて集まって来る農民工の人たちも多いんですね。
今ここに、“高い給料で雇います”と言っていますけれども、これ家具屋さんですね。
家具を作る工場、木工、大工さんを募集しています。」

鎌倉
「どちらの出身ですか。」

住民
「内モンゴル自治区です。
家計のためにがんばっています。」

増築された建物や「部屋貸し」の貼り紙もたくさんありました。
この地区は、ここ10年で2000人だった人口が、2万人に膨れあがったといいます。
この地区にある、農民工の子どもを専門に受け入れている、数少ない学校のひとつを訪ねました。

この学校は、農民工を支援しているNGO「工友之家(こうゆうのいえ)」が国の内外からの寄付をもとに運営しています。
学費は月100元、日本円でおよそ1200円あまりで、一般的な公立学校の4分の1以下。
月収が日本円で数万円程度の農民工でも払える額です。
北京市の場合、公立学校は、北京市に戸籍のある子どもなら無料ですが、農村の戸籍を持つ農民工の子どもが通う場合は、寄付金として年間5000元、およそ6万円が必要です。
農民工が、出稼ぎ先の大都市で子供を公立の学校に通わせるのは事実上不可能に近いのが現状です。
「農民工」は、こうした様々な差別的な待遇を受けているのです。
この学校は、寄付などの資金にも恵まれていて、プロの教師を雇い、公立学校と同じカリキュラムで教えています。

生徒
「学校の先生になりたい!」

「社会に貢献できる人になりたい。」

2人の子どもをこの学校に通わせている、山東省出身の師明亮(しめいりょう)さんです。
師さんは、毎日8時間から9時間、建設作業員として働いていますが、物価も上がり、毎月の給料は生活費と家賃で消えていきます。
今は、子どもが学校に通っていることが明日への希望だといいます。

師さん
「農民工の学校があり助かりますが、もっといい学校に通わせたいです。
北京の子どもと同じように高校や大学を受けさせたいです。」

北京市当局は、学校に対し、設備が不十分などの理由で、たびたび閉鎖を迫っていますが、学校側は「我々は必要な存在だ」として、要請を拒んでいます。

教師
「現状では、農民工の学校は必要です。
将来こうした学校がなくなり子どもたちがもっといい学校に行ける日が来るといいです。」


NGO、「工友之家(こうゆうのいえ)」は博物館も運営しています。
代表の孫恒(そん・こう)さんです。
歌手を目指して14年前に北京に出てきた孫さん。
結局、生計を立てるために肉体労働を続けざるを得ませんでした。
夢を抱いて生きる農民工の思いを伝える場所がほしいと、支援金を集めて作ったのです。
農民工の歴史を知ってもらい、地位の向上につなげようと、生活の記録や仕事の道具などおよそ3000点を展示。
農民工が暮らす一般的な部屋まで再現しました。
農民工は住むところを転々とするため、目まぐるしく転校をくり返す子どもも珍しくありません。

孫さん
「これは、農民工の学校の生徒の体操服です。
一人でこれだけ使っていました。
3年間で27回も転校したためです。」


孫さんは、農民工こそが、中国の経済発展を支えてきたのに、差別的な待遇は全く改善されないと憤りを感じています。

NGO「工友之家」代表 孫恒さん
「多くの農民工が法的保護を受けられず、残業代もなく労災にも遭っています。
改革開放で経済は成長したものの、高層ビルの裏の物語には関心がないのです。」

傍田
「とても興味深いリポートだったと思いますけれども、鎌倉さんが取材した実感としては、農民工の人たちの不満、どこまで高まってきているっていう感じですか。」

鎌倉
「農民工自体もですね、世代が変わってきていて、今や10代や20代の若い農民工もどんどん増えてきているんです。
彼らは『新世代農民工』と呼ばれています。
都市出身の若者と同じような服を着て、携帯も持っていますし、インターネットも同様に駆使しています。
ネットの世界では都市の人たちと差がないのにも関わらず、実世界では壁がある。
なぜ、同じ待遇が受けられないのかと、親の世代以上に不満を高めているわけなんです。
それではここからは、中国総局で主に経済問題を担当している神子田記者と共にお伝えします。
この高まる農民工の不満に対して、中国共産党としてはどう対応しようとしているんですか。」

中国共産党 格差是正に向けた対応

神子田
「農民工の抱える不満の強さには、中国政府もかなりの危機感を持っているようなんです。
胡錦濤総書記は昨日の党大会の演説で、農民工の教育や社会保障の充実について直接言及するなど配慮している様子もうかがえました。
さらに私が注目したのは、先ほどからありましたように、昨日の演説で2つの目標を掲げたことです。
一つは2020年のGDPを2010年に比べて2倍にするということ、それと同時に国民1人あたりの所得を2倍にするというものです。」

鎌倉
「これすごく注目されていますよね。」

神子田
「後者はですね、かつて日本でもあった『所得倍増計画』の中国版といったもので、所得を増やすことで農民工を含めた国民の不満を吸収する狙いがうかがえます。
一方、GDPを10年で2倍にする計画なんですが、実はこれを1年あたりに換算しますと、年率平均で7.2%程度の成長が必要という計算になります。」

鎌倉
「それはこれまでと比べてどうなんですか。」

神子田
「これはですね、去年(2011年)までの10年間の平均成長率が10%を超えていましたから、それにしますと、比べますとかなり抑え気味ということになりますね。
といいますのも、中国はこれまでの急成長で、所得の格差の拡大とかですね、環境汚染とか、いろんなひずみがでています。
そして不公平感や社会不安が大きくなっているわけですよね。
成長の早いままで進めていきますと、こうしたひずみが拡大してしまう懸念があるんです。
ですからこの成長目標というのは、一定の成長をはかりながら、かつ社会のひずみの是正にも対応できるといったぎりぎりの水準を追及した線だと私は見ています。」

鎌倉
「ただその、スピードを緩めたとはいっても、7%台っていうのは、先進国から比べればまだ高いレベルですよね。
しかも中国はこれまで急成長をすさまじい規模で成長してきたんですけれども、ここからさらにGDPを2倍にするということは、本当に可能なんですか。」

神子田
「実はすでに黄色信号がともっているんです。
中国の高い成長を阻むとみられているのが、急成長がもたらした人件費の上昇です。
最新の状況を取材しました。」

人件費上昇 企業経営を圧迫

胡錦涛政権の10年間、中国の労働者の平均賃金は、毎年平均で14.5%の高い伸びを続けてきました。
この人件費の上昇が今、企業の経営に大きな負担となっています。
先月(10月)中国沿海部・広州で開かれた中国最大級の貿易見本市。
中国国内の輸出向け企業およそ2万5000社が集まりました。
企業から聞かれたのは、人件費の高騰で製品の価格競争力が落ちているという話でした。
車のフロアマットや洗車用のブラシなど自動車用品をつくるこのメーカーは、従業員の人件費がこの1年だけで10%も上昇したといいます。

自動車用品メーカー
「工員を集めることが大変で、人件費も年々あがっています。
製品価格を上げなければ立ちゆかない状況です。」

中国政府は、企業の人件費の上昇が、これまで中国経済を支えてきた輸出の伸びを鈍らせていると危機感を抱いています。

商務省 沈丹陽報道官
「企業の生産コストが大きく上昇しているため、今年に入ってから貿易収支は厳しいものになっている。」

そんな中国では今、人件費削減のための工場のオートメーション化の動きが活発です。
北京市内のこの企業は、溶接や部品の組み立てなどを自動的に行うロボットの製造販売を行っています。
工場の人件費をカットしたい企業から問い合わせが相次いでいるということです。
社長の孫さんは、日本の大手自動車部品メーカーの現地法人で働いたあと、この会社を設立しました。
日本の企業のコストカットの考え方を参考にしていると言います。

北京正興天宝 孫征社長
「輸出を増やし、人件費を抑えるため自動化のニーズはさらに高まるでしょう。」

孫さんが製品を収める取引先の工場です。
地下資源を探査する機械を作っているこの工場では、機械に取り付けるナットを一度に大量にしめることのできるロボットを導入しました。
ロボットは人手を使わずに、一度に20個のナットを正確にしめていきます。

技術生産部 副部長
「機械を導入することで人件費が半分になりました。
将来は生産ラインの7~8割を自動化したい。」

経済成長にともない、安い人件費という強みを失いつつある中国。
コスト削減という課題が目の前に立ちはだかっています。

カギは技術革新

鎌倉
「人件費の高騰というは、経済が成長すればある程度は予想出来ることだと思いますけれども、それにしても今の中国にとってはこれは大きな課題なんですね。」

神子田
「そうですね、そして今、中国で人件費のカットとともに、非常に重要視されているのがこちら。

キーワードは“創新=イノベーション”。
この、こちらは日本の創造の創、創るという字なんですけれども、技術革新とかイノベーションという意味なんです。
これまで中国はですね、安い人件費を武器に、安い製品を大量に輸出してきたわけですけれども、これからは価格の安さで勝負するんではなくて、技術革新、つまりイノベーションによって、製品に高い付加価値をつけていこうというわけなんです。
私がこの夏に中国に赴任してから、政府の記者会見でも企業のインタビューでも、この『イノベーション』という言葉、頻繁に耳にします。
いわば国家のスローガンと言ってもいいかもしれません。」

中国 経済戦略は

鎌倉
「それは、例えばかつて高度成長を経て成熟していった日本経済と同じ道を中国もたどるということなんですか。」

神子田
「そうですね、おっしゃるように日本でも単純な工業製品から、自動車やハイテク製品へと技術革新を進めてきました。
中国もそうした将来像を描いているわけですが、かつての日本のウォークマンのように中国発のブランドが世界に羽ばたくのは、まだ時間がかかりそうです。
さらにこうしたイノベーションに加えて中国は、『産業構造の転換』という課題も抱えているんです。
それは『輸出に依存してきた経済』を、『内需の拡大』に転換していくということなんです。
そこで中国共産党が進めているのが内陸部の開発です。
中国では、上海などの沿海部に比べて内陸部の開発が遅れているんですね。
昨日の演説では、こうした格差解消のために、内陸部の開発や工業化を推し進める方針が打ち出されました。
内陸部に購買力をもつ中間層を育てることで、国全体の需要を拡大していこうというのが中国政府のシナリオなんです。」

不安要因は社会保障

鎌倉
「確かに政府はそういうシナリオを描いているようですけれども、それは実現可能ですか。」

神子田
「実はそこにもですね、一つ大きな不安要因があるんですよ。
それは社会保障が整っていないことなんです。
中国はかつてほとんどの企業が国営でしたから、年金も医療も企業が丸抱えするという形だったんですけれども、企業が民営化されて以降ですね、十分な社会保障を受けられない人が多くなっているんです。
このため、医療ですとか老後ですとか、とにかく将来に不安を感じるため、今お金を使わないようにする、ちょうど日本のようなものなんですけれども、そういった人が増えてですね、それが消費の拡大を阻む要因になっていると言われているんです。」

鎌倉
「まさに今指摘があった社会保障についてなんですけれども、今中国でその社会保障大きな課題となっていまして、こういった言葉がよく聞かれるんですね。
こちら、これ「未富先老」というんですが、これどういう意味かというと全国民が豊かになる前に、中国は高齢化社会になってしまうぞ、という、そういう意味の言葉なんです。
中国では、高齢者とされる60才以上の人口がすで1億8000万人にのぼっています。
高齢者たちは今、どんな老後を送っているのでしょうか。
その課題を探ってみました。」

高齢化社会 老後の生活は

私が訪ねたのは、3年前、北京市郊外に作られた民間の老人ホームです。
費用はひと月、8500元、日本円で10万円あまり、北京市の平均月収のおよそ2倍です。
そのため入居しているのは富裕層に限られ、ほとんどが元大学教授や政府機関の元幹部などです。
24時間体制の介護に加え、医師による診察も1日2回あります。
夫と入居している張超(ちょう・ちょう)さん。
夫と2人で月額1万元の年金から老人ホームの費用を払っています。
自らこのホームを選んで入居しました。

張超さん
「サービスもいいし、体調もよくなりました。
“2度目の春が来たね”とよく言われます。
ずっとここに住みたいです。」

しかし、多くのお年寄りは年金も少なく、このような施設を利用することはできません。
更に、一人っ子政策を進めてきた中国では、子どもが独立して高齢者だけで暮らしている「空巣家庭」と呼ばれる世帯が増えて、子どもに頼ることもできなくなっています。

「物価が上がり続けているので毎年年金をあげてほしいわ。」

「子どもは自分の生活が苦しく仕事が忙しいのであてになりません。」

北京市でお年寄りのケアを行っているNGOです。
経済的にゆとりのないお年寄りのためにと介護サービスを立ち上げました。

「こんにちは。」

「おじさん、いらっしゃい。」

このデイケアに通うお年寄りはおよそ30人。
ほとんどがひと月1000元以下の年金で暮らしています。

「お年寄りの仲間とおしゃべりしたり、手を動かしたりするのは楽しい。」

中国では介護サービスに対するニーズが高まっていますが、まだまだ足りないのが実情です。
このNGOでは「空巣家庭」のお年寄りの介護も行っています。

莫明英(ばく・めいえい)さん、72才。
血圧が不安定なため外出もままなりません。
ひとり暮らしの莫さんは、誰かに健康管理を手伝ってもらわざるをえない状況です。

莫さん
「身体面でも生活面でも困っています。
スタッフがとても良くしてくれるので、本当に助かっています。」

専門家は、増える一方の高齢者を支えるための制度が充実していないことが問題だとしています。

北京市老人介護協会 副会長
「一人っ子政策で子どもが少なくなり、自分の親を介護する力も時間もない。
今後政府は社会保障や介護などへの支出を増やさなければならないでしょう。」

高齢化社会 経済への影響は

鎌倉
「中国では60才以上の人口が2億人を超えるのも、もう、もはや時間の問題のようですね。
この超高齢化社会というのは、中国経済へ与えるインパクトはどの程度のことなんでしょうか。」

神子田
「非常に深刻ですね。
特に中国は一人っ子政策をとってきましたから、今後急速に少子化が進みますので、社会保障の財政負担というのは年々重くなっていくんです。
しかし、この問題を放置しますと、消費の拡大に支障が生じるだけでなく、新たな社会不安を招きかねません。
このため、昨日の胡錦濤総書記の演説でも、日本の厚生年金のように、企業からも財源を拠出させて、都市や農村のすべての人々をカバーする新たな社会保障の仕組みを整備する方針が打ち出されました。
中国経済は鄧小平氏による改革・解放路線以降、猛烈な勢いで成長を続けてきました。
しかしその一方で成長から取り残された人が大勢いるわけです。
そうした人たちにも経済発展の恩恵が実感できるような政策をどう打ち出して、国民の不満を解消していくのかが中国の新指導部に課せられた課題です。
かつて日本でも、『モーレツからビューティフルへ』という言葉がありました。
これは高度成長から成熟した安定成長へ、という意味なんですが、中国が今後、こうした経済のモデルチェンジを、どう実現していくのか、これから注目していきたいと思います。」

鎌倉
「さて、最後になりますけれども、今回、私自身、数日間の取材だったんですけれども、これまで中国で取材した時にはまったくなかった経験もしました。
というのもやはり、反日デモの影響で、日本のメディアだということで何度も取材拒否にあったんです。
改めて対日感情の悪化を実感しました。
今年は日中国交正常化から40年という節目の年です。
その年にふさわしい関係の改善が一日も早く実現して欲しいと心から願っています。
ただ、中国の一般庶民は自分たちの暮らしにもっと身近なことにも大きな不満を持っています。
当局などに対する抗議デモも頻発していて、その数は年間20万件ともいわれていますけれども、実態は明らかにされていません。
胡錦濤氏が、昨日演説でも認めましたように、格差の問題というのは今の中国にとって最も重要な問題の一つです。
こうした”矛盾を問う民の声”に、いかに有効な答えを出していけるのかが、次の政権の正当性を決めていくことになると思います。
2日間にわたって中継でお伝えしてきました中国共産党大会、来週、14日に閉幕して、そして翌15日には新しい最高指導部の顔ぶれが判明する見込みです。」

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