象徴的なのは、12年3月期の第2四半期、ディスプレー製品の製造を行う香港のTPV社の株式評価損154億円を計上したことだ。株式買い増しから1年たたないうちの減損に、業界が驚いた。翌第3四半期でも、35億円の減損が続いている。
12年3月期決算と同時に発表される新中期経営計画で、飯島社長は年間1兆円近い投融資計画を打ち出し、その3分の2近くを非資源分野に充てるとみられている。
経営陣の危機感が表れているが、非資源分野への投資は、単なる配当益を狙っただけのM&Aでは効率的に稼げない場合が多い。経営に踏み込み、事業の周辺領域をどんどん開拓していく商社の本来の機能が発揮できてこそ、収益につながるといっても過言ではない。
そのために必要な「総合力を生かした目利き機能が、組織の中で薄れていっているのではないか」という社内外からの指摘を早く払拭したいところだ。
三井物産の財務は極めて優良で、ネットD/Eレシオ(純負債÷株主資本)は約0.9倍と、財務の健全性の目安とされる1倍を下回っている。現預金は約1兆4000億円に積み上がり、投資余力は十分だ。
非資源分野への投資は、実を結ぶか。三井物産の収益構造の転換を、業界は注視している。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 脇田まや)