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【第68回】 2012年5月16日
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週刊ダイヤモンド編集部

【三井物産】
資源“一本足打法”からの脱却へ
迫られる収益構造の転換

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 金属資源とエネルギーの2大資源部門が稼ぎ頭である点は、他の総合商社も変わらない。だが、他社の資源比率は4~7割で、三井物産の約9割は突出している。その分、市況によって業績が左右されるリスクも大きい。

 原油高や、中国など新興国の旺盛な鉄鉱石需要で資源・エネルギー分野での収益が伸び、食料や生活資材、化学品などの非資源分野の不振は目立たない。だが、自身は鉄鋼など金属資源畑を歩んできた飯島彰己社長は、「資源と非資源の純利益バランスを50対50に持っていきたい」というフレーズを2年前の社長就任当時から何度も繰り返してきた。過度な資源依存に、強い危機感を抱いている。

 資源偏重のアンバランスな収益構造を抱える三井物産だが、これまで非資源分野への投資を怠ってきたわけではない。

 図(3)は昨年12月時点における、三菱商事との総資産構成比の比較だ。資源・エネルギー分野の総資産構成比は三菱商事の約45%に対して三井物産も約 40%と同水準。各分野の総資産構成比を見ても、両社共に資源・エネルギー分野だけでなく、機械や食料、化学品などに、バランスよく資本を投下しているこ とがわかる。ポートフォリオ上は、三菱商事に劣らずリスク分散ができている格好だ。

 それにもかかわらず、三井物産の非資源分野の収益は約640億円と、約1500億円の利益を見込む三菱商事の後塵を拝している。

投資余力は十分
問われる総合力

 原因は、非資源分野での投資効率の低さにある。言い換えれば、「固定資産の伸びの割に、利益が出ていない」(アナリスト)のだ。

 他商社とのセグメント別ROA(純利益÷総資産、投資した資産の収益性を示す指標)の比較を見れば一目瞭然だ(図(4))。三井物産は金属資源や海外支 店のROAでは群を抜いているが、それ以外のセグメントでは純利益で見劣りする住友商事や伊藤忠商事、丸紅を下回る水準がほとんどだ。生活産業や金融・物 流に至ってはマイナスの数字となっている。

 非資源分野で劣る最大の理由は、不明瞭な投資戦略にある。「ノウハウのない分野への投資で、高値づかみしているように映る」と話す業界関係者も多い。

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