特集ワイド:パソコン遠隔操作事件、誤認逮捕次々 虚偽自白からの護身術

毎日新聞 2012年11月06日 東京夕刊

 パソコンがウイルスに感染し、遠隔操作で犯罪行為に使われるなんて怖い話だ。しかし、もっと恐ろしいのは、逮捕されたら最後、犯人に仕立て上げられてしまうことではないか。今回の事件では、逮捕された4人のうち2人までが自白させられている。なぜ人は「虚偽の自白」をしてしまうのか。避ける手立てはないのか。【小国綾子】

 ◇原因は−−暗示、説得、脅しに屈し「早く楽に…」/対策は−−弁護士すぐ呼んで周囲の支援も必須

 「連日の厳しい取り調べで記憶の変容が起こることがある」と語るのは、石川知裕衆院議員だ。小沢一郎・民主党元代表(現・国民の生活が第一代表)の政治資金規正法違反事件を巡り、元秘書として東京地検特捜部の取り調べを受けた(同罪で1審有罪、控訴中)。保釈後の再聴取を「隠し録音」し、担当検事の捜査報告書に虚偽の記述があることを指摘した。

 石川議員は「身に覚えのないことでも『記憶違いではないのか』と執拗(しつよう)に追及されると、独房で『俺の記憶違いなのかも』と不安になった」と振り返る。

 新潟青陵大大学院の碓井真史(まふみ)教授(社会心理学)は「暗示性」という概念で説明する。「人間は強い不安感や睡眠不足、疲労、外界からの遮断、密室での監禁状態などの条件下では暗示にかかりやすくなる。例えば火災原因について『おまえがここで吸い殻を捨てたのだろう』と追及されると、暗示にかかり、追及に沿った記憶が作られてしまう」

 石川議員は「逮捕されると自分の人生などどうでもよくなり、周囲の人に迷惑をかけるまい、とばかり思い始める」と証言する。だから他人を必死でかばい、偽の自白をするのではないか、と。今回、幼稚園に襲撃予告メールを送った容疑で逮捕された男性(28)は、同居女性をかばおうとして容疑を認めたとされる。

 また石川議員は「長時間、担当検事と1対1の取り調べが続くと、楽に乗り切るために相手と良好な関係を維持しようとして、相手の意向に沿った供述をしようとする力が働くものだ」と話す。否認する限り、家族や友人との接見は許可されない。長い時間を過ごす相手は取調官だけだ。元警視庁捜査1課長の田宮栄一さんは「取り調べは人格と人格のぶつかり合い。容疑者が『完落ち』し、すべてを自供した後、取調官と抱き合って泣くことすらある」とその特別な関係を説明する。碓井教授は虚偽の自白は「供述を引き出そうとする取調官と、楽になりたい容疑者の『共同作業』で生まれる」という。

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