現場から:小学校襲撃予告、誤認逮捕・処分 捜査・審理、深刻な課題 /神奈川
毎日新聞 2012年11月03日 地方版
捜査関係者によると、男性は家族と面会後、ひとしきり泣いてから、自分の意向で上申書を書いたという。そこには、襲撃予告の内容のほか、「鬼殺銃蔵(おにごろしじゅうぞう)」というハンドルネームの由来について、「有名な酒の名前や不吉な数字とされる『13』から付けた」との趣旨の記載があった。
なぜ男性はこんな上申書を書いたのか。しかも、その内容は、事件に関与していない男性が予備知識なしに書くのは難しいものだ。
TBSなどに「犯行声明」メールが届いたことが発覚した後の先月17日、県警は男性に再び話を聞いた。この際、男性は「県警の取り調べで『認めないと少年院に行くことになる』と言われた」「地検の取り調べで『否認すると長くなる』と言われた」と説明した。捜査員による誘導など不適切な取り調べがあった疑いが浮上した。
これに対し、取り調べを担当した県警の捜査員は、県警内部での聞き取りに、こうした発言を否定した。ある警察署幹部は「昔ならいざ知らず、そんな調べ(誘導)をやる人はいない」と語る。
保土ケ谷署で行われた男性の取り調べは、少年事件であることに配慮して、取調室のドアを開けっ放しにしていたという。室内の様子は、外にいる署幹部や署員らも見ることができた。ただ、「ドアが開いていても、中での言葉のやり取りは聞こえないのでは」との指摘もある。
男性はこの上申書を出した翌日、再び容疑を否認した。しかし、家裁送致前日、横浜地検検事の調べにまたも容疑を認めた。
地検で作成された供述調書は、県警に提出した容疑を認める上申書の内容とほぼ同じ。検察幹部は「(県警の取り調べとは)違った角度から調べなければならなかった。上塗りになった」と捜査の不十分さを認めたが、誘導など不適切な取り調べは否定している。
男性の供述は、否認→認める→否認→認めると二転三転した。少年事件については以前から、捜査員の言葉に迎合しやすいなど取り調べの難しさが指摘されてきた。県警も地検も、不自然な供述の変遷にもっと注意を払い、男性の心の揺れに配慮すべきだった。
◇家裁、捜査不十分気付かず
横浜地検は7月20日、男性を横浜家裁に送致し、その日のうちに横浜家裁は静岡家裁浜松支部に移送した。家裁浜松支部は同日、観護措置を決定し、男性は少年鑑別所に収容された。