現場から:小学校襲撃予告、誤認逮捕・処分 捜査・審理、深刻な課題 /神奈川

毎日新聞 2012年11月03日 地方版

 横浜市のホームページ(HP)に小学校襲撃予告を書き込んだとして男性(19)が誤認逮捕され保護観察処分となった問題は、サイバー犯罪捜査や取り調べの在り方、少年事件の審理に深刻な課題を残した。横浜地検の申し立てで処分は取り消されたが、男性の父親は「徹底的な検証と意識改革をすべきだ」と訴える。県警と地検は捜査の検証を進めているが、なぜ、冤罪(えんざい)を生んでしまったのか。

 ◇疑問点、過信で解明怠る

 6月29日の書き込み当日、県警は横浜市のサーバーに残されたIPアドレス(端末の識別番号)から、男性のパソコンにたどり着き、2日後に男性を逮捕した。

 逮捕直後、男性のパソコンデータを解析していた県警サイバー犯罪対策センターの担当者は、不可思議な点を見つけた。襲撃予告の本文や題名、ハンドルネーム(書き込み者の名前)を合わせると約270文字に上るが、それがわずか2秒で書き込まれていた。

 取り調べの際、捜査員は2秒で書き込まれたことを示す記録を男性に見せた。「2秒じゃ(書き込むのは)無理じゃないですか」。容疑を否認していた男性は訴えた。しかし、捜査員は「事前に文面を作っておけば可能じゃないか」と取り合わない。その後、県警の取り調べで「2秒問題」について触れられることはなかった。

 真犯人はウェブ上の攻撃手法「クロスサイト・リクエスト・フォージェリ(CSRF)」を使ったとみられる。インターネット掲示板「2ちゃんねる」に張られたURLをクリックすると、襲撃予告が自動的に書き込まれる仕掛け。県警は男性がURLをクリックした形跡を確認したが、リンク先のページは既に閉じられ、たどることができなかった。

 県警が男性に謝罪した先月20日、同センターの伊藤守所長は振り返った。「書き込み時間の短さには疑問を感じていた。CSRFが使われていたとは認識できなかった。捜査は不十分だった」

 不自然な点を見つけながら、県警はIPアドレスや市HPへのアクセス記録を過信し、その解明を怠った。今回の問題は、サイバー犯罪捜査態勢の不備と甘さを明らかにしただけではなく、その信頼性までも根底から揺るがした。

 ◇不自然な供述二転三転

 容疑を否認していた男性は送検翌日の7月4日、一転して容疑を認める上申書を県警に提出した。

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