京を掘る:渡れぬ橋、水道管破裂 インフラ老朽、府内でも増 /京都
毎日新聞 2012年10月13日 地方版
◇予算も人も足りない 進まぬ補修、住民生活を直撃
60〜70年代の高度成長期に集中して建設された橋や道路、水道などインフラの老朽化が進んでいる。修繕計画を策定して少しずつ補修を進めるよう国が地方自治体に求めているが、府内でも身近なインフラの劣化が住民の生活に影響を与え始めている。限られた予算と人をどう使うのか、自治体と住民を悩ませる問題を探った。【林哲平】
南丹市北部の山あいを縫うように流れる田原川。その清流にかかる同市日吉町四ッ谷地区の二つの橋には、2年前、市が「車両通行止」と書いた看板を設置した。
1963年に建設された上流側の寺ノ下橋は、鉄製の橋桁にコンクリート床と鉄板が数枚並べられた簡素な造り。金属製の欄干はさびて曲がっている。下流の和田谷橋も、同時期の67年の建設だ。近くで農作業をしていた男性(71)は「対岸の家からトラクターを運ぶのにも別の橋に大回りしないといけないので大変だ」とこぼした。規制を知りながら車で渡る住民も後を絶たないという。地域で市に補強工事を要望したが、いい返事はもらえなかった。「どこも金がないからな」とあきらめ顔だ。
注目を集めつつあるインフラの維持管理問題。財政力の乏しい小さな自治体だけの課題でなく、程度の差こそあれ、都道府県や市町村が共通して抱える「時限爆弾」だ。コンクリート製の橋の寿命は50年前後といわれるが、例えば京都市では、建設後50年を越えた橋(全長15メートル以上)は全体の17・5%。20年後には6割を超す見通しだ。
米国で相次いだ落橋事故を受けて、日本でも国土交通省が07年度から地方自治体に対し、13年度までに修繕計画を策定するよう求め、補助金も設けた。だが、各自治体に橋の補修の専門知識を持つ職員が少ないことや予算の制約などでスムーズに進んでいないのが現状だ。
府内では今年4月の時点で、25市町村(市で管理する15メートル以上の橋がない向日市を除く)のうち、12市町村で計画が立てられておらず、橋の点検すら終わっていない自治体もある。また、南丹市の橋のように老朽化で通行止め、通行規制がかかる橋は府内で12本(4月時点、国交省調べ)にのぼる。そのため府では市町村職員を対象にした講習会を毎月行うなど、サポートを急いでいる。
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