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【ゴルフ】

遼 男泣き

2012年11月12日 紙面から

◇三井住友VISA太平洋マスターズ<最終日>

▽11日、静岡・太平洋C御殿場C(7246ヤード、パー72)▽曇りのち雨、気温11・2度、風速2・4メートル▽賞金総額1億5000万円、優勝3000万円▽64選手(うちアマ2人)▽観客4455人

 苦節71戦目、やっと勝った! 石川遼(21)=パナソニック=が7バーディー、4ボギーの68と伸ばし、通算15アンダー。1打差を守り切り、一昨年のこの大会以来、1年11カ月27日ぶりとなるツアー通算10勝目を挙げた。21歳1カ月での10勝到達は、1973年のツアー制施行後では池田勇太の26歳9カ月を抜いて最年少。試合後は久々の勝利に号泣したが、ツアー残り3試合での11勝目にも照準をピタリ。長いトンネルを抜けた21歳が、新たに上昇気流に乗る。

 この瞬間を待っていた。最終18番。わずか10センチのウイニングパット。目が潤む。手が震える。慎重にボールを沈め、天を仰ぐ。ついに勝った。史上最年少での通算10勝目。駆け寄るスタッフの姿に石川が感極まった。

 「本当に…いろいろ…あった2年間で…。みんなが僕を支えてくれた。最高の舞台でやらせてもらえて幸せです」

 実に728日ぶりの復活劇。この2年間同様、最後まで苦しんだ。10番からの3連続バーディーで一時は2位と4打差。だが、試練はここから。13番、50センチを外した。16番、バンカーから寄せきれなかった。17番、3パットでついに2位の松村と1打差。「またダメなのか…」。弱気で迎えた18番、松村の2打目がグリーン左12メートルに乗るのを見て、覚悟を決めた。

 「これ以上隙を見せたら負ける。あれより内側に寄せる」。残り228ヤード。5番ウッドで振り抜いた。打球は左からの風を切り裂き、ピン下6メートルに2オン。「あれで優勝が近づいた」。土壇場での会心の一打。戻ってきた“強い石川”の姿に、大歓声がとどろいた。

 最後の勝利は2年前のこの大会。以来、長い“空白”が始まった。勝てず、時に予選落ちの繰り返し。今夏には腰を痛め、練習を急きょ中止したこともある。努力が実らず、「練習で本当にうまくなるのか?」と悩む日々。それでもクラブを振り続けた成果が、この日の11番。残り225ヤードから2オンした5番アイアンに、大きくうなずく。

 「今週一番のショット。やっぱり練習で強くなった。心も強くなった」

 優勝直後の18番グリーン。ボールをギャラリーに投げ込んだが、ウイニングボールはポケットへ。「彼女にあげるんです」。昨秋に交際を発表した婚約者へのプレゼント。「ずっとあげていたけど『最近ボールくれないね』と言われていた。ホッとしています」。今週も試合を見守った彼女に2年ぶりの勝利を届けたが、石川がこれで満足するはずもない。

 「この2年をこれで帳消しにできるとは思っていない。残り3戦、もう1つ勝ってこそ完全復活」。富士の麓で上げた復活ののろし。新たな進撃が始まる。 (寺西雅広)

 

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