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関東からの自主避難者孤立 東日本大震災1年8ヵ月

京都新聞 11月11日(日)18時39分配信

関東からの自主避難者孤立 東日本大震災1年8ヵ月
関東からの避難者が集まったお茶会で情報交換する山田さん(中央)=京都市左京区

 福島第1原発事故による放射能の影響を避けるため、関東から京都や滋賀に自主避難してきた人たちが孤立を感じている。原発から離れた場所からの避難のため「意識過剰だ」と陰口を言われたりするためだ。関東でも放射線量が局地的に高い「ホットスポット」が見つかっており、避難者は「放射能を少しでも避けたい気持ちを理解してほしい」と訴える。11日で東日本大震災発生から1年8カ月。
 「ずっと千葉にいたかったけど、子どものことを考えると…」。千葉県柏市から6月に京都市西京区へ避難した山田由美子さん(45)は、苦渋の決断を振り返る。夫は勤めていた会社を辞めて転職。4歳の息子は幼稚園の友達と離れた。
 柏市では昨年10月、高濃度の放射性セシウムに汚染された土壌が見つかった。1キログラム当たり27万6千ベクレル。神奈川県など原発から遠い地域でも「ホットスポット」が報告されるたびに恐怖感が募った。柏市で除染や放射線測定の活動に参加したが、除染した場所で再び線量が高くなる事例が続いた。長男が原因不明の下痢に悩まされたことも不安に拍車をかけた。
 周囲で避難する人が相次いだ。「出ていきたい人と残る人の間で微妙な雰囲気になり、放射能を話題にしなくなった。仕事の都合で引っ越すと言ったけど、みんな本当の理由を分かっていたと思う」と話す。
 昨年4月に東京から左京区に子どもと避難し、現在は夫と家族3人で暮らす中村純さん(41)も、東京で「人づてに意識過剰だと悪口を言われた」と打ち明ける。
 東京からの避難者は府の住宅あっせんなどの支援の対象外。福島県が実施する甲状腺検査や健康診断もない。
 仕事を辞めて避難してきた。貯金は底をつき、住宅ローンを抱える。「関東の避難者は余裕があると勘違いされがちだが、他県の人と同じように身を削っている」と訴える。
 母子避難者のなかには、地元に残る夫の仕事や自身の生活に影響が出ないよう、避難の事実を伏せる人もいる。東京から野洲市に避難した女性(43)は「白い目でみられることもある。仕事に影響が出ると生活ができなくなるので、余計な情報は言わないようにしている」と警戒する。
■一人一人の選択尊重を
 ボランティアや避難者支援に詳しい桜井政成立命館大准教授(福祉社会学)の話 関東からの避難者は行政に頼れずに自ら除染活動などをしてきたが、限界を感じて避難を決めた人が多い。チェルノブイリ原発事故で被害を受けたベラルーシには、避難する、しないにかかわらず支援する制度がある。一人一人の選択を尊重し支える仕組みが必要だ。
■独自除染に補助なし
 高い放射線量が局地的に測定される「ホットスポット」などの対策として、国は関東でも5県の51市町村を「汚染状況重点調査地域」に指定している。しかし、各市町村とも、国の補助が出ない基準値以下の放射線量では除染を行っておらず、独自の除染を希望する市民への支援もほとんどない。
 ホットスポットは重点調査地域に指定されていない東京都内でも相次いで見つかっている。都内から京都市内に避難した男性(52)は「国の基準に達しない値の放射性物質でも、内部被ばくすれば影響は甚大。国や都はそこまで考えていない」と不満を漏らす。
 汚染状況重点調査地域での除染費用は国が負担するが、放射線量が一定基準(年間1ミリシーベルト)を超える地域に限られる。
 一方、ホットスポットが見つかり住民の県外避難が相次いだ千葉県柏市は3月、独自の除染実施計画を策定した。線量が基準以下で国から除染費用が出ない場合に、費用をかけずに簡単に除染できる方法を紹介した冊子を市民に配り、除染道具の貸し出しを始めるなど、市民の不安払拭(ふっしょく)に力を注ぐ。

最終更新:11月11日(日)18時39分

京都新聞

 

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