中国の既得権者が変革の障害になっている。指導者が労働者の権利を向上させようとした時、輸出業者は大声で悲鳴を上げた。権力とカネがあまりに絡み合っているため、変革に抵抗する既得権者と変革を促すはずの党が全く同一のものになっている。
要するに、集産主義的な指導部は、習氏が持っているかもしれない毛沢東的な傾向を抑制する一方、既得権者は、習氏の内面にいる鄧小平を押しつぶそうとするということだ。もちろんこれは、習氏が変革の推進を望んでいるということが前提になっている。
習近平氏は隠れた進歩主義者?
では、習氏とはどんな人物なのだろうか? そして、同氏が進歩主義的な意図を持っていると考えるのは理にかなっているのだろうか? ここでパーティーゲームが始まる。
大方の人は、習氏の方が胡氏より個性を持っていることに同意する。これは高いハードルではない。外交官たちは習氏のことを、問題をよく掌握し、用意されたメモなしで対処できる自信を持った魅力のある人物だと言う。
多くの人は、政治的に穏健派だった習氏の父親、習仲勲氏に目を向ける。習仲勲氏は1930年代に、毛沢東が「長征」を終えた場所でゲリラ基地を築くのを助けた。半世紀近く後に、習仲勲氏は広東省に経済特区を設立した。香港に逃げ出す人たちを射殺するのではなく、経済開放により人々がとどまるのを促したのだ。
これらの物語から、一部の向きは、習近平氏は政治改革と経済改革の両面で隠れた進歩主義者である可能性があると考えている。もっともらしい説だが、その可能性は高くない。「人々は胡氏に大きな期待をかけていたが、過去10年間は失われた機会だった」と、ある学者はくぎを刺す。
胡氏と温氏は漂流したが、より大胆な政策のための土台は築かれたのかもしれない。習氏と首相に就任する予定の李克強氏は、世界銀行が国務院発展研究センターと共同で作成した報告書「2030年の中国」に暗に賛同している。この報告書は、民間部門の自由の拡大、法の支配の強化、平等の拡大、環境保護の強化を提言している。
中国が「中所得国の罠」を避けるためには、こうした変革が不可欠だ。だが、このような課題は、敗者を生み出すことなしには実行できない。変革を実現するつもりなら、習氏はこれまで極めて慎重に避けてきたことを行わなければならない。すなわち、敵を作り始めることだ。
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