(2012年11月8日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
北京で誰もがお気に入りのパーティーゲームは、習近平氏がどんな国家主席になるかを言い当てることだ。就任からほぼ10年間経った今でも、胡錦濤氏がどんな国家主席だったのか正確に言うのは難しいだけに、このゲームは口で言うほど簡単ではない。
毛沢東から、まさに適任の胡錦濤氏が占める「個性不在地帯」に至るまでの道程は、共産党が次々と指導者からカリスマ性を奪う道程だった。
個性不在地帯で頂点に立つ指導者
常軌を逸した政策からまた別の常軌を逸した政策へと中国を振り回すことができた毛沢東のような人物に代わって、中国には今、エンジニアとテノクラートから成る9人の委員会がある。毛沢東は土地を集産化した。その後継者たちは、土地の代わりに意思決定を集産化した。
中国の指導者たちは、ある外交官が「サメのプールの中のサメのプール」と表現するものの中で競争している。
習近平氏はどんな国家主席になるのか〔AFPBB News〕
最後まで生き延び、血まみれの海の上に浮上する指導者たちはタフだ。何よりも彼らは、人の心証を害さない方法を知っている。習氏は、余計なことをしないことで、8300万人の党員から成る共産党の頂点に登りつめた。
だが、これほど頂上に近づいた今、習氏が実際にどれくらいの権力を持つのかは、はっきりしない。
習氏は11月15日頃に、共産党総書記として人民大会堂の舞台に向かってゆっくりと歩いているだろう。国家主席就任は来年3月まで待たなければならず、中央軍事委員会の主席として胡氏の後継者になるまでには、もしかしたらさらに1年以上待たなければならないかもしれない。
前任者が思い知らされたように、時期をずらした権力移行の後でさえ、様々な制約があるだろう。
改革を阻む既得権者
胡氏はいくつかの物事を成し遂げることができた。台湾との関係を修復した。首相の温家宝氏とともに、初歩的な社会保障制度の基礎を築き、中国農村部に発展をもたらした。だが、大きな後退もあった。所得格差は拡大し、社会的な不満は膨らんだ。
一部の分野では、胡氏はほとんど無力だった。国内消費の方向に経済をリバランスするという目的は、国営企業の力を制限することを意味する。だが、国有企業は勢力を拡大し、2008年の危機後の景気刺激策で莫大な利益を得た。中国経済は、胡氏が国家主席になった時よりも、消費主導ではなくなり、より投資主導になっている。
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