揺らぐイラン:制裁下の市民は/1 広がる格差 働く子供急増、高級外車は販売好調
2012年11月11日
一方、富裕層が多いテヘラン北部のアバサバード地区を訪れると、そこは外車展示場が点在する別世界だった。イランでは外車は輸入関税が100%で他国に比べ高額だが、地元紙によると、今年3月までの1年間に売れたドイツ高級車ポルシェは563台。外車ディーラーのマザヘリさん(32)によれば、売れ筋は20万〜40万ドル(1600万〜3200万円)のポルシェやベンツで、売り上げは年々上昇しているという。「制裁の影響? 富裕層には関係ないさ」。マザヘリさんが笑った。制裁により農業や鉱工業など生産活動が停滞する中、テヘラン市内では新銀行の店舗が次々と登場。設立には、政治家や軍が関与したとうわさされる。
「利子をとるのはハラーム(宗教上の禁忌)」とするイスラム金融の原則と実態は遠く、銀行の事実上の預金金利は17%(1年定期)。住宅や事業者向けの貸出金利はさらに高い。富裕層は預金で潤い、借金が必要な庶民は苦しむという構図だ。最高指導者ハメネイ師は「資本主義は腐っている」と繰り返すが、そのひずみにイラン自身が苦しんでいる。
「保護協会」理事のアリアクバルさん(42)が憤る。「米欧の経済制裁はイランの中間・貧困層を傷つけ、働く子供まで増やす。一方で、政府要人や富裕層には何らダメージを与えない。政府の支持者ではないが、意味のない制裁には反対だ」
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イランの核開発問題を巡り6月末以降、原油を狙いうちにした米国、欧州の経済制裁が相次ぎ発動。9月末には現地通貨が暴落し、安定を誇ったイラン経済が本格的に揺らぎ始めた。制裁下のイランで市民の姿を追った。【テヘラン鵜塚健、写真も】=つづく