揺らぐイラン:制裁下の市民は/1 広がる格差 働く子供急増、高級外車は販売好調
2012年11月11日
通行人でごった返すテヘラン中心部の「革命広場」。小学1年生のザフラーさん(13)は授業が終わると毎日ここへ「出勤」する。夕方まで売り歩くのは、14世紀のイランの大詩人ハーフェズの言葉を引用した人生占いだ。
「最近はさっぱり売れないの」。1枚5000リヤル(約15円)。昨年この仕事を始めたころは1日20枚以上売れたが、今は10枚程度にとどまる。
ザフラーさんはテヘラン南部に祖母(60)と暮らす。父は病死し、母は家を出たまま戻らない。昨年までは靴工場で1日12時間働いていた。借家の家賃は「家主にまけてもらっている」が、病弱な祖母の薬代が必要だ。しかし米欧諸国の制裁の影響で、医薬品が品薄になり価格が急騰。市民の財布のひもは固くなり、占いも売れなくなった。
祖母の許しで今年ようやく小学校に入れたという。「勉強すれば、看護師さんになれるかな」。急に目を輝かせ、ペルシャ文字の練習をしたノートを見せてくれた。だが「市役所の人に見つかると怒られる」と写真の撮影は拒んだ。ティッシュやガムを売り歩く10歳前後の子供は広場周辺だけでも10人以上見かけた。
イランのNGO「子供の権利保護協会」の推計では、働く子供は180万人。これまで大半はアフガン難民だったが、この1年間でイラン人の子供が急増したという。
相次ぐ米欧の経済制裁で食料や医薬品が値上がりし、市民生活を圧迫。バヒドダストジェルディ保健相は10月15日、「高騰した医療費が原因で貧困層が増えた」と認めた。「公平と平等」「貧者の救済」を理念とし、欧米の「格差社会」を批判するイスラム国家が、自国の格差を認めるのは異例だ。
半国営のイラン労働通信も10月21日、経済評論家の分析を紹介し「(必要最低限の生活以下の)絶対的貧困率が25〜32%に達し、格差拡大が進んでいる」と指摘した。