“巨額赤字”パナソニックの内弁慶ぶり…解決策は?

2012.11.11


巨額の赤字を発表したパナソニックの津賀一宏社長(右)【拡大】

 パナソニックは先月31日の中間決算発表で、2012年度(13年3月期)の業績見通しを7650億円の純損益の赤字に下方修正した。12年3月期も7721億円の赤字を出しており、2期連続の巨額赤字は異例だ。これを受け、米格付け会社「スタンダード・アンド・プアーズ」(S&P)はパナソニックの格付けを「Aマイナス」から2段階引き下げて「BBB」にした。株価も一時はストップ安まで急落、11月5日には400円を割り込んで、37年ぶりの安値となった。

 「パナソニック(Panasonic)」の文字から「ソニー(Soni)」を引くと「パナック(Panac)」になる。この文字をジッと見つめると…「パニック」。投資家がパニックになったのもわかる。解決策はあるのか?

 津賀一宏社長は決算発表の会見で、「デジタル領域では負け組と言わざるを得ない。普通の会社ではないと自覚することからスタートしたい」と語っていたが、当たり前だ。普通の会社はこんな巨額赤字は出さない。この社長会見を聞いた限り、今後どの分野に集中していくのか、ということは語られていない。

 たとえば、オランダに本社を置く電子機器メーカー「フィリップス」は、事業改革によって採算が不安定な半導体や家電部門を分離し、医療機器や照明機器に集中している。IBMも箱売り(ハードウエア)からソリューション(経営問題解決のための情報システム開発)へ転換した。

 アメリカのGEだって昔はテレビをやっていたのだ。だが、いまは儲かる白物以外の家電は整理してしまった。パナソニックも白物では利益を出している。しかしスウェーデンのエレクトロラックスや韓国のLG電子と世界で覇を競うという気概は見当たらない。あくまで内弁慶なのだ。

 個々の製品を作り出す事業部制に限界がきているパナソニックにも「1つか2つの“領域”で徹底して世界一になる」という方向を打ち出すことが必要なのではないか。私は、太陽光発電システムや蓄電池などのエネルギー機器で家電、住宅機器などをコントロールする「スマートハウス」がひとつの道だと思う。

 開業医に集中したメディカルシステムの分野もいいと思う。買収したサンヨーはかつて開業医用の業務システムで日本一だった。パナソニックの社内を見渡せば、ハウジングとメディカルについては、ほとんどの技術を持っているはずだ。バラバラにいろいろなところに分散したり、ほこりをかぶったりしているだろうが、これほどの大きさの会社だと、人をいくら削っても、どんどん元気がなくなるだけだ。

 一方、13年3月期の最終赤字が、前年の3760億円を上回って過去最大の4500億円に拡大すると発表したシャープも、「フィッチ・レーティングス」が格付けを「BBBマイナス」から「Bマイナス」に6段階引き下げた。

 こういう会社に、日本の銀行は9月末に3500億円も融資した。これまた由々しき状態だ。コマーシャル・ペーパー(短期で資金調達するための無担保の約束手形)が出せないほど財務が悪化している会社に融資するなんて、聞いたことがない。日本の銀行は、完全に政府の御用機関になってしまった。

 ルネサスの救済を決めた経産省もモラトリアム法の延命をもくろむ財務省も「助けて」と言われたら、ダメな企業でも延命させてしまう。あちこちに「生命維持装置」を配した日本を代表する(はずの)大企業の中間決算を聞いていると、ターミナルケアの段階に入った患者の病状を診ているような感覚に襲われてしまう。

 ■ビジネス・ブレークスルー(スカイパーフェクTV!757チャンネル)の番組「大前研一ライブ」より