【寄稿】前兆は直前、今から備え
(2012/11/12 09:00) この6月に静岡・山梨・神奈川3県の富士山火山防災対策協議会が発足した。富士山では最近3200年間に約100回の噴火が知られている。平均すると30年に1回程度の頻度で噴火していた火山なのだから、1707年の宝永噴火以降300年も休んでいる現状はむしろ異常で、いつ噴火を再開してもおかしくない時期に来ている。そのための備えである。
しかし、今、富士山に噴火の兆候があるわけではない。そもそも火山噴火の兆候が何年も前から現れることはほとんどない。大抵の火山では長くて数週間、多くは数時間から数日前になって噴火の兆候が現れる。中でも富士山をつくるような玄武岩マグマは粘り気が小さいこともあって、前兆が現れるのは直前のことが多い。
宝永噴火の1カ月ほど前から富士山の山中でのみ感じられる地震が発生したことが古文書の解析から知られているが、この地震が噴火の前兆だったのか、噴火の49日前に発生していた宝永大地震の余震だったのかは定かではない。明らかな前兆は噴火前日の群発地震であった。
従って、前兆現象が確認されてから噴火対策を始めては間に合わない。今から、火山噴火に備えて対策を検討しておく必要がある。噴火によって被害を被るのは、富士山を抱える静岡と山梨だけではない。火山灰の被害は神奈川や東京にまで及ぶ可能性がある。このために、神奈川県も加わっているのである。
いったん噴火が始まると、被害は複数の自治体にまたがる。噴火規模が少し大きくなると、自治体の枠を超えて避難が必要な場合も生じる。各自治体の防災担当者が普段から顔の見える関係をつくっていなければ、このような緊急の事態に対応できない。火山防災対策協議会が必要な理由の一つはここにある。
(火山噴火予知連絡会会長 藤井敏嗣)
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