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焦点 水産加工業復興支援、交付金事業 石巻の中小、大手進出警戒
 | 地盤沈下した土地のかさ上げが進み、再建する工場が増えてきた石巻市の水産加工団地 |
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東日本大震災で被災した水産加工業の復興を支援する国の交付金事業の動向に、石巻市の水産関係者が不安を訴えている。事業は従来の制度より補助率が高い一方、被災地以外の企業も対象とする。大手企業が事業を活用して進出すれば、再建途上にある地元の中小企業の脅威になりかねない。市は、復興のスピードアップを図る上で「産業全体を引っ張る有力な企業も必要」と強調する。
◎被災地外の企業も対象/「有力なけん引役必要」市は理解訴え
交付金事業は自治体が実施主体。それぞれの復興計画に基づき、加工や冷蔵の施設を整備する企業などに最大8分の7を補助する。応募要件には原料の水産物について、操業から5年以降は金額ベースで50%以上を地元など被災地で調達することが盛り込まれている。 石巻市の補助枠は総額140億円だが、既に公的支援を受けている事業計画は対象外。国のグループ化補助金が交付されている市内200社以上の水産関連業者の再建計画も応募できない。 市水産課は「既に全体の底上げは一定程度図られている。今回は衛生管理や鮮度保持など、震災前より高度な機能を持つ施設が対象になる」と説明する。 水産関係者が不安視するのは、被災地以外の企業も補助対象になる点だ。ある加工会社は「多くの地元企業は再建途上。大手が参入すれば、中小企業にしわ寄せが及ぶ可能性がある」と訴える。 石巻魚市場の水揚げは震災前の4割程度にとどまる。石巻魚市場買受人協同組合の布施三郎理事長は「水揚げの回復には時間がかかる。応募要件通りに原料の半分以上を被災地の魚に限定すると、体力のある大手に買い占められてしまう」と危惧する。 石巻市の交付金事業には、5日の締め切りまでに約40件の応募があった。半数以上は地元企業だが、被災地以外の企業も入っているという。市は選定委員会を設け、補助対象を決める。 水産加工会社などでつくる石巻水産復興会議は近く、企業の選定には地元の現状を十分踏まえるよう要望書を市に提出する考えだ。 市水産課は「国の方針は、周辺企業に波及効果をもたらす有力企業を想定する。震災前を上回る水産業の振興を目指す施策ということを理解してほしい」と話す。
2012年11月09日金曜日
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