検証・大震災:福島の放射能除染 持って行ってもらえない 「ブルーシート」住民不安
毎日新聞 2012年10月24日 東京朝刊
東京電力福島第1原発事故から1年7カ月以上たっても除染が進まない。現地で何が起きているのか。この間、国はどう動いたのか。
◇「ブルーシート」住民不安
福島市中心部から約1・5キロの渡利地区は県庁から阿武隈川を渡ってすぐのところにある。除去土を家の敷地に保管する青いシートが目立つ一帯を歩くうち、こんな話を耳にした。「シートを塀で囲ったところがある」
現場は交通量の多い国道114号沿い。道の両側に、除去土を青いシートで覆った大小二つの山がある。それぞれ高さ1・5〜2メートルほどの金属製の塀で囲われていた。片方の山の持ち主、菅野イチさん(82)は5月、自家菜園をつぶして保管場所にした。庭には目障りなので置きたくなかった。業者からは埋めるよう勧められたが断った。「一度埋めると、もう持って行ってもらえないのではと思った。目に見える所に置いた方がいい」
塀を設置したのは市だった。往来の激しい場所で、いたずらを防ぐためだと説明する。一方で、ある市職員はこんな言葉を口にした。「ブルーシート病」。市内では、青いシートを見ると除去土を思い浮かべ「近づくと汚染される」と敏感になっている人が少なくないという。