<日記>
<11・11>
・80年代のコロコロコミックについて語ってみる。
今回の更新記事で、80年代にはコロコロやジャンプにはまったと書きましたが、特にコロコロは毎月欠かさず買うほどはまっていましたので、それについて少し書いてみたいと思います。今となっては小学生向けの総合ホビー雑誌となっているコロコロですが、初期の頃は確かに小学生向けではあったものの、今よりもずっとオリジナルのマンガが多く、しかも質の高い面白いマンガが多かったと思います。当時はジャンプに対しても対抗意識を燃やしていたほどで、読者コーナーで「ジャンプよりもコロコロの方が面白い」という熱心な投稿もよく見られました。
77年の創刊当初は、あの「ドラえもん」を最大の看板としていて、創刊号にはドラえもんが200ページ載るほどでしたが、しかしそれと同時にオリジナルの面白い連載を多数抱えていました。そんな中で、80年代前半の代表的な作品をひとつ挙げるとすれば、何と言っても「ゲームセンターあらし」でしょうか。特に初期のころは、実際のゲームの紹介や攻略法、ゲームセンターの問題点にまで触れるリアルな要素もよく盛り込まれ、当時のゲームセンターの姿をよく捉えた興味深い作品になっていました。わたしが、コロコロを買うきっかけとなった作品で、このマンガを読みたいがためにコロコロを買い始めました。
少し時代が下って80年代後半になると、この頃からファミコンブームを契機に一気にホビー誌としての側面が強くなり、ホビーを扱うマンガが増えてしまうのですが、しかしその中でも良質のオリジナルマンガが残っていました。とりわけ、「あまいぞ男吾!」と「がんばれ!キッカーズ」は、今に語られる名作と言えるでしょう。「男吾」は、少年男吾の活躍を描く痛快少年マンガ、「がんばれ!キッカーズ」は、アニメ化にもなったサッカーマンガです。どちらも、特に「男吾」を名作としていまだに評価している人は多いのではないでしょうか。
これ以外にも、80年代のコロコロは、本当に面白いマンガが多かった。「魔球」が多数登場する異色の野球マンガ「あばれ隼」、前代未聞の受験バトルマンガ「とどろけ!一番」、ラジコンでのレース対決を描くホビーマンガ「ラジコンボーイ」、痛快釣り対決マンガ「釣りバカ大将」、下ネタ全開の爆笑ギャグマンガ「超人キンタマン」、同じくナンセンスギャグで人気を二分した「ひまで署おまわりくん」、ファミコンブームで登場したファミコンマンガの中で最大の話題作だった「ファミコンロッキー」、この雑誌に載っているとは思えないほどハードボイルドだった刑事もの「ゴリラ」など、今でも覚えているマンガは本当に多い。一時期は毎月心待ちにするほど強くはまっていました。
それともうひとつ、コロコロといえば「大長編ドラえもん」。毎年3月に封切られる映画の原作マンガが、8月くらいから半年くらいかけて連載されるのですが、これがこの雑誌を読む最大の楽しみのひとつでした。「のび太の恐竜」や「のび太の鉄人兵団」などの名作は、マンガで読む方が味わいがあると思います。しかし、先ほども述べたとおり、80年代後半以降、ホビー誌としての様相が次第に強くなり、連載も小学生向けホビーとタイアップしたマンガが多数を占めるようになり、今のようなコロコロとなるにつれて、あまり面白いとは感じなくなってしまいました。ホビーマンガに面白いものが少なかったのが、その最大の理由です。それでも80年代いっぱいは買い続けましたが、90年代になってついにあのガンガンが創刊され、そちらの方に興味が移ってしまい、ついにコロコロを買うのをやめてしまいました。それ以降は一切読んでいません。
というわけで、わたしにとってのコロコロは80年代がすべてなのですが、実際にあの当時のコロコロは、本気でマンガの面白さを追求していたと思うのです。決して小学生向けの雑誌にとどまらない魅力がありました。今はもう知っている人も少なくなりましたが、これから先も覚えている限り語り継いでいこうと思っています。
<11・7>
・「ドラゴンクエスト エデンの戦士たち」(藤原カムイ)はどうなったのか?
つい先日、3DSで「ドラゴンクエスト7」のリメイクが発表され、それで一気に話題が盛り上がりました。このゲーム自体にもいろいろと個人的な思い入れがありますが、しかしこのサイトはスクエニのコミックを扱うところ。ここはそのドラクエ7のコミカライズで、かつて少年ガンガンで長期連載されていた「ドラゴンクエスト エデンの戦士たち」を取り上げるべきでしょう。このマンガ、ドラクエ7を原作としたコミック化作品として、ガンガンで2001年2月号から始まりました。その直前に、こちらはドラクエ6のコミカライズである「ドラゴンクエスト 幻の大地」(神崎まさおみ)が終了したばかりで、その後を受けて始まったドラクエコミックとしての側面があります。そして、コミカライズ担当に、あの「ロトの紋章」の藤原カムイを再び起用。当時のガンガンは、初期ガンガンのような少年マンガ路線に回帰しようという傾向があり(これがのちにお家騒動へとつながっていく)、藤原カムイの起用もその路線に沿ったものだとも思われました。また、「幻の大地」が思ったほど人気が得られなかったこともあり、かつての大ヒットコミック「ロトの紋章」の人気を再び期待したという側面もあったと思います。
しかし、実際に始まったコミックは、なんというか、一言で言えば「地味」な展開に終始しました。少年の成長を丹念に描くそのスタイルは、序盤の頃は粗末な武器と防具で泥まみれになって戦うような描写もあり、初期の頃からどんどん成長し強敵と次々と戦う展開だった「ロトの紋章」に比べると、分かりやすい娯楽性で劣ったところはあったと思います。カムイさんの仕事ぶりは実直そのもので、原作のエピソードひとつひとつを丹念に再現する姿勢には大いに感心するところはありました。しかし、その一方で、元々長い原作をじっくりと描いていったため、遅々としてストーリーは進まず、連載数年が経ってもまだ原作の半分も進んでいないという状態で、「本当に終わるのか?」という懸念は常にあったと思います。
加えて、原作の話を忠実に再現する一方で、カムイさん独自のオリジナル要素、オリジナルのキャラクターやエピソード、とりわけ自身の前作であった「ロトの紋章」から設定を引っ張ってきたと思われる展開も差し挟まれるようになり、こちらは賛否両論でした。これは、一部読者とのあいだで随分と軋轢があったようで、これもいまひとつ連載が奮わない一因であったように思えます。
結果として、最後までかつての「ロトの紋章」のような大きな人気を得られることはなく、ついには2006年に休載となってしまいます。休載後もしばらくは再開の心積もりはあったようですが、しかし結局実現することはありませんでした。実質的な打ち切りと見てよいでしょう。打ち切り自体は作者の決定だったようですが、しかし原作の発売からはるかに時が過ぎ、いまさら再開してもこれ以上盛り上げることは難しいという雑誌側の思惑もあったと見ています。思ったほど人気も奮わず、積極的に再開したいマンガだとは思わなかったことは確かでしょう。
先日、「ドラゴンクエストモンスターズ」がリメイク発売された時は、吉崎観音の「ドラゴンクエストモンスターズ+」の新装版が発売され、久々に読み切りがガンガンJOKERで掲載されるという盛り上がりを見せました。しかし、この「ドラゴンクエスト エデンの戦士たち」は、かつての連載が奮わず最終的に休載・打ち切りとなった経緯から、今回の原作リメイクでもそのような展開を期待するのは難しそうです。個人的には、せめて今一度短くていいから新作読み切りだけでも描いてほしいと思うのですが、どうでしょうか。
<11・4>
・【報告】冬コミ当選しました!
今回は単なる報告ですが・・・、先日冬コミのサークルの当落発表が行われ、申し込んでいたわたしも期待半分、不安半分でおそるおそる当落メールを確認したのですが、無事当選していました! 前回の夏コミで見事に落選したときは相当に落ち込み、今回もまた落ちるのではないかと本気で不安になっていただけに、これには本当に安堵しました。また落選するだろうと本気で思っていただけに。今回は、初めて3日目の評論・情報ジャンルで申し込んでみました。今まで参加していたFCガンガンが今回1日目で、仕事との兼ね合いで日程的に参加が厳しいのと、一度は評論で申し込んでみたいと思っていたのがその理由です。FCガンガンでは周囲に知り合いのサークルはほとんどいませんでしたが、評論では知り合いのサークルがいくつも見受けられるので、そちらを訪問するのが今から楽しみです。
肝心のスペース配置ですが、 3日目東ハ-33b となっているようです。
新刊は、夏に落選して出せなかった、スクエニ原作のアニメ全作品のレビュー本となります。ただ、全作品とはいえ、執筆したのが春あたりなので、その直前、具体的には咲阿知賀編や男子高校生の日常あたりまでで、残念ながらそれ以後のスクエニアニメの記述は抜けています。このあたりは、ペーパーでも作ってそちらで補完してもいいかなと考えています。もし興味のある方がいたら手にとってくだされば幸いです。
今回、3日目の参加ということで、自身は東館の配置なのですが、西館の方で本を買う方の最大の目当てである創作(少年)とボーカロイドが配置されているということで、いつもどおり最初のうちは売り子さんに任せて買いに走っていると思いますが(笑)、よろしければ訪ねてきてください。評論スペースには、わたしよりもずっと興味深いサークルは数多くありますし、そちらの方もあちこち巡回すれば楽しいと思いますよ。
たかひろ的研究館(コミケウェブカタログ)
たかひろ的研究館(twitcmap)↑今回からコミックマーケット公式で「ウェブカタログ」というサークル情報とマップ配置が見られるオンラインカタログが使えるようになりました。今まではTINAMIのサービスでマップ配置を登録するシステム(twitcmap)がありましたが、こちらは登録しなくても全サークルの配置が分かるということで、非常に便利です。
<10・31>
・ジョジョのアニメが面白すぎた!
10月上旬頃少し忙しくて、秋の新番組アニメをチェックするのが遅れてしまったのですが、中旬以降ようやく少しずつ見始めました。中でも予想よりもずっと面白かったのが、あの「ジョジョの奇妙な冒険」のテレビアニメです。わたしも、かつて週刊少年ジャンプで連載中だったころ、毎週追いかけてはまっていた読者だったので、今回のアニメは期待半分・不安半分で待っていました。しかし、蓋を開けてみると、これが本当に面白いアニメになっていたようです。まさかここまで原作の持ち味を再現してくるとは・・・と思わず感嘆してしまいました。原作の第1部の最初から始まったこのアニメですが、その序盤の名シーンをひとつひとつ実にうまく再現しています。最初からあの有名なセリフたちも次々に登場し、それがアニメでこうしてもう一度楽しめるのは、本当に嬉しいものがありました。「何をするだァー!」「そこに痺れる!あこがれるゥ!」「酒!飲まずにはいられないッ!」「俺は人間をやめるぞジョジョー!」などなど、聞くたびに思わず笑ってしまういかにもジョジョらしい名言のオンパレード。声優陣の熱演、特にディオ役の子安武人さんの声が最高によくて、これがセリフの面白さを高めています。
アニメを制作しているのは、david productionといって、元ゴンゾのプロデューサーや社長たちが独立して立ち上げた会社のようです。直近の作品としては、あの「妖狐×僕SS」を制作していて、今回の監督もその時と同じ津田尚克のようです。いぬぼくとジョジョでは、同じマンガ原作でもまるで雰囲気の違う作品ですが(笑)、しかしどちらも非常に丁寧に作っていて好感が持てます。このジョジョでも、ひとつひとつの力のこもった作画・演出に、原作への愛・思い入れが感じられるばかりで、それは本編のみならず、オープニングとエンディングにも表われています。このスタイリッシュなOPとEDは、今季のアニメの中でも最も見ごたえがあると思いますね。
先ほども書いたとおり、わたしは、かつてジョジョはリアルタイムでジャンプの連載を読んでいました。およそ第1部から第3部まではほぼ全部読んでいて、第4部の途中でジャンプから離れてしまったのですが、それまでずっとこのマンガにはずっとはまっていました。特に今アニメで放映している第1部は本当に好きでした。連載をずっと長く最後まで追いかけていたと思い込んでいましたが、しかし今確認してみると、第1部はコミックスで5巻程度の比較的短い話だったようです。雑誌の連載期間で言えば1年に満たない。しかし、雑誌を追いかけていた最中は、あまりの面白さにそんなことはまったく気づきませんでした。それくらい夢中になって読んでいたわけです(あと、あの頃はまだコミックスを買うという習慣もありませんでした)。
今回のアニメも、ストーリーはかなりのハイペースで進んでいるようで、そんなに長いアニメにはならないようです。とりあえず第1部は1クール以内で終わりだと思いますが、噂によると第2部のアニメ化は決まっていて、評判が良ければ第3部以降のアニメ化の可能性もあるようです。それを目指してこれからも全力で応援していきますよ。
TVアニメ『ジョジョの奇妙な冒険』公式サイト
JOJO.com(ジョジョ・荒木飛呂彦 公式サイト)
<10・28>
・幸宮チノ先生は何を言っているのか(笑)。
「つまり浅野りん先生の個人サークル名がチチクリマウンテンであり、中出しお父さんっていうサークル名で個人活動するのが堀口レオ先生ということだそうです。世紀末ですね>RT」
「おいおい、はるか昔にギャグ王とかいうよいこの漫画雑誌で汚れの無いよいこ漫画描いてた女が中出し中出して 世紀末ですね」これは、かつてドラクエ4コマで活躍し、ギャグ王でも「ちぱパニック」というよい子のマンガを連載し、のちに「ドラゴンクエスト天空物語」の連載を何誌にもかけて行ったあの幸宮チノ大先生のTwitterでの書き込みなのですが、なんともカオスとしか言いようがないですね(笑)。
ここでいう「チチクリ・・・」とか「中出し・・・」というのは、診断メーカーというTwitterでのお遊び診断で出た結果で、本当にそういうサークル名で活動しているとか、決してそんな話ではないのですが、ただ唯一、この書き込みの中で「ギャグ王とかいうよいこの漫画雑誌」という言葉がえらくひっかかりました。ギャグ王という雑誌は、創刊当時から他のエニックスの雑誌よりも低年齢向けの読者、それも主に小学生中心だと思われる読者層を想定していました。当時は、少年ガンガンも今よりも低年齢向けに思われていた節がありますが、それよりもずっと低年齢向けの雑誌として創刊され、確かにそういった連載もかなり多く見られました。
しかし、実際に始まったギャグ王は、シュールすぎる作風で人気を博した4コマ「うめぼしの謎」や、夜麻みゆき三部作のひとつ「幻想大陸」、ハチャメチャなギャグで一世を風靡した「勇者カタストロフ!」、本格的な推理ものとして高年齢の読者にも評価された「少年探偵彼方 僕らの推理ノート」など、高年齢のマニアックな読者に好評だった作品を多数抱える、当初とは異なるニュアンスの雑誌となったのです。はっきり言えば、末期のギャグ王で人気を得た「がんばれスイートシュガーちゃん」のように、明らかに萌え・・・もといオタ・・・に受けるようなマンガが、あっさりと受け入れられるような雑誌になったわけです(笑)。
しかし、そんな当初とは異なる雑誌となったギャグ王ですが、それでもその誌面はとても充実していて、これはと思う面白いマンガが多数載っていました。そんな雑誌を愛する読者も多く、1994年の創刊から1999年の休刊まで、最後までずっと購読を続けた読者も本当に多かったのです。
ただ、それでも後半のギャグ王は、本来のコンセプトを取り戻そうとしたのか、強引に低年齢向けの連載を増やし、本当に低年齢向けの雑誌へとシフトしました。しかし、これが大失敗となり、今までの読者の多くが離れ、しかも雑誌が求めた小学生層の読者にもまったく受けず、大不振に陥ってしまいました。そして、これが最大の原因で、最終的に雑誌休刊へとつながってしまいます。もしこの路線変更がなければ、この雑誌はもっとずっと長く続いていたでしょう。このような、強引な雑誌路線の転向で招いた失敗は、のちの「エニックスお家騒動」でも再び見られることになり、今度こそ致命的なものとなるのです。
<10・24>
・星屑七号さんの新刊が3冊同時発売!
この25日、スクエニではビッグガンガンで連載を続けている星屑七号さんのコミックス新刊が、2冊同時に発売されます。どちらもコミックス1巻で、先日より続けてきた連載の初コミックスが2冊ともついに発売されることになります。また、これに加えて、挿絵と原作を担当しているライトノベルもこの日の発売となっていて、これも加えると3冊の新刊が同時発売されるようです。ビッグガンガンでの連載は、「回転(まわ)る賢者のシュライブヴァーレ」。文具に宿る精霊と契約を交わした少女が、敵対する精霊とその契約者たちと戦う、バトルファンタジーと言える作品でしょうか。新連載開始以降、ビッグガンガンでもかなり推されているマンガのようです。そして、これと同時に集英社のスーパーダッシュ&ゴー!で連載されているのが、「1月のプリュヴィオーズ」。こちらは、いじめに遭って不登校となった少女が、『1月のプリュヴィオーズ』と名乗る少女と出会ったことで、石の所有者同士の戦いに巻き込まれるというストーリー。公式サイトの説明文だと、「それぞれの『正義』を胸に、『12の月の石』の所持者たちがぶつかり合う、鮮血のサバイバルバトル」となっていて、こちらも少女同士のバトルがメインとなっているあたり、シュライブヴァーレと共通した作風を感じますね。
作者の星屑七号さんは、商業デビュー以前から同人で「食人女子高生探偵」というオリジナル創作のシリーズものを出していました。そちらもかなりの力作となっていたので、その時からずっと注目していました。そして期待通り、商業でもまったく変わらない活躍ぶりを見せてくれています。
彼の作品の特徴は、まず少女たちの戦いを正面から描く力強いストーリー。まっすぐに正しい行動を貫こうとする主人公たちの姿に惹かれます。そして、画面の隅々までよく描き込まれた、見ごたえのある作画。太めの力強い描線もあいまって、画面の密度が濃い印象を受けます。効果線がふんだんに使われたアクションシーンも迫力がありますし、人の目をはっと引き付ける印象的な絵になっていると思います。
そして、上記の2作品に加えて、挿絵と原作を担当しているライトノベル「3月のジェルミナル」(著者:ついへいじりう 原作・イラスト/星屑七号 )も、やはり同日の25日に発売されます。これは、「1月のプリュヴィオーズ」の前日譚にあたる作品のようです。マンガと合わせてこちらもチェックしたいところです。
それにしても、新人作家にして一度に3冊の新刊が発売されるとはすごい。興味のある方はどれか1冊でも手に取ってみてくださいませ。
おるれあんず(星屑七号)
回転(まわ)る賢者のシュライブヴァーレ(月刊ビッグガンガン)
1月のプリュヴィオーズ(スーパーダッシュ&ゴー!)
3月のジェルミナル(スーパーダッシュ文庫)
<10・21>
・「魔女の心臓」の出張読み切りがガンガンに掲載。コミックス1巻も22日に発売。
ガンガンONLINEで先日より好評連載中「魔女の心臓」の外伝読み切りが、今月発売の少年ガンガン11月号に掲載されています。出張読み切りとはいえ、よくあるようなちょっとした短編ではなく、30ページ以上の本格的な一編となっていて、これには大いに好感が持てました。直前のページには作品解説のページも設けられていて、初めて読む人にもわかりやすい配慮がなされています。この「魔女の心臓」、心臓を失って生と死の境を生きる存在となり、自らの死を求めて旅を続ける魔女の物語となっています。今では貴重な純ファンタジーで、悲しく切ない設定でありながら、魔女が出会う人々とのエピソードは、暖かみのある話が多くて、心地よい読後感の一作となっています。このガンガンの読み切りも、父と母をなくしてけなげに生きる双子姉妹を魔女が助ける話になっていて、思わずじんときてしまいました。
さらには、中性的で繊細な絵柄とファンタジーな世界観が、かつてのエニックスのマンガ、特にWINGやGファンタジーに掲載されていたマンガを彷彿とさせるものとなっていて、これにも感激してしまいました。今までもこのようなマンガに触れるたびに、幾度も紹介してきましたが、今回のそれが最も強く感じたかもしれません。まさにエニックス的な、中性的で、ある種少女マンガ的な、純ファンタジー作品。今ではコミティアなど創作の同人で見られるファンタジー作品、その中でも特に良質なものだと思いますし、これがガンガンONLINEで読めることを大変嬉しく感じました。
作者のmatobaさんの前作「ほしのこ!」も、少女マンガ的な雰囲気の楽しいコメディでしたが、個人的には今回の「魔女の心臓」の方をずっと気に入ってしまいました。これは本当にいい。そして、今月の22日に待望のコミックス1巻が発売されます。めでたく店舗特典も付くようですし、これは久しぶりに複数買いに走るかもしれません(笑)。皆さんも是非チェックしてみてください。ガンガンONLINEでは第一話と 最新話を無料で読むことが出来ます。
魔女の心臓(ガンガンONLINE)
matobaco(matobaさんブログ)
matoba10/22魔女の心臓@発売 (matoba_biscuit) on Twitter
<10・17>
・ついにヤングガンガンの「FRONT MISSION DOG LIFE & DOG STYLE」が終了。
先日発売されたヤングガンガンのNo.20において、ついにあの「FRONT MISSION DOG LIFE & DOG STYLE」が終了してしまいました。気がつけば2007年から5年にわたる長期連載となっていたこの作品。オムニバス形式で間に休憩を挟みつつも、最後までクオリティを落とすことなく描き切ったことは驚嘆に値します。むしろ、後半になるにつれてどんどん話が面白くなっていき、最後の「羊飼いの帰還」編は、最高に面白い一大長編となっていました。しかし、この話が終わったところでの連載自体の終了が、少し前にすでに作者から告知されていました。これからももっと面白い話を見せてくれると期待していただけに、これは本当に悲しいものがありました。このマンガについては、これまでサイトで何度も取り上げてきました。「FRONT MISSION」のタイトルどおり、一応はスクエニのシミュレーションゲーム「フロントミッション」のコミカライズなのですが、実際の内容はオリジナルの戦争ものの要素が強く、むしろ原作者である太田垣康男の卓越したストーリー構成と確固たる思想が、強く感じられる作品でした。戦争の様々な側面を描いた、全部で7つのエピソードのひとつひとつが、珠玉の一編となっていました。最終回では、カメラマン・犬塚の撮影した写真という形で、そのすべてのエピソードの名場面がフラッシュバックされるシーンがあり、映し出される名シーンの数々に思わず感涙してしまいました。
そして、その犬塚という、重度の戦争マニアで、これまで各編で暗躍してきた不気味な男が、最後の最後で主役に躍り出る展開にもぐっと来るものがありました。「最近、犬塚のような奴が増えた」という公安のセリフが、ネットという道具を得て情報をもてあそぶ国民の姿とオーバーラップして描かれ、なるほどこれは本当によく今の日本の姿を捉えていると思いました。
最後の最後で、その犬塚の姿が消えると同時に日本で戦争が勃発、「開戦なう」という犬塚のツイート(Twitterの書き込み)で物語は終わります。これもまた、予見される近未来の日本の姿を見ているようで、思わず苦笑いしてしまいました。今の日本なら、すぐ近い未来で本当に戦争が起こってもおかしくない。最後の最後まで、今とこれからの日本社会の縮図を写したかのような、極めてリアルな物語で終わったと思います。コミックス最終10巻は今月30日、他の太田垣作品のコミックス新刊と同時発売となっています。
<10・14>
・山中教授のノーベル賞受賞で「EIGHTH」に注目!
数日前、山中教授のノーベル賞受賞のニュースで大いに盛り上がりましたが、スクエニでもそれに関していくつか思い当たる作品がありますね。真っ先に話題になったのが、「咲-Saki-」のヒロイン・原村和の発言で、「iPS細胞で同性でも子供が出来る」という、コミックス5巻に収録された番外編での言葉です。これをネタにして、一部で大いに盛り上がったようですが(笑)、しかしスクエニのマンガでiPS細胞といえば、それはもうガンガンJOKER連載の河内和泉さんの連載「EIGHTH」以外にはないでしょう。こちらは、キャラクターのちょっとした発言などではなく、遺伝子工学や生命科学がそもそも作品のテーマで、しかも山中教授の研究対象であるiPS細胞やES細胞が中心となって登場する、まさに今回のニュースと完全に重なる作品となっているのです。これほどタイムリーな作品は他にないでしょう。
肝心のストーリーですが、エイス研究所というバイオ産業大手の研究所に勤めるガード(護衛)の青年・ナオヤが、ローマの研究所に監禁されていたセルシアという少女を救出し、護衛として彼女を守るというもの。セルシアは、「生物の代謝を促進させる(=異常な速さで成長させる)」という特殊な能力を持ち、その能力に目をつけられ、バイオ産業の諸勢力から狙われていたのです。このような能力が現実にあれば、飛躍的な速度で実験を進めることが出来るでしょう。
このセルシアの能力こそファンタジーですが、しかしそれ以外に作中で見られる遺伝子工学や生命科学の知識は、そのほとんどが事実に基づいていて、決して非現実的な話ではありません。むしろ、学問的に見ても非常に興味深い話となっているのです。河内さんは、かつてガンガンWINGで連載されていた前作「機工魔術士-enchanter-」でも、理系的な知識がふんだんに見られましたが、今回の「EIGHTH」は、より本格的に現実にある研究を扱う話になっていて、しかもその内容は本当に高度なものになっていると思います。
また、実在の人物が登場するのも面白い。直接的にその姿が登場するわけではないですが、その功績が語られるシーンは何度も見られる。作品では、バチカンの教皇庁も舞台のひとつとなっているのですが、そこで「バチカンに行った先生」というセリフがあって、河内さんによるとその先生とは、他でもない山中教授のことであるようです。まさに今回のニュースと関連が深すぎる作品になっていますね。全体的にシリアスで非常に読み応えのある作品になっていますし、これをいい機会に興味のある方は手にとってみてはどうでしょうか。コミックス最新9巻はもうじき今月の22日発売です。
河内和泉@エイス9巻10月22日発売予定 (k_izumi99) on Twitter
<10・10>
・オリジナルアニメ「K」の紹介文に注目。
そろそろ秋の新番組アニメの時期になりまして、今季もライトノベルを中心に原作付きのアニメが多く出てくる中で、数少ないオリジナル作品として「K」というタイトルがあります。特徴的なタイトルなのでちょっと心に留めていたのですが、その後入った情報によれば、これはどうやら7人のライトノベル作家が作品の企画を出し、それが幸運にも通ってアニメをはじめとするメディアミックス作品としてスタートしたようなのです。その7人とは、有沢まみず・古橋秀之・あざの耕平・壁井ユカコ・来楽零・鈴木鈴・高橋弥七郎。主に電撃文庫で一昔前に活躍した作家が中心、といったところでしょうか。最近はあまり新刊を出していない作家が多いようで、ここでもう一花咲かせようと考えたのかもしれません。
肝心の作品の内容ですが、どうも現実とは異なる世界の日本を舞台に、7人の”王”と少年たちが異能者バトルを繰り広げる作品のようで、これだけならさほど珍しい設定では無いようにも思えました。しかし、公式サイトの作品紹介ページに、ちょっと気になる一文があって、それにはちょっと興味を惹かれました。
「90年代のセカイ系、00年代の日常系に続く新たな『10年代テーマ』が、様々なメディアによって描かれる──。」
まず、そもそも「90年代のセカイ系、00年代の日常系」という歴史認識がどうなのか、果たして正しいのか。それがまずひっかかりました。90年代と言えば、わたしにとってはエニックスマンガの全盛時代なのですが、当時のガンガン系マンガが、セカイ系なるものを目指していたかというと、そんなことは全然ないわけです。「エヴァ」のような大ヒット作品のみを取り上げてみれば、確かにそれだけはセカイ系と言えるかもしれないけど、逆に言えば、そういう一部の作品のみを取り上げて「当時の時代」の代表として当てはめているだけなのではないか? そんな風に感じてしまいました。
00年代の日常系に関しても、この時代のスクエニの代表作は、なんといっても「鋼の錬金術師」ですし、そのハガレンが日常系なんてことはまったくないわけです。「まほらば」のように一部の日常系と言えそうなマンガもあるけど、全体を通してみれば、やはり日常系には該当しそうにない作品の方が多い。そして、これはスクエニ以外の出版社のマンガにも、ほとんど同じことが言えるでしょう。日常萌え作品をひとつの柱にしている、芳文社きらら系の作品などは、例外的にこれに該当するかもしれませんが、逆に言えば、ここの「けいおん!」あたりのヒット作のみを取り出して、日常系の時代だと強引に定義している可能性が高いと思いました。
そんなわけで、このアニメの「90年代のセカイ系、00年代の日常系に続く新たな『10年代テーマ』」という紹介文には、正直かなりの引っかかりを覚えてしまいました。しかし、それでももしこの作品のスタッフが、新たな『10年代テーマ』なるものを本気で描いてくれるなら、それは是非とも見てみたいと思いますね。一見してよくある現代バトルものにも見えますが、これが打ち出すセカイ系とも日常系とも異なる新しい作品性とは、一体なんなのでしょうか?
<10・7>
・「魔法陣グルグル2」が連載開始!
先日の木曜日、驚くべきニュースが飛び込んできました。あの「魔法陣グルグル」の続編「魔法陣グルグル2」が、開始されるというのです。これまで連載していたグルグルのスピンオフマンガ「舞勇伝キタキタ」は、10月4日更新分をもって最終回を迎え、そのページの最後で「魔法陣グルグル2」の連載開始が告知されました(同時にスクエニのマガジン・ブック公式サイトでも情報が公開されました)。同じガンガンONLINEでの連載で、11月1日から始まるようです。これまでも、初期ガンガンの人気作の続編が、2000年代に入ってたびたび連載されてきました。「ロトの紋章」「ハーメルンのバイオリン弾き」「南国少年パプワくん」と、いずれもかつては絶大な人気を誇った作品の続編です。しかし、この「魔法陣グルグル」の人気は、それ以上のものがあったと思いますし、まさに当時の看板マンガだっただけにその衝撃は大きい。ネット上を見渡しても、その反響は非常に大きなものがありました。
わたしとしても、この「魔法陣グルグル」の続編は、あまりに意外なものがありました。理由はいくつかありますが、まず何といっても時期があまりにも遅かったこと。今は2012年ですから、かつてのグルグルの終了(2003年)からもう9年、連載開始(1992年)からだともう20年にもなります。さすがに今になって続編は夢にも思いませんでした。
第二の理由は、作者の衛藤さんが、一時期スクエニから姿を消していたこと。2003年のグルグル終了後、しばらくはお家騒動ののれんわけ先であるマッグガーデンで活動していました。その後、ガンガンに「衛星ウサギテレビ」の連載で復帰し、さらにガンガンONLINEでのグルグルスピンオフ「舞勇伝キタキタ」につながるわけですが、こんな風に一度はお家騒動の影響でスクエニを離れた作家の名作が、こうして今になって続編で復活とは、実に感慨深いものがありますね。さらにもうひとつの理由として、前作のグルグル自体が、連載後期にかなり勢いが落ちていたこともあります。初期・中期は絶大な人気を誇ったグルグルですが、ガンガンが月2回刊から月刊に戻った1998年あたりから、掲載ページ数が極端に少なくなってペースが落ち、当時行われた再アニメ化も思ったほどぱっとせず、連載の最後の頃はさほど盛り上がっていなかったと思います。その点で、連載の最後まで盛り上がった「ロトの紋章」や「ハーメルンのバイオリン弾き」に比べれば、続編が作られる可能性は低いのではないかと思っていました。しかし、スピンオフである「キタキタ」の連載が始まった時点で、もう続編への見通しはあったのかもしれません。
その「キタキタ」がかつてに近い安定した面白さを維持していたところを見ても、今回の続編が大きく外れることはなさそうです。しかし、連載初期の頃のような爆発的な面白さが再び見られるかというと、それは難しいかなとも感じています。そのあたりでちょっと複雑な気分でもあるのですが、しかしそれでもあのグルグルがもう一度読めるのはうれしい。11月の連載開始を楽しみに待ちたいと思っています。
ニケとククリの冒険再び!「魔法陣グルグル2」の連載が決定(コミックナタリー)
舞勇伝キタキタ(ガンガンONLINE)
<10・3>
・ヤングガンガンのお笑い作品2本。
最近、ヤングガンガンでお笑いをテーマにした新連載が続けて2本始まり、もしかして編集部はお笑いのマンガに力を入れ始めたのかな?という気がします。どちらも中々興味深い内容になっていて、個人的にはかなり期待しています。先に始まったのが「キッド・アイ・ラック!」という連載で、作画をあの長田悠幸が担当。かつてガンガンで「RUN day BURST」という、カーレースをテーマにした少年マンガを連載していました。しかし、あまり人気は出なかったようで、最後にはガンガンONLINEへと移籍となってそこで終了しています。彼のマンガは、一昔前の熱血少年マンガを彷彿とさせるところがあり、そのあたりで今の読者の好みには合わなかったのかなと思えるのですが、しかしその中身は骨太で本当に読ませるストーリーとなっていました。今回の「キッド・アイ・ラック!」も、不良風だが熱血で人のいい少年が、幼馴染の少女を助けるためにお笑いの道に真剣に取り組んでいくという、やはりこの作者らしい少年マンガになっていて好感が持てました。
作中で扱うお笑いに「大喜利」を採用したのも、目の付け所がよいと思います。何らかのお題に対して即興でギャグを考えて人を笑わせるという、シンプルにして今では誰もが楽しんでいるお笑いの道を、どんどん追求していってほしい。作中で見られるネタもかなり考えられているようで、なるほどこのお題にこういうネタで返すかと感心することもしばしば。これは原作担当の町田一八の力もあるのではないかと思っています。
もうひとつ、遅れて始まったのが、「少女芸人ごるもあ」という作品。こちらは、異様なノリの同人作品で知られていた青稀シンさんの商業誌初連載。同人誌で見せた作風そのままに、こちらはシュールな雰囲気のギャグマンガになっています。売れない少女芸人トリオのおかしな日常をシュールに描く作風で、お笑いそのものよりお笑い芸人の姿を描くマンガとなっていますが、これはこれで面白いものがあると思います。
このところ、なんらかのお笑いをテーマにした先行作品として、「べしゃりぐらし」や「じょしらく」といった作品がかなりの人気を集めているようですし、スクエニのヤングガンガンも、このジャンルに本格的に力を入れ始めたのかもしれません。スクエニからもここからヒット作品が出ることを期待したいですね。
<9・30>
・マンガサロンという試みはどうか。
先日、知人とTwitterでちょっとした会話となり、「漫画空間」のようなものが出来ないかどうかという話になりました。話していて、これは、わたしが昔から考えていた「マンガサロン」に近いものがあるなと思いました。これは、マンガを読みながらのんびり会話や軽食を楽しめるといった空間で、いわゆる「マンガ喫茶」とは大きく異なるものです。今のマンガ喫茶は、確かに軽食やインターネットなどのサービスも楽しめますし、ネットカフェにも近いものがあると思いますが、「マンガサロン」とは、そういった場所ではなく、もっとゆったりと長時間の間、広めの空間(部屋)で気の合う仲間や友人と楽しめるところを想定しています。
この場合、そこに置いてあるマンガだけでなく、家からマンガを持ち寄ってもよく、気の合ったマンガ好きの人とゆっくりとマンガ談義を楽しめるような空間にしたい。あるいはマンガの読み手だけでなく、「描き手」の側の人も、そこに来てマンガや絵を描く作業が出来る空間というのも面白いと考えています。今は、マンガをPCで描く人も多いと思いますし、マンガを描くためのPCを常時配置していても面白いかと思います。とにかく、マンガを愛する読み手も描き手も、その双方が集ってさまざまなアプローチでマンガを楽しめる場所。そういったところがあれば本当に最高です。
すでに存在するものとしては、同人イベントのあとに開かれる「読書会」に少し近いものがあるかもしれません。イベントで出展された同人誌を持ち寄って、参加者が自分の気に入った本を自由に読むことが出来る。そこで参加者同士で話が盛り上がることもあるでしょう。マンガサロンは、そうした場所を恒常的に設ければ面白いのではないか、という試みに他なりません。
具体的な形としては、マンガ喫茶のようにある程度の蔵書は揃えてもいいですが、それ以上に、まず快適にくつろげる広めの部屋を用意して、そこでのんびりとマンガを読める空間を作ることが第一の目的です。さらには、コーヒーやお茶・軽食などもゆったりと楽しめるのも重要。インターネットや作画作業が出来るPCを用意して、いつでも使えるようにするのもいいですね。サービス自体はマンガ喫茶・ネットカフェと変わらないように見えるかもしれませんが、「長時間多くの仲間とのんびりくつろげる広い空間を作る」という点で一線を画すものにしたい。
長時間の利用を想定するということで、半日、あるいは一日の長さで利用料金(数千円)を設定します。もし、本当にそうした場所が出来て、数千円の利用料で一日楽しめるとなれば、是非とも行きたいですね。友人同士で一部屋借り切って楽しめるようにするのもいい。どこか東京で人が集まる場所なら、十分に出来そうな試みだと思います。
<9・26>
・ビッグガンガンからは「よいこの君主論」に注目。
先日は22日発売のガンガンコミックスから、期待の新刊を2冊ほど紹介しましたが、今回は25日発売のビッグガンガンコミックスから、個人的に期待している作品を紹介したいと思います。それは、「よいこの君主論」(原作・架神恭介+辰巳一世、作画・ミサオ )です。原作はちくま文庫から出ている児童小説で、小学校のクラスの覇権争いを通じて、あのマキャヴェリの「君主論」を子供向けに分かりやすく解説するという、意欲的な小説になっているようです。
基本は小学生のクラスなので、みんな小学生らしい遊びや勉強に日々勤しんでいるのですが、そんな中に「クラスで覇権を握る」という目標に向けて、野望に燃える一部の子供たちがいて、自分の勢力にクラスメイトたちを言葉巧みに引き込んだり、あるいはライバルを直接対決で打ちのめしたり、そういった権謀術数の限りを尽くす姿がとても面白い。基本は小学生のやることなので、あまりに血なまぐさい暗殺やスキャンダルのよう展開はなく、あくまで遊びや喧嘩での対決なので、そのあたりで気軽に笑って楽しめるいい作品になっていると思います。
そして、連載で毎回本編の後に追加される、原典の「君主論」に照らし合わせて本編の駆け引きを解説するコーナーがさらに面白い。「文化のまったく異なる地を征服した後は、君主自らがそこに移住して支配するとよい」とか「君主には『良い極悪非道』と『悪い極悪非道』がある」とか、へえそんなことをマキャヴェリが言っているのかと、原典を読んでいない者としては本当に勉強になります。ある意味こちらのコーナーの方が本編よりも面白いくらいです(笑)。
原作の児童小説の方も面白いらしいですし、さらには原典の「君主論」はいわずと知れた名著中の名著。このマンガに興味を持てたら、それをいい機会に原作や原典の方にも手を出してみるのもどうでしょうか。
「よいこの君主論」公式サイト
君主論 - Wikipedia
<9・23>
・ガンガンの2大新連載4コマ「恋するみちるお嬢様」「ピース*2」のコミックス1巻が同時発売。
最近始まったガンガンの2つの4コママンガ「恋するみちるお嬢様」(若林稔弥)と「ピース*2」(鳴海けい)、このふたつの作品のコミックス1巻が、この22日に同時に発売されました。一部の書店ではコラボフェアも行われているようで、かつガンガンONLINEでも特設ページが開設されているなど、スクエニもかなり力を入れているようです。わたしも、このふたつのマンガは、どちらもとても面白い、ガンガンの4コマの期待作だと思います。まず、「ピース*2」。これは、女子高生なのに官能小説家でエロ大好きな間宮さんと、彼女に翻弄される男子生徒の瀬川くんの掛け合いを描く、とても楽しいギャグコメディになっています。ふたりを取り巻くキャラクターたちも、間宮さんに負けず劣らずの変態だったり、一癖もふた癖もある個性派揃い。とにかく笑える4コママンガの良作となっています。
そして、「恋するみちるお嬢様」。こちらは、クールでドSな家庭教師・榊と、彼に恋したみちるお嬢様の楽しい掛け合いを描いたラブコメディ。榊のみちるを見透かして小バカにしたような言動と、それにいちいち反応して怒るみちるお嬢様のツッコミがとても面白い。こちらもすごく笑えて楽しい4コママンガで、ガンガンで連載が始まって以来毎月楽しみに読んでいました。
また、この「恋するみちるお嬢様」の作者の若林さんは、かつて芳文社で創刊されて話題となった「コミックギア」の連載作家のひとりでしたが、わずか2号で休刊してしまい、そこでの連載も立ち消えとなってしまいました。しかし、その後粘り強く活動を続けておられたようで、晴れてガンガンで連載を獲得し、こうしてついにコミックスの発売にまで漕ぎ着けたのは、かつてを知るわたしとしても、ひどく感慨深いものがありました。今回の連載は本当に良作になっていると思いますし、興味のある方は、「ピース*2」と一緒に是非とも手に取ってみてください。
「ピース*2」&「恋するみちるお嬢様」1巻発売記念フェア(ガンガンONLINE)
少年ガンガンの新作4コマ2作が同時発売でコラボフェア(コミックナタリー)
<9・19>
・真西まりさんの商業誌初単行本がついに発売!
先月末、真西まりさんが、REXで連載していたコミックスの1巻が発売されました。以前、まだ商業で活躍する以前から知っていて、長い間商業誌でデビューしてくれないかなと思っていただけに、ついにここまで到達して喜びもひとしおです。コミックスのタイトルは、「僕が女装して弾いてみたらバレそうな件」という、いかにもあれなタイトルなのですが(笑)、これは元々一迅社の「女装少年アンソロジー」に読み切りとして収録されていた作品を、REXで連載化したという経緯があります。女装少年+軽音楽というなんとも流行りの組み合わせだと思いますが、しかしこれはかなり面白いマンガだと思います。ネットアイドルとして人気だった美少女が実は女装少年で、同じクラスの女の子に女装がバレそうになりつつも、リアルでも音楽活動を始めていくというストーリーなのですが、今までネット中心に女装していた少年が、リアルでの女装にも目覚めていくという展開が、女装少年ものとして面白く、かつ真西先生の絵もとてもいい感じに可愛いのもおすすめのポイントです。
ところで、このコミックスの帯に、あの「ゆるゆり」のなもり先生のコメントが付いているのですが、これには昔からのつながりがあります。もうはるか昔の話になりますが、元々、真西先生もなもり先生も、かつてネットにあったお絵描き掲示板の常連だったのです。それは、まだお家騒動が始まる前のエニックスで活躍し、のちにマッグガーデンに移った藤野もやむさんのファンが集まるお絵描き掲示板で、「ゆめのかけはし」という名前でした。「まいんどりーむ」や「ナイトメア・チルドレン」が人気だったころが最盛期で、多くのファンが集まっていました。
その掲示板の常連の中で、のちに商業誌で最も成功したのがなもりさんで、「ゆるゆり」の1巻のある店舗(メロンブックス)の特典小冊子では、そこの掲示板の常連でなもりさんと親しかった方たちが、アンソロジーを寄稿しています。他にも多くの方が、今でも同人で活動を続けておられるようです。そんな常連の中で、もうひとり、この真西さんが商業誌で連載を始め、こうしてついにコミックスまで出したのは、本当に感慨深いですね。かつて掲示板が最盛期だった頃より、かれこれ10年以上経っているはずです。かつてのエニックスファンサイト出身の作家さんということで、これからもずっと応援していきたいですね。
<9・2>
・佳月玲茅さんがビッグガンガンで久々の新連載。
ちょっと前まで、ガンガンパワードやONLINEで連載していた佳月玲茅(かづきれち)さんが、久々に新連載を始めるようです。今回の連載先はビッグガンガン。もう長らく姿を見ないままで、このままいなくなってしまうのかなと思っていた矢先の復帰だけに、喜びもひとしおでした。最初に佳月さんのマンガを読んだのは、当時まだ紙媒体の雑誌として出ていたフレッシュガンガンの読み切り「ドクサイ某国プリンセス!」でした。日本のとある島の支配者となった某国の王女の奮闘ぶりを描く物語で、かわいらしい絵柄としっかりと考えさせるストーリーが両立した印象的な作品でした。そのフレッシュガンガンの新人読み切りの中でも、最も気にいったくらいで、これは期待の新人だと思っていました。
しかし、その後の佳月さんは、しばらくは当時スクエニが出していた「萌えアンソロジー」での読み切りの仕事が続き、その後ようやく獲得した連載は、ゲーム「キミキス」のコミカライズ「キミキス 〜after days〜」。さらには、これもゲームの一編のコミック化である「ひぐらしのなく頃に 昼壊し編」でした。どちらも作者の丁寧な仕事ぶりが感じられる力作だったと 思うのですが、しかしどちらもコミックス1巻程度の短期連載で終わり、そしてわたしが待ち望んでいたオリジナルの連載は、ついに最後まで出ることなく、そのまま掲載は途絶えてしまいました。最初に読んだ「ドクサイ某国プリンセス!」の好印象が残っていただけに、出来ればこの作品の連載を読みたかったくらいでしたが、残念ながらそれが適うことはありませんでした。
結果として、佳月さんの最後の作品となった「ひぐらしのなく頃に 昼壊し編」の掲載が終了したのが2009年9月。ほどなくしてコミックスが出たのを最後に、完全に作者のスクエニでの活動は途絶える形となりました。あれからほぼ3年近い月日が経って、まさかここで復活することになろうとは、夢にも思いませんでした。
そんな久しぶりとなった今回の連載ですが、小学館のガガガ文庫の人気ライトノベル「やはり俺の青春ラブコメは間違っている」(原作・渡 航、イラスト・ぽんかん)のコミカライズであるようです。残念ながら今回もオリジナルではなく、ライトノベルのコミカライズという形のようですが、それでもやはり復帰はうれしい。原作のライトノベルも、ぽんかんさんのイラストも気に入って注目していた作品のひとつだったので、その点でもうれしい。来月のビッグガンガンが待ち遠しいですね。