そのため税制適格年金はいち早く2002年頃に、2012年3月末で廃止されることが決定した。そこで受け皿になったのが確定給付企業年金と確定拠出年金。確定拠出年金というのは、運用成績が悪ければその分、受け取る年金額が減るというもの。つまり、企業年金運用のリスクを会社から従業員に転嫁する制度である。
一方の厚生年金基金は改革が進まなかった。厚生年金基金は一定数の同業種の業者がまとまって設立することができ、そのとき必ずといっていいほど所管する厚生省(当時)から年金基金への天下りがあったから、メスを入れられなかったのだ。税制適格年金では天下りの話はほとんど聞かないのと対照的だった。
その実態が今年、AIJ投資顧問によって厚生年金基金の資産が食いつぶされていた事件で世にさらされた。運用側の投資顧問会社の問題とともに、無責任な天下り役人の存在がクローズアップされたことで、ついに今回、10年かけて廃止しようとなったわけだ。税制適格年金に遅れること10年。周回遅れの改革としかいいようがない。
では厚生年金基金が廃止されるとどうなるのか。「確定給付企業年金」「確定拠出年金」などに移行しなければならないが、いずれにせよ形を変えた年金カットにしかならない。というのも、厚労省の資料では現在576ある厚生年金基金のうち、その半数にあたる286の基金が積立不足を起こしている。会社が穴埋めしてくれない限り、老後にもらえる年金が移行の際に削られるにちがいないのだ。
10年前であったら運用の失敗による傷もまだ浅かったはずだが、この10年間で積立不足は大きくなっている。天下り先にメスを入れることをためらった行政のツケは、こうして国民に押し付けられるのだ。
問題のない厚生年金基金については存続させるという例外的な話も出ているが、該当するのは一部の恵まれた企業に限られる。
そもそも自営業者は国民年金(1階)だけ。そうした人から見れば、企業年金(3階)は別世界の出来事に過ぎないともいえる。
『週刊現代』2012年11月17日号より
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