JR江差線:「廃止前に乗りたい」 異例の混みように
2012年11月11日
利用客低迷のため、JR北海道が江差(えさし)線の木古内(きこない)−江差間(42・1キロ)の14年春の廃止を提案してから2カ月。以前から予想された事態で、沿線の木古内、上ノ国、江差の3町は冷静に受け止め、了承する方針だ。ところが、ここにきて、にわかに利用客が急増。「なくなる前に乗っておきたい」と、大勢の鉄道ファンや旅行者が訪れている。【近藤卓資】
◇ファンや旅行者が急増
土曜日の10月27日午前11時48分、木古内駅を発車した1両編成のワンマン列車には29人が乗車した。同駅によると、「数人」が常態化していた同区間にとっては「異例の混みよう」だという。カメラを持った鉄道ファンとみられる男性のほか、家族連れもいる。
列車は山間地に入り、モミジが車窓に広がる。5歳の長男と乗車し、ビデオカメラで車内や風景を撮影していた札幌市北区の主婦、森崎貴子さん(39)は「ローカル線が好きで来ました。景色が素晴らしいし、沿線の寂れた感じもいい」と興奮気味。休暇で名古屋市中区から来た山岡孝生さん(35)は「これだけ乗っていれば、存続できたのでは」と残念がった。沿線の撮影スポットにはアマチュアカメラマンが並び、シャッターを押した。
同区間に10駅あるうち有人駅は木古内、湯ノ岱(ゆのたい)、江差の3駅だけ。無人駅のほとんどは1日の乗降客が10人以下だという。列車は発車から約70分後、江差駅に到着した。改札では入場券を求める人が並んだ。一人で20枚近く求める鉄道ファンもいるという。
帰りの列車にもほぼ同数が乗った。部活動のため、年30回ほど利用するという上ノ国中2年の小野亮太さん(14)は「前は僕しか乗っていないこともあったので驚いている。列車のほうがバスよりゆっくりできるので後輩のためにも残してほしい」と訴えた。
◇沿線3町、バス化に支援確約求める
江差線木古内−江差は1936年に開業した。檜山(ひやま)地方の木材や海産物の輸送などでにぎわった時期もあるが、沿線地域の過疎化や自家用車の普及が進行。80年に急行がなくなり、82年には貨物も廃止された。