【ロンドン=伊東和貴】英BBCのジョージ・エントウィッスル会長が10日、辞任した。人気司会者(故人)による子どもへの性的暴行疑惑を告発する番組の放映が上層部の圧力で中止になった疑いに加え、別の暴行疑惑報道に誤りがあったことが新たに判明し、公共放送としての信頼を失墜させた責任を取った形だ。
新たに問題となったのは、今月2日に放送されたBBCの調査報道番組ニュースナイト。英西部ウェールズの児童施設で1980年代、保守党の幹部らに強姦(ごうかん)されたという男性の証言を報じた。「犯人」は匿名だったが、ウェブ上では、サッチャー元首相側近だった元上院議員が取りざたされた。ところが元上院議員は自ら声明を出し、「この施設に行ったことはない」と疑惑を否定。被害男性は9日になって、証言の際に「犯人」として念頭に置いていた元上院議員は、実際には暴行に関与していなかったと陳謝し、BBCも謝罪に追い込まれた。
エントウィッスル氏は9月中旬に会長に就いたばかり。直後の10月初め、BBCが昨年11月に人気司会者ジミー・サビル氏の暴行疑惑を告発する番組を制作しながら、当時の編集長の指示で放映を中止したうえ、サビル氏の追悼番組を放送した問題が民放テレビの報道などで発覚し、批判の矢面に立たされていた。今回さらに、ずさんな取材の実態まで明らかになり、就任2カ月に満たずに辞任を余儀なくされた。