現在位置:
  1. 朝日新聞デジタル
  2. 社説

社説

朝日新聞社説のバックナンバー

 大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の社説。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。会員登録すると、過去90日分の社説のほか、朝刊で声やオピニオンも読むことができます。

2012年11月11日(日)付

印刷用画面を開く

このエントリをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 このエントリをdel.icio.usに登録 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをBuzzurlに登録

大飯と安全―規制委の信が問われる

関西電力大飯原発(福井県おおい町)の敷地内の断層が活断層かどうかを調べるため、原子力規制委員会の調査チームは新たに3カ所で調査をする。うち1カ所は東西に最大150メート[記事全文]

いじめ自殺―遺族の心に届く調査を

調査でわかった事実を遺族にきちんと開示する仕組みを作ってほしい。大津の事件を始め、いじめによる自殺で我が子を失った遺族らが訴えている。背景にあるのは「学校や教育委員会は[記事全文]

大飯と安全―規制委の信が問われる

 関西電力大飯原発(福井県おおい町)の敷地内の断層が活断層かどうかを調べるため、原子力規制委員会の調査チームは新たに3カ所で調査をする。

 うち1カ所は東西に最大150メートルずつ掘る大規模なものだ。活断層の疑いが指摘される「F―6断層」の位置を確かめるためで、年内に調査を終えることは難しくなった。

 信頼できるリスク評価のために、科学的データを集めるのは妥当な判断だ。

 だが、新たに掘る南側の敷地は原子炉建屋に近い。調査のための車両や作業員が往来する。作業車や機材が事故時の避難路をさえぎる恐れもある。

 こうした懸念を考えると、追加調査はやはり、原発を止めてからにすべきだ。

 F―6断層は2号機と3号機の間を通っており、真上には重要施設の非常用取水路がある。

 規制委には、活断層という評価が出た場合、行政指導で原発事業者に停止を要請する権限がある。

 活断層の疑いを抱えたまま、原発を稼働させつつ、何カ月も大規模調査を続けることが、安全に配慮した判断と言えるだろうか。

 暫定的な安全判断で再稼働した大飯原発は、需要ピークが過ぎた秋に停止するのが筋でもある。停止要請の権限を予防的に行使すべきだ。

 そもそも今回の調査は、関電の提出データが不十分だったことが発端となった。だが、始動したばかりの規制委は、安全関連のデータの多くを電力会社に頼らざるを得ないのが現状である。今後の追加調査も関電の作業に頼るところが大きい。

 運転継続を望む関電のペースで調査が進むようでは、国民の信頼は得られない。

 規制委は先日来、原発で重大事故が起きた場合の放射性物質の拡散予測で、電力会社のデータにもとづく図に誤りがあり、訂正を繰り返した。再度、総点検するという。

 安全にかかわるところは、電力会社や「原子力ムラ」と明確に一線を画し、信頼感を高めていかなければならない。

 同時に、安全に関する情報を独自に検証できる体制を早急につくることが求められている。なれ合いとの批判を浴びるようでは、原子力安全・保安院の時代に逆戻りしかねない。

 事故の発生を常に想定し、専門的知見にもとづき中立公正な立場で独立して職権を行使する――。発足時の理念どおりの仕事を貫けるのか。大飯の断層調査がその試金石となる。

検索フォーム

いじめ自殺―遺族の心に届く調査を

 調査でわかった事実を遺族にきちんと開示する仕組みを作ってほしい。大津の事件を始め、いじめによる自殺で我が子を失った遺族らが訴えている。

 背景にあるのは「学校や教育委員会は、都合の悪い情報を隠そうとする」という不信感だ。

 遺族は学校で何があったのかを知りたい。ところが、学校は「生徒が動揺する」「個人情報が含まれる」と、アンケートや聞き取りの内容を伏せる。

 他の保護者にも理解されず、遺族が孤立する。裁判に訴えるしかなくなる……。そんなことがしばしば起きる。

 本来、遺族と学校・教委は、対立関係にあってはならない。何があったのかを知りたいのは両者とも同じであるはずだ。

 なぜ子どもが死に追いやられたのかを遺族と一緒に考えて、再発防止に生かす。そんな調査のあり方を探りたい。

 2年前に川崎市教委が公表した調査報告書はその手がかりになる。14歳で亡くなった篠原真矢(まさや)さんの事件に関するものだ。

 報告書は先生どうしの連携の悪さなど、学校の問題点を明記した。いじめの事実関係だけでなく、彼が創作した物語などから内面の動きにも迫った。

 この調査には今後のヒントになることが三つある。

 まず、遺族と信頼関係を築いた。市教委は、週に一度は遺族を訪ね、その時点でわかっていることを伝えていた。

 次に、教訓を共有した。報告書はその学校の保護者会だけでなく、他の市立小中高にも研修資料として配られた。もちろん個人情報は書かれていない。

 さらに、再発を防ぐ取り組みを始めた。例えばいじめの兆候を探るチェックシートやアンケートを使い、子どもや保護者との面談に生かしている。

 真矢さんの父、宏明さんが言う。「事実を知りたい。二度と繰り返さないでほしい。遺族の願いはそれだけ。闘いたくなどない。うちは調査に納得できたから裁判は不要でした」

 遺族と情報を共有しようと言われても、不確かなことを話せば疑われた子を傷つける。そういうジレンマはあるだろう。簡単なことではない。

 ただ、どんな情報もいずれ遺族の耳に届く。確かなことと不確実なことを区別したうえで、可能な限り説明する。結局その方が信頼され、おちついて真偽を見極められるのではないか。

 大津の事件を受けて作られた第三者委員会は、遺族が信頼を寄せる人を委員に加えた。

 川崎や大津の試みを、例外にしてはなるまい。

検索フォーム
キーワード:
教育委員会

PR情報

朝日新聞購読のご案内
新聞購読のご案内事業・サービス紹介

アンケート・特典情報