純ブログ

秋田市の未来づくり。

2012年07月13日

 今日、秋田県と秋田市が協働で実施する「未来づくり交付金事業」についての委員会審議が行われた。

 事業の内容を簡潔に示す。

 ・ 秋田市仁井田の旧農業試験場跡地で、園芸農業(野菜)を中心とした新規就農者を育成する。

 ・ 就農希望者に2年ほど研修プログラムを実施し、その後、農地を持っている方はご自身の農地での営農を、農地を持っていない方は跡地に新たに用意する農地を最長5年無償で貸与して営農してもらう。

 ・ 同じくこの跡地においては県が自然エネルギーを活用した周年型農業の実証実験に取り組む。

 ・ 総事業費は約10億円。今後、農地の整備や管理棟の設置などを行い27年度からスタートさせる。

 といったものだ。

 課題認識として、秋田市は他の市町村に比較し、農業における稲作の割合が高く、野菜や果樹、花きなどの作物への転換が必要だということ。

 また、人口30万を抱え、学校給食、外食産業など、当然のことながら秋田県内随一の消費地であり、この消費に対して、秋田市内での供給率を高めていきたいと考えているが、実際には学校給食への市内野菜の供給率などは目標には届いていないといった実態があること。

 などが、事業の背景にある。

 さて。

 実は、やや乱暴であったが、私は先日、敢えて「乱暴な問いかけ」をフェイスブック上でしてみた。
 「もし、自由に使える10億円があったら、あなたなら秋田市でどんな事業を実施するか。秋田市の将来のために何に使うか。」というものだ。

 400人ほどにその問いかけを発した結果、数時間で60人ほどからご提案をいただいた。
 もちろん、サンプル数が小さく、客観的な統計データとしては使えるものではないし、フェイスブックという特性上、若い世代が多く、業種も3次数産業に従事されている方が多いということではあるのだが、いただいたご提案の中で多かったのは、教育・人材育成や、子育て支援、まちづくり、創業・起業支援などで、「農業」や「圃場整備」といったご提案をされた方はお一人であった。

 さもありなん、である。
 産業構造を見ても、秋田市の総生産(GDP)は1兆2千億で、そのうち1次産業は0.4%に過ぎない。1兆1千億は3次産業で稼いでいる。
 秋田市で農業に従事されている方々を軽んずるという意味ではなく、データとしての事実である。

 秋田市が園芸農業に力を入れたい、ということは理解する。
 しかし、私が腑に落ちないのは、秋田県としての判断はどこにあるのか、ということである。
 同じく、秋田市内には広大な敷地を持つ現農業試験場もある。追分には秋田県立大学があり、県立大学のアグリビジネス学科では40haの実験圃場を持っている。

 こうしたものを横におき、新たに県立「圃場」を整備する必要性はどこにあるか。既存の資源を活用することで十分対応可能ではなかったか。

 また、国際教養大学をはじめとした教育機関、力を入れている秋田港、観光・ビジネスの玄関口である秋田空港や秋田駅などがある、なかいちもいよいよオープンである。
 こうした県都秋田市の都市機能、ハブ機能を活かす、秋田県において唯一秋田市にしかない強み、地域資源を活かすプロジェクトを、というアイディアがなかったものか。

 園芸農業が悪いとは言わないが、こうした「政策の選択」というものが十分に吟味されたのか。

 先日の議論では、この1点のみ、私は強く議論させていただいた。

 しかし、県としては「市町村内部で議論され提出されたものなので、そうした様々なアイディアがあったのかどうか、どういう議論があったのかまでは踏み込んでいない」といった趣旨の答弁であった。
 この未来づくり協働プログラムそのものが市町村から提出されたものを最大限尊重するという制度趣旨であるということもあるのだろう。

 とは言え、残念である。
 農業試験場跡地に10億かけて園芸農業に力を入れる、ということが、秋田市の政策や秋田県の政策として、どの程度の優先度・緊急度・比較優位性があるか、ということが示されないまま、この1つの事業だけを絶対評価して、必要かどうか、やるべきかどうか、を論ずるだけでは不足だと私は思っている。

 もっと具体に言えば、新規就農者に県有圃場をタダで5年にわたって貸すことがアリならば、秋田駅前の空き店舗も県が所有して、店をやりたいという人に5年タダで貸してあげてもよい。
 県の第2庁舎に用意されている創業支援貸しオフィスも、県の施設なのだから家賃など取らずに5年でもタダで貸してあげたらよい。

 要は、産業振興に10億使うとして、各産業間の比較考量や制度的均衡などが図られないままに、「新規就農を増やしたい、野菜を増やしたい」という1つのテーマだけで事業が決まっていくことが問題なのではないか、と思うのである。

 そういうことをしっかりと正面から議論してこその県・市の「協働」であり、県費を数億円投入する以上、県もそうした「そもそも論」をやらねばならぬのではないか。そこは「秋田市が」では寂しい。

 また改めて書くこととしたいが、制度的にいろいろと問題がある交付金事業であると私は思っている。
 佐竹知事の肝入りの事業に対して申し訳ないが。

 

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沼谷 純はこんな人!

昭和48年3月
秋田市生まれ。仁井田育ち。
平成7年4月
秋田県庁入庁、企画調整課配属。
平成22年12月
政治を志し、秋田県庁を脱藩!
(退職)
平成23年4月
秋田県議会議員に初当選。
現在
秋田市横森在住。

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