ＪＲ西日本は10日、ＪＲ福知山線脱線事故の被害者を対象に説明会を開き、事故現場を木々に囲まれた「祈りの森」の空間として整備することなどを提案した。同社が具体的な現場保存の在り方について見解を示すのは初めて。真鍋精志社長は閉会後に記者会見し「慰霊と鎮魂、安全を誓う場として整備したい」と説明した。

　説明会は兵庫県内のホテルで非公開で開かれ、遺族や負傷者ら約170人が出席。ＪＲ側は現場となった兵庫県尼崎市のマンションについて「事故の悲惨さや安全の大切さを後世に伝える証しとして、一部を保存したい」などと提案した。

　これまでのアンケート調査で遺族などから「マンションを見るのがつらい」との声が寄せられたことから、保存現場は周囲から見えにくいように配慮。「木々に囲まれ、厳粛で落ち着きのある祈りの森のような空間」とし、慰霊碑や献花台の設置も提案した。

　ＪＲ西によると、説明会では被害者側から「事故を実感できる視点を重視して」「遺品の展示について被害者と一緒に考えてほしい」などの要望があった。真鍋社長は会見で「時間をかけて被害者や近隣住民の意見を伺っていきたい」と述べた。整備の時期には言及しなかった。

　現場保存を巡ってＪＲ西はこれまで２回、遺族らにアンケートを実施。大半が慰霊碑の設置に賛成する一方、マンションの保存については「全部保存」から「全部撤去」まで意見が分かれている。