仏像:内部に足利尊氏の髪? 文書に「納めた」記載 X線調査、頭に包み紙
2012年11月10日
足利将軍家にゆかりの深い大津市の園城寺(おんじょうじ)(三井寺)が所蔵する仏像の頭部に、折りたたまれた紙片が納められていることが、市歴史博物館と独立行政法人・東京文化財研究所の調査で判明した。同寺の古文書には、室町幕府初代将軍の足利尊氏と、嫡男で二代目義詮(よしあきら)の髪入りの仏像を納めたとの記述があり、同館は「どちらかの遺髪が封入されている可能性が高い」としている。
仏像は、国宝の金堂に安置された地蔵菩薩坐像(ぼさつざぞう)(高さ42センチ、幅35センチ)。1350〜70年ごろの作で、足利家御用達といわれる仏師集団・院派に特徴的な作風。木造彩色の寄せ木造りで、同様の仏像は空洞だが、この仏像は首内部に麻布が漆で張られ、頭部がふさがれていることが6年前に判明した。
1368年の「園城寺文書」に「義詮の髪を納めた地蔵菩薩を、源頼朝と尊氏の先例にならい寺の唐院に納めた」との内容の記載があり、今年6月、エックス線撮影して一辺が7センチの包み紙を見つけた。同館の寺島典人学芸員(43)=仏教美術=は「地蔵菩薩は地獄に行く人を救う。将軍も地獄行きを逃れたいと祈ったことの表れではないか」と分析する。
足利将軍の遺髪が見つかった例はなく、撮影した同研究所文化形成研究室の津田徹英室長(49)=日本彫刻史=は「頭髪自体は写っていないので、断定できない」と話す。紙片の取り出しには頭部の解体が必要で、当分、予定はないという。坐像とエックス線写真は13〜25日に同館で一般公開する。【千葉紀和】