CIVILIAN CONTROL
シビリアン・コントロール
COLUMN 005
 

 文民統制(シビリアン・コントロール)は、一般的に政治が軍事を統制すること或いは政治の軍事に対する優位を定めた制度を指し、その本旨は国家が保有する軍事力或いはその武力組織である軍隊を国を代表する政治がしっかり管理し、必要な場合これをコントロールして合理的かつ適切に行使することにある。我が国においても第2次世界大戦の反省から、その概念や思想が国の政治や行政システムに組み込まれ、自衛隊はその統制下に置かれている。即ち、第2次世界大戦後に制定され、1946年11月に公布された現在の憲法では、内閣総理大臣はじめ国務大臣は「文民」でなければならないとされている。そして「文民」の解釈については、政府の国会答弁によると、「@旧陸海軍の職業軍人の経歴を有する者で、軍国主義思想に深く染まっていると考えられる者、A自衛官の職にある者、以外の者を言う」(昭48.12.7.衆議院予算委員会理事会)となっている。また我が国におけるシビリアン・コントロールの現状認識については、同じく「@内閣総理大臣及び国務大臣は憲法上すべて文民でなければならないこと、A国防に関する重要事項については国防会議の議を経ること、B国防組織である自衛隊も法律、予算等について国会の民主的コントロールの下に置かれていることにより、その原則は貫かれている」とされている。(昭55.10.14.衆議院)

 政治を実行に移す行政の分野においても行政府の長(大臣)に対する官僚による補佐機能も間接的にはこれに関わりをもつと一般に理解されている。防衛庁の場合、現行法制上(防衛庁設置法・自衛隊法)文民である防衛庁長官を庁の所掌事務に関して直接補佐するのは、文民の参事官である官房長や局長であり、自衛官の最上位にあって統合幕僚会議の会務総理を職責とする統合幕僚会議議長(将)はもとより、陸海空各自衛隊の実質的な最高責任者である幕僚長(陸・海・空将)も、それぞれが所掌する自衛隊の隊務に関する最高の助言者として長官を補佐することになっているものの、官房長等に課せられているような防衛庁の所掌事務全般に関して長官を補佐する立場には置かれていない。つまり日本の場合は諸外国とは異なって政治家の下に軍人が配置されるのではなく、間に文民官僚等で構成する「内局」が存在し防衛に関する政策、装備、人事、経理などを担当している。作戦運用等軍事専門事項を文民官僚が直接補佐する事に関して問題視するむきもある。

 民主主義国家において、軍事力(組織)の管理及び行使に対してシビリアン・コントロールが適正に機能することは、一国の安全保障及び国防上当然かつ基本的な要素である。そのため我が国では、先ず第一に自衛隊を組織し管理する、即ちコントロールする側の政治(家)が国際安全保障情勢等の適切な認識に基づき、リーダーシップを発揮することが重要であり、これを支える国民の安全保障や国防に対する関心と健全な理解がその基盤になる。また法治国家として、特に有事に政治による自衛隊のコントロールを良く機能させて自衛隊が適正かつ効果的に任務を遂行するため、平時にいわゆる「有事法制」を整備しておく必要がある。

▼ 日米シビリアン・コントロール比較図