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「避難先が便利」 福島・川内村の住民、帰村足踏み

福島県川内村の避難者が暮らす郡山市の仮設住宅。周辺には店や娯楽施設、病院が充実し、都市生活の利便性に富んでいる

 福島第1原発事故で全村避難した福島県川内村の住民の帰村が足踏みしている。一部を除いて避難区域指定が解けて帰宅可能になったが、帰村率は8日現在12.6%にとどまり、多くの村民は郡山市など都市機能の充実する自治体で避難生活を続ける。「スーパーや病院が近くて便利。元の生活に戻れない」。都市生活の利便性に慣れた村民心理が帰村の進まない一因になっている。
 主婦遠藤和泉さん(27)は夫(27)、長男(6)、長女(1)と川内村から避難し、郡山市の仮設住宅で暮らす。「郡山市は店が多くあり、買い物に不自由しない。娯楽施設もあって楽しめる」と話す。

<郡山で進学>
 村にはスーパーや大型店がなく、原発事故前は車で20〜30分かけて隣の富岡町に買い物に出掛けた。子が夜に熱を出すと、いわき市の夜間診療所まで1時間以上車を走らせた。帰りは朝方になることもあったという。
 仮設住宅では車で5分以内の距離にスーパー、子ども用品店、小児科がそろう。レンタルDVD店もあり、アニメを借りて子どもに見せる機会が増えた。村の生活では縁のなかったボウリング場にも行っている。
 「便利な生活に慣れてしまい、帰るに帰れない」。来年春に小学校に進学する長男は郡山市の学校に通わせるつもりだ。
 川内村の主婦(83)は同じ仮設住宅に夫婦で入居する。「総合病院が近くにあって安心する。村は診療所しかなく、通いが不便だった」と言う。
 村では息子家族と同居し、買い物と病院の送り迎えをしてもらっていた。原発事故で息子家族は埼玉県に避難し、離れ離れになった。「高齢者だけの生活だと歩いて買い物に行ける方がいい。仮設住宅に住めるうちは戻らない」と語る。

<「宣言」不発>
 川内村は避難区域指定解除を受けて1月、帰村宣言を出して村民に帰還を呼び掛けた。だが、避難先を引き払って戻った村民は2860人中361人にすぎない。自宅と避難先で二重生活を送る人を合わせても全体の半分の1500人程度だ。
 村の仮設住宅は郡山市に3カ所、いわき市に1カ所ある。中心部に近く、店や病院、娯楽施設が充実している。生活の利便性に富み、村の暮らしとの違いが帰村のネックになっている。
 村の横田善勝住民課長は「もともと過疎化が進み、原発事故が追い打ちを掛けた。帰村を強いるわけにいかず、状況を見守るしかない」と話す。


2012年11月09日金曜日


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