採点の新方式が浸透し、年々順位予想が難しくなった。
今季のGPシリーズは、出だしから驚きの連続だ。
スケートアメリカではまだ17歳の羽生結弦が、いきなりSP歴代最高点を出した。フリーでは小塚が逆転優勝して、日本男子が表彰台を独占。
スケートカナダでは世界王者のパトリック・チャンが2位に終わり、女子では16歳の無名のジュニア選手、ケイトリン・オズモンドが鈴木明子らベテランを退けて優勝した。
この波乱万丈の展開には、いくつか理由がある。その一つは、年々その特徴が浮き出してくる現在の採点方式である。
2004年/2005年から正式に導入された現在の採点方式により、このスポーツは大きく変わった。暗算の天才でもない限り、ジャッジは自分がそれぞれの選手を何位につけたのか、最後の合計が出てくるまでわからない。ジャッジの頭の中にある選手の「格」が、以前より採点に反映しにくくなった。過去に実績のない無名選手でも、質の高い演技を見せれば勝つことが容易になったのはそのためだ。
世界選手権の表彰台に上がった選手でも、うかうかとはしていられない。油断をすれば、無名の新人に負けてしまうということが簡単に起きてしまうスポーツになったのである。
男子のトップ3は、昨シーズンの終わりに揃ってコーチを変えていた。
もう一つの理由は、トップ男子たちのコーチ陣の動きである。
「2位の結果は良かったと思う。だってやる気が湧いてくるもの。正直にいうと、いつも優勝ばかりしていると、人間だから少し士気も下がってくるんだ」
ニコニコと無邪気な笑顔を浮かべながら、スケートカナダでそう語ったのはパトリック・チャンである。スケートアメリカの羽生結弦、中国杯の高橋大輔、そしてカナダのチャンと、昨季世界選手権の表彰台に上がった3人がなぜかGP初戦で全員仲良く揃って2位に終った。
実はこの3人とも、昨シーズンの終わりにコーチを変えている。
チャンは4月に主任コーチだったクリスティ・クラールが辞任。同時に5年ついていた振付師のローリー・ニコルから、新しい振付師に移った。
高橋大輔は、6月に以前のコーチ、ニコライ・モロゾフに4年ぶりに再び師事することを発表。ジャパンオープンでは「この試合に来る前にモスクワですごくいい練習ができました」と言って素晴らしいフリーを演じた高橋だったが、この1カ月間でなぜ調整が狂ったのだろうか。
羽生結弦は長年指導を受けた阿部奈々美コーチから、カナダのブライアン・オーサーのもとへ移った。
コーチを移ると、指導に慣れて成績に反映されるまで2シーズンかかると言われている。新たなコーチと関係を築いてソチ五輪に間に合わせようと思ったら、今年が最後のチャンスだったのだ。
その意味では、この男子トップ3人に関しては試合一つ一つの成績で一喜一憂せずに長期的視線で見守ってみたい。これまで修羅場を乗り越えてきた実力者たちだけに、もっとも重要なシーズン後半までには、必ず調整してくるに違いない。
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