万里の長城遭難:「アミューズトラベル」行政指導を検証
毎日新聞 2012年11月06日 22時39分(最終更新 11月07日 00時01分)
旅行会社「アミューズトラベル」について、観光庁は6日、ア社が北海道・トムラウシ山で09年7月に8人死亡の遭難事故を起こした際の行政指導が十分に行われていたか検証する方針を固めた。近くア社を立ち入り検査し、問題点が判明すれば、なぜ改善に至らなかったのか調べる。
観光庁はトムラウシ山の遭難事故後、旅行業法上の法令違反がないか同社を立ち入り検査した。その結果、天候悪化に伴う危険回避の判断基準がない▽現地の携帯電話の電波状況確認など通信手段の確保を怠っていた−−などの問題点が判明。今回の遭難事故でも、悪天候でツアーを行うかの判断を現地任せにしたり、添乗員が一般の携帯電話しか所持せず連絡が通じにくかったりしたことがア社側の説明で分かっている。
観光庁は09年11月、有識者や業界団体で作る「ツアー登山安全対策連絡会議」を設置。十分な下見や情報収集、引率者が救急救命の技術を持つことなどを求める業界団体のツアー登山のガイドラインを徹底することや、旅行会社各社にマニュアルを作成させるなどの再発防止策を策定し、10年3月にア社に防止策を順守するよう行政指導した。
また、10年12月、法令違反が確定したとしてア社を51日間の業務停止処分にし、その期間中に誤って客10人と契約してツアーに参加させたとして厳重注意した。
停止処分後にも業務が改善されたか確認するため3回立ち入り検査を実施。11年12月の立ち入り検査では問題点が見つからず、改善されたとしてそれ以降立ち入り検査していない。
観光庁を所管する羽田雄一郎国土交通相は6日の閣議後会見で、過去の指導が十分だったか検証する方針を表明した。【桐野耕一】
◇募集型ツアーの月内自粛を発表…「アミューズトラベル」
万里の長城ツアーを企画した「アミューズトラベル」は6日、営業の柱である「募集型ツアー」について、国内は10日出発分から、国外は12日出発分から中止すると発表した。今月中は自粛を続け、各ツアーの安全性を再点検する。
中止前に出発する海外ツアー2件は、南半球で季節が異なることや過去の実績が豊富なことを理由に決行するとした。