JR大阪駅北側の再開発エリア「うめきた」の中核施設「ナレッジキャピタル」の全容が7日発表された。研究施設には大阪大学など5つの大学が参加するが、けん引役となるはずのIT(情報技術)企業はわずかにとどまった。実質的な交流がどこまで進むかは未知数だ。一方で科学ミュージアムの日本科学未来館(東京・江東)とイベント企画などで連携するなど、来場者への情報発信は充実させる。
同施設を運営する一般社団法人ナレッジキャピタル(宮原秀夫代表理事)は、専門的な研究を担うオフィス部分に5大学と11の企業・団体が入ると発表した。
大学は阪大のほか大阪市立大学、大阪工業大学、関西大学、慶応大学。具体的な学部や研究テーマは公表しなかった。阪大と並んで関西の中心的な存在である京都大学の名前もなかった。京大の関係者は「国際的な認知度は京都の方が高い。あえて大阪に出て行く利点はない」と話す。
入居する企業・団体でみても、IT系といえるのは独立行政法人の情報通信研究機構(東京都小金井市)、NTT西日本子会社のNTTスマートコネクト(大阪市)、AR(仮想現実)技術を手掛けるリベラ(東京・千代田)くらいだ。
関西の産学連携拠点の草分けである関西文化学術研究都市(けいはんな学研都市)には、島津製作所や京セラ、NTT、NEC、オムロンなどが研究所を構える。それに比べるとナレッジの顔ぶれは寂しい。
海外勢の存在感も薄い。研究オフィスに入居するのは、ドイツの公的研究機関であるフラウンホーファーOPERに限られる。「アジアを窓口に世界的な交流拠点をめざす」というナレッジの当初構想とは異なる。
研究オフィスには1割の空き室が残っており、ナレッジはそこに海外の有力な研究機関を呼び込みたい考えだ。
ナレッジが開業するのは来年4月下旬。研究オフィスの大学や企業・団体は交流しながら議論を深め、新たな研究テーマを創出する。宮原代表理事は記者会見で、「交流する場を提供すれば、自然発生的に(共同研究などの研究成果が)出てくる」と述べた。
成否のカギを握るのが、大学や研究者、企業を引きつける共通テーマの存在だ。
当初、ナレッジは「ロボシティコア構想」を掲げていた。会場内をロボットが動き回り、来場者と触れ合う。その様子から研究者は課題を見つけ、新たなロボットの構想を練るというものだ。
大阪市などが2004年にナレッジの計画を固めた時から、ロボシティコア構想は目玉として盛り込まれていた。だが大阪市が12年、橋下徹市長の財政立て直し方針のもとナレッジへの支援を縮小したこともあって、構想そのものが凍結された。
構想づくりに携わった阪大の浅田稔教授は「海外の企業や研究者の関心は非常に高かった。欧州で先行して実現してしまう」と残念がる。ナレッジを成功させるには、ロボシティコア構想にかわる新たな旗印が必要になりそうだ。
■情報発信は手厚く 日本科学未来館と提携
一般の来場者への情報発信機能は手厚い。目玉が、科学ミュージアムである日本科学未来館との提携だ。展示や講演会を共同で企画するなどして、研究成果を分かりやすく展示するノウハウを吸収する。
第1弾として来年4月下旬から、「世界一の日本の技と人」をテーマにしたイベントをナレッジキャピタル内で開く。科学未来館の毛利衛館長は「新しい文化の創出を期待する」と述べた。
このほか併設されている劇場のこけら落とし公演として、ロボットと人間が共演する「銀河鉄道の夜」を上演することも発表した。
ショールームにはアシックス、サントリー酒類、ダイキン工業、積水ハウスなど21社・団体が出展する。情報通信研究機構が開発した、立体映像を裸眼で見ることができる200インチの大型ディスプレーも展示する。
ナレッジキャピタルの宮原秀夫代表理事は7日の記者会見で、「子どもを含む、より多くの人に科学に対する関心、理解を深めてもらいたい」と述べた。
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