ダマスカスの知人によると、最近、首都中心部への攻撃が相次いだことから、バース党員のアラウィ派住民が海岸地方に続々と逃げ出しているそうです。首都決戦で自分たちが危うくなることを真っ先に感じたのでしょう。
とくに、昨日の大統領宮殿への初めての攻撃(外れて近くに着弾)は、ダマス市民に大きな衝撃を与えています。
これまで、首都攻防戦のカギを担っていた中心勢力は、北部からの街道の要衝になるドゥーマに展開する自由軍でした。ダマスカス郊外県出身者に加え、ホムス県から激戦経験者が多数入っています。
それに加え、今回のマッゼ攻撃を行った南部のダラアの部隊が北上してきました。ダラアの自由軍も、いまや歴戦の部隊です。この2大勢力に、各地から集合した諸派が加われば、首都包囲までは至らなくても、首都潜入はかなり容易になります。
これに対し、政権軍は精鋭部隊の共和国防衛隊と第4機甲師団をダマスに呼び戻し、対抗しようとしています。両部隊が首都中枢を固めれば、戦力的には政府軍に敵いません。
ただ、首都籠城戦になれば、いまや全国的に裾野が広がった自由軍は、地方での戦闘をかなり有利に進めることが可能になるでしょう。シリア軍はもともと、クーデター防止のために意図的に軍内格差策をとっていて、一般師団は共和国防衛隊・第4機甲師団よりかなり戦力的に脆弱で、しかも忠誠度も低い幹部人事になっています。
ダマス攻防戦と同時に全土で自由軍が攻勢をかければ、政府軍基地のさらなる陥落と、それによる武装強化が期待できます。一般部隊からの離反も加速するでしょう。
こうした展開を予想したうえで、今、SNSでも議論されているのは、アサド派がダマスを撤収し、北西部海岸地方のアラウィ派地域に立て篭もる可能性です。まるでカダフィ末期のようですが、これもまったくあり得ない話ではありません。
そこでちょっと心配なのは、反体制派SNSの論調に、最近、アラウィ派批判が急速に拡散しつつあることです。反体制派の主流派はこれまで、アサド政権が宗派対立に持ち込もうとしたのに対抗し、アラウィ派批判を抑えてきました。それで実際、アラウィ派コミュニティへの直接攻撃の回避に成功してきていたのですが、スンニ派住民が子どもたちまで大量虐殺に遭ったことで、憎悪のエネルギーが急速に膨張しているように感じられます。
自由軍によるアラウィ派民間人の虐殺などといった事態が発生したら、それこそイラク化になるので、革命軍はなんとか踏みとどまっていただきたいと切に願います。
- 2012/11/08(木) 13:22:32|
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