特集ワイド:橋下氏、大阪府知事3年10カ月、大阪市長11カ月 「弱者切り」と言われてもしょうがない
毎日新聞 2012年11月08日 東京夕刊
とはいえ、子どもの家は、生活保護受給世帯が比較的多い地域で利用されている実態もある。こどもの里館長の荘保共子(しょうほともこ)さん(65)はここに自らも住み込み、35年間も子どもたちを見つめてきた。「母子家庭だったり、親がアルコール依存症だったり、育児放棄や虐待を受けている子も少なくない。学童保育と同様に利用料を取るとなれば、来たくても来られない子が多くなってしまう」と反論する。
ふと、玄関に数枚の写真が飾られていたことを思い出し、誰の写真か尋ねてみた。「踏切で列車にはねられたり、虐待を受けたりして亡くなった子どもたちです。みんなここに通っていました」
荘保さんは「こういう地道な活動って目に見える大きな成果が出るわけではない。だからといって行政改革の名の下にカットしていいのでしょうか。たとえ補助金がなくなっても、私はやめませんよ。いや、やめられません」と静かに、強い口調で語った。
大阪は弱者に優しい都市ではなくなりつつあるようだ。
長年、市民オンブズマンとして府、市の行政監視を続けてきた弁護士の辻公雄さん(71)は「公務員の背筋を正したのは橋下さんのひとつの功績。しかし、弱者の立場に配慮するのが行政の基本的な役割だ。ここまで弱者に思い至らない自治体は、これまでなかったのでは」と語る。
解散総選挙の後、万一、日本維新の会の政策が実現するような事態になったら、全国で「弱者切り」が行われるのかもしれない。
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