懸案の震災廃棄物後期処理について、焼却施設や最終処分場周辺の住民説明会を続行中ですが、一般市民の皆さん対象にNEXT21で説明会がありました。
取り急ぎなので報告不十分。
説明会は2部構成。前半は放射線の健康被害についての報告、後半は市による広域処理の説明(→開催要項は
こちら)
僕は前半のみに参加。
前半は東京大学大学院医学系研究科講師・鈴木崇彦氏の講演。
これがまあひどかった。事前に把握していた彼の発言で大かた予想はついていたけど、その予想以上。
彼は繰り返し「我々専門家はデータを持っている」と発言、自分の発言にもっともらしい根拠を示したい気がありありだったけど、「データを持っている」と繰り返せば繰り返すほど、実際の根拠は不明確なんだなと見てとれる。
100mSv以下の健康障害については
@LNT(しきい値なし仮説)はあくまで「仮説」で政策的な配慮に基づくもの
A100mSv以下の発癌や健康障害についてはそれを示すデータは無い
と断言。
ネット上では「(鈴木氏が)100mSv以下では健康障害は無い、と断言」と聞いていて、それよりはやや表現を慎重にしたとはいえ、
これは「専門家」とは思えないいいかげんな「断言」。
100mSv以下については、広島長崎の追跡調査を含め、インパクトファクターの高い医学雑誌に掲載されている論文でも、低線量被曝でLNT仮説を支持する研究報告が行なわれています。ただ、それに反する報告や意見もあるのも事実。しかしそれを最大限考慮し譲歩したとしても、「データが無い」などとは絶対に言えません。彼の様なスタンスであったとしても「この線量領域では論争もあり、わかっていないことも少なくない」と言うべきでした(まあ言うわけ無かったけど)。
LNT仮説については「政策的な配慮」「安全策」との認識が現場の放射線関係者に広くあるのは確かですし、100mSv以下の比例関係については確かにデータは不十分です。が、ICRP自身が、100mSv以下についても、科学的にLNT仮説が正しいと考えるべき旨、近年の文書でも明記しています。
あの山下俊一氏さえ「100mSv以下」については当初発言を修正し「無い」のではなく「わからない」と言っているのです。
また、放射線・放射能の健康障害については、線量との具体的な因果関係に関する解析は不十分ながら、昨年、チェルノブイリ25周年国際会議ではウクライナ政府などから、汚染地域の汚染度と比例する形で、癌以外のさまざまな報告がなされています。汚染地域の膀胱がんの有意の増加も、現場の放射線科医で話題になっています。これらは、むしろLNTモデルや実効線量の算定モデルの不十分さを示唆するものと思いますが、鈴木氏はこうした新しい知見についてまったく言及していません。
仮に「国際的に合意された知見」のみで議論するとしても、例えばチェルノブイリ事故10年を経る1996年まで無視され続けた小児甲状腺がんの問題をどう考えるのでしょう。チェルノブイリ事故による小児甲状腺がんの爆発的増加は、事故後10年を経るまで、国際的には「合意された事実」ではありませんでした。しかし現地の医学報告ではもっとはるかに早い時期からその実態を指摘しており、10年後、ようやく国際機関も否定できなくなり、認められたのです。科学的な「事実」に対しては、鈴木氏のように「上から目線」で「データは無い」などと断言する(←それ自体、意図的なのか単なる勉強不足なのか、科学者として専門家として間違いであり、これだけでも失格)のではなく、もっと真摯で慎重な姿勢が必要であることは、歴史が明らかにしています。
「国際的合意」に至っているかどうかは別にしても、一定の信頼できる「データ」はさまざまあり、そうした議論や論争に一切触れていないのです。鈴木氏が示すような内容は、聞き飽きた「安全神話」でしかありません。(彼が1995年に講演したとしたら、「チェルノブイリ事故による一般公衆被害はいっさいない」と言うでしょうな。その発言がその時点で仮に『間違い』がないとしても、しかしそれは、後で『間違い』だと明らかになります。科学的事実などというのはしょせんそんなものだという真摯で慎重な態度が、「科学者」には必要です)
さらに鈴木氏は、核実験やチェルノブイリ事故による日本人のセシウム汚染状況についても報告し、「しかし発癌が増えているというデータは無い」と断言。確かに、当時かなり汚染されていたことを否定するものではありませんが、これも随分乱暴な議論です。原因はともかく、発癌自体は1960・70年代以降、全体として増加しており、これが核実験によるものかどうかは別にして(核実験によるものだと「論証」している論文さえある)、「因果関係が無い」などと単純に論じられない議論です。
講演後、秋葉区の市民の方から質疑。
「100mSv以下は先生のおっしゃる通り『仮説』だと仮に認めたとして、100mSvで『0.5%癌死』なら、それ以上の癌の『発生率』があるはず」という指摘には何も答えられず。お粗末。
鈴木氏が依拠する広島長崎の原爆被害者のデータの不十分の指摘に関する質問にもまともに答えられず。
質問に立った方は、さらに鈴木氏が3.11前、各地の教育関係者への講演の中で原発の安全神話を振りまいていたことも指摘し、「講演の前に謝罪が必要」と迫ると、「震災で安全に製制御棒が押し込まれており、原発自身の安全性は確保されていた。当時の安全指針に照らして間違ったことは言っていない」と居直り。これは失笑というかあきれますな。ひどさの証明材料をまた増やしたようなもの。
震災廃棄物の処理に関する説明会で、こんなひどい「安全神話」側の人間を採用する市の姿勢も疑います。質問した市民の方も「一方的な話ではなく、(私たちの『意に沿う人間』でもなく)、ちゃんと批判的な意見も聞いた上で、自分たち自身が判断したいのだ」という発言を、市はどう受け止めたか。
震災廃棄物に関する説明会なのに、放射線被害に一般化して講師を招き、その結果、廃棄物処理問題を超えて、市の放射能に関する知識や技術の未熟さを露呈することになったとも言えるでしょう。今回のような企画は、市の愚かさを証明するものです。
関連資料やURLなど、まだ不十分ですが取り急ぎ。
※この記事には続報(→こちら)もあります。

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