アングル:自動車業界に「サンディ特需」も、各社が割引など提供
[7日 ロイター] 米北東部を直撃した巨大ハリケーン「サンディ」による被害で、自動車やトラック25万台以上がスクラップになるとみられるが、メーカーや販売代理店によると、それが今後の新車販売急増につながる可能性があるという。
自動車メーカーはこれまでのところ、新車約1万6000台を処分するとしているが、その多くはサンディの直撃を受けたニュージャージー州ニューアーク港に保管されていたもの。この数字は、米国での販売台数1位の米ゼネラル・モーターズ(GM)(GM.N: 株価, 企業情報, レポート)と2位の米フォード・モーター(F.N: 株価, 企業情報, レポート)が被害台数を発表すれば、さらに増える可能性がある。
サンディによる被害は甚大で、死者は120人を超え、米北東部の800万以上の世帯・事業所が停電に見舞われた。7日までに営業を再開しているニュージャージー州とニューヨーク州の自動車販売店はほんの一握りだ。
ニューヨーク州の自動車販売店協会のマーク・シエンバーグ氏は、被害を受けた顧客の中には新車に買い替える人もいると指摘する。ただ、今はまだ悲しみに暮れており、「当面は自動車販売を第一に考える人はいないと思う」と述べた。
米国での販売台数3位のトヨタ自動車(7203.T: 株価, ニュース, レポート)は、10月はサンディの影響で業界全体として約3万台の販売機会が失われたとしているが、大手各社は、今月後半もしくは年内には販売台数を取り戻したい考えだ。
販売台数上位8社のうち6社は7日、少なくとも新車1万6000台が被害を受け、その大半は処分するしかないと明らかにした。消費者がすでに所有する分も含めると、被害台数は少なくとも26万6000台に上るという。
また、全米自動車販売店協会のシニアアナリスト、ローレンス・E・ディクソン氏は「最終的に、中古車市場からは10万―25万台が処分されることになるだろう」との見方を示した。
全米保険犯罪局によると、2005年に南東部を襲ったハリケーン「カトリーナ」では、約32万5000台が洪水被害を受けた。
<各社が救済措置を提供>
すべての大手自動車メーカーは、被害の大きかった地域の顧客に対し、支払いを最大3カ月先送りできるなど、何らかの救済措置を申し出ている。
被災地域に販売店225店舗を持つ日産自動車(7201.T: 株価, ニュース, レポート)は、社員価格での販売などを来年1月2日まで実施する。GM、フォード、米クライスラーは、被害を受けた自社の顧客に対し、新車の購入もしくはリース契約で500ドルのキャッシュバックを行うとしている。
新車400台が被害を受けたという韓国の現代自動車(005380.KS: 株価, 企業情報, レポート)は新車買い替えのコストを750ドル安くする方針。トヨタも買い替えやリース契約の顧客を対象に、毎月の支払いを3カ月間先送りできる措置を発表した。ホンダ(7267.T: 株価, ニュース, レポート)も被災地の顧客50万人に電子メールを送り、状況に応じて支払いの先送りやリースの延長に応じるとしている。
<ハリケーン「アイリーン」の教訓も>
日産の広報担当者は、同社は乗用車とトラックの新車計6000台を処分しなくてはならないとしている。この数は各社の中で最も多い。次に被害台数が多かったのはトヨタで、少なくとも4825台が被害を被ったとしている。
また、トヨタを含む数社がニューアーク港に自社の新車を保管しており、米プラグインハイブリッド・スポーツカーメーカーのフィスカー・オートモーティブは、同港に保管していた1台10万ドル以上する「カルマ」330台、金額にして3300万ドル以上の被害を受けたことを明らかにした。
先のシエンバーグ氏によると、人口密集地ではない場所なら保管場所を自社で確保できるが、ニューヨーク州やニュージャージー州では地価が高くスペースも限られているため、車は港で保管されることが多い。
GMは、具体的な台数は明らかにしていないものの、韓国から運ばれ、ニューアーク港に保管されていた同社の小型セダン「シボレー・スパーク」が被害に遭ったことを明らかにしている。同社の広報担当者は、販売店の多くがサンディ上陸前に沿岸地域から乗用車やトラックを移動していなければ、損失はもっと大きかっただろうと話した。
ニュージャージー州の自動車販売業界団体のジム・アップルトン氏は、2011年のハリケーン「アイリーン」での教訓を生かし、販売店は可能な限り、高台へ自動車を移動させていたと語った。
(Bernie Woodall記者、Phil Wahba記者;翻訳 伊藤典子 編集 宮井伸明)
© Thomson Reuters 2012 All rights reserved.