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社説

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中国共産党 不安招く対外拡張路線(11月9日)

 5年に1度の中国共産党党大会がきのう開幕した。一党独裁体制の中国の政策方針を内外に示す最高の意思決定の場である。

 胡錦濤総書記(国家主席)は今大会を最後に2期10年務めた総書記を退き、習近平国家副主席をトップとする新指導部が大会後の15日に発足する見通しだ。新体制の方向性を占う意味でも重大な大会だ。

 胡氏は冒頭の活動報告で「国家の海洋権益を断固守るため、海洋強国を建設する。外部のいかなる圧力にも屈しない」と強調し、軍備増強の必要性を訴えた。

 資源確保などを目的とした東シナ海や南シナ海への海洋進出を正当化し、沖縄県・尖閣諸島を国有化した日本を強くけん制するものだ。

 現実に、中国の監視船が尖閣周辺の領海への侵入を繰り返すなど周辺国との摩擦は強まり、東アジアの安定に影を落としている。

 中国は対外拡張路線に対する周辺国の懸念を真摯(しんし)に受け止め、国際協調の道を歩むべきだ。

 胡氏は報告で「全党と全人民の団結により経済規模は世界2位に躍進した」と政権の功績を強調した。

 しかし、一方で「発展が不均衡なことは依然、突出した問題だ」と述べ、格差拡大の深刻さを指摘。2020年までに国民1人当たりの収入を倍増するとの目標を打ち出した。

 まん延する官僚腐敗の根絶への取り組み強化も訴えた。放置すれば党の支配体制が揺らぎかねないとの危機感を反映したものだ。

 問題なのは、民主化の遅れや少数民族問題への取り組みがほとんど示されなかったことだ。

 中国では、政府に批判的な民主活動家らの不当な拘束が続き、10年にノーベル平和賞が贈られた劉暁波氏は今も獄中にいる。中国当局の弾圧に抗議するチベット民族の焼身自殺も後を絶たない。

 米国とともに「G2」と呼ばれる大国として、民主化や人権問題に背を向けてはならない。

 持続可能でバランスの取れた発展を目指す胡氏の指導理念「科学的発展観」は党の規約改正で、毛沢東元主席ら歴代指導者の政治思想と並ぶ重要思想に格上げされる見込みだ。

 だが、胡体制下では経済発展の陰で、貧富の格差や不動産バブル、環境破壊などの社会矛盾が拡大した。中国国内での暴動を含む住民の抗議活動は昨年、約18万件に達し、5年前に比べ倍増した。

 「反日」にみられる中国の対外強硬路線の背景には、国民の不満をそらす狙いがあるのは間違いない。

 次代を担う習新指導部は、これらの矛盾としっかり向き合い、内外の信頼を勝ち取らなければならない。

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