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対応、指摘の半年後 線量測定値誤差問題 改修費1億5000万円

 文部科学省が空間放射線量測定のため設置している可搬型モニタリングポスト(放射線量測定器)675台が実際より1割程度低い値を測定していた問題で、約半年前から「測定値が低いのではないか」との指摘が同省に相次いでいたことが8日、分かった。ようやく改善に乗り出す同省は実態調査や対応策の検討に時間が必要だったと釈明するが、県内の子どもの保護者らは「安心の根幹に関わる問題なのに、対応が遅すぎる」と厳しい視線を送っている。
 文科省によると、「携帯線量計で測定した値よりも低い表示だ」との指摘が住民から同省に寄せられるようになったのは、本格的運用開始から約1カ月後の5月。自治体からの問い合わせもあったという。
 同省は約2カ月後の7月になってから、抽出した200台の実態調査を開始した。8月中には誤差が出ていることを確認し、検出器近くに置いたバッテリーが周囲の放射線の一部を遮蔽(しゃへい)していたという原因も突き止めた。しかし、その後の対応を内部で協議し、市町村への説明は10月下旬になった。今月7日の公表を経て、12日以降、バッテリーの位置を変える工事に入る。
 測定器の価格は一台500万円強。改修工事費用は総額約1億5千万円に上る。同省は検出器の機能自体は正常で、設置方法も事前に同省で確認していたとして、費用負担は業者には求めず、全額国費で賄うという。測定値の誤りについて同省原子力災害対策支援本部は「前例のない取り組みなので十分な知識がなく、想定外だった」とした上で、「対応策の検討に時間がかかった」と住民の指摘から半年もの期間が経過した理由を説明した。
 同型の測定器は県内の公共施設などに545台が設置され、残り130台は隣県にある。今後、改修工事の進捗(しんちょく)状況を随時、ホームページで公表するとともに、測定精度などの点検を実施するという。
 県は夏前、県民からの指摘を受け、文科省に測定器の正確性を確認するよう促していた。「データの信用性を失うことは大きな問題で、県民に不安を与えることにもつながる」(原子力安全対策課)として早期の改修工事を求めている。

■県民「安心の根幹揺らぐ」

 身近にあるモニタリングポスト(放射線量測定器)が実際より低い値を表示していたことに、県内で幼い子どもを持つ親を中心に驚きが広がった。
 誤って低い放射線量を示す測定器がある福島市の北沢又団地の公園で、いつも小学3年の長男(8つ)を遊ばせている市内のパート女性(40)は「数値が低いなとは思っていた。機器に不具合があったとは…」と表情を曇らせた。
 子どもが遊ぶ時は測定器の数値を確認し、遊ぶ時間を決めてきた。測定器の誤差が少なかったため、健康への心配はしていないが、「少しでも被ばくを減らそうと努力してきたのに、判断基準自体が間違っていたなんて許せない」と語った。
 一歳の子どもがいる郡山市の主婦(37)は、自分で購入した線量計で測定した放射線量よりも低い値しか表示されていないことに疑問を感じていたという。「改善に乗り出すまでに半年もかかり、長い間、線量を低く見せていたなんて信じられない」と批判した。

■健康影響ない高村長崎大大学院教授

 県放射線健康リスク管理アドバイザーを務める長崎大大学院の高村昇教授(放射線医療科学専攻)は「現在、県内で人が居住している地域で、もし空間放射線量が1割高くなったとしても健康に影響を及ぼすようなレベルではない」との見方を示す。その上で「測定値に1割の誤差があっても、健康を心配する必要はない」と断言した。
 しかし、測定値に誤りがあったことについて「住民の判断の材料となるべき放射線量のデータが不正確では困る」と苦言を呈した。

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線量が1割低く計測されていたことが分かった「可搬型モニタリングポスト」=8日、福島市北沢又
線量が1割低く計測されていたことが分かった「可搬型モニタリングポスト」=8日、福島市北沢又

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