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【暮らし】

選択的夫婦別姓・婚外子差別の撤廃…「民法改正」案 進展ないまま16年

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 与野党内の異論で、十六年間もたなざらしの審議会提言がある。法制審議会(法制審)による「選択的夫婦別姓制度の導入」と「婚外子の相続差別を廃止」の民法改正案要綱。改正を促す国連人権機関への報告期限が十一月四日に迫るが、政府には報告する中身がない状態だ。 (三浦耕喜)

 神奈川県の元高校教員、宮脇隆志さん(61)=東京都多摩市=は、男性の立場で夫婦別姓を求めている。教員生活三十七年。夫婦の話し合いで子どもを妻の姓とするために戸籍上は妻の姓となったが、教師としては「宮脇」を名乗ってきた。「渋るおやじにも『そのうち、法律的にも夫婦別姓になって戻すから』と言いました」

 ところが、いつまでたっても変わらない。その間、県教育委員会は人事異動を戸籍名で発表するため、自分の異動が分からない教え子も多かった。「せめて退職時は宮脇で」との要望も受け入れられず、今年四月、精神的苦痛を負ったとして県教委を訴えた。

 「社会科の教師として男女平等を教えてきた。もうとっくに夫婦別姓が認められるはずと思っていたんですが…」と嘆息する。

 家族を基本とした日本の戸籍制度では、結婚時にどちらかの姓を選ぶことが民法で定められ、九割以上の女性が従ってきた。子どもも結婚による嫡出子と、そうでない非嫡出子で相続の差別がある。また、再婚を禁じられる期間も男性にはないが、女性は六カ月。結婚も男性は十八歳以上、女性は十六歳以上と差が設けられている。

 これらは男女の平等という基本的人権に反するとして、国連女性差別撤廃委員会はたびたび是正を勧告。昨年十一月には、改善状況を一年以内に報告するよう日本に求めた。

 日本でも、そうした意識がなかったわけではない。法制審が答申を提出したのは一九九六年。だが、当時の与党、自民党内の反対で民法改正の政府案は提出されなかった。

 民主党は野党時代に議員立法として改正案を提出。廃案となったが、二〇〇九年の政権交代後は政府の提出予定法案としていた。だが同党内にも異論があり、政府案、議員立法とも法案が一度も提出されていない。

 このため、政府は国連機関への報告に窮することに。政府は二十四日の民主党男女共同参画調査会で報告案を示したが、国会での政府答弁を列挙したのみで、具体的な中身のないものとなった。

 その一方、現行の民法は「憲法違反」を指摘されるようになっている。婚外子の相続分規定については、一一年八月に大阪高裁による「違憲」とする判決が確定している。

 一二年二月には夫婦別姓を求める初の国家賠償訴訟が提起。今月十日の本人尋問では、原告全員が提訴の理由として、立法府が制定すべき法律を定めていない「立法不作為」を挙げた。

 女性の六カ月再婚禁止規定では、今月十八日に岡山地裁が合憲としたが「違憲ではないと解する余地も十分にある」という微妙な言い回しだ。

 民法改正を推進してきた「mネット・民法改正情報ネットワーク」の坂本洋子代表は「国連勧告を踏みにじり、政府の責任を放棄し、国民を欺くもの。全ての国会議員に責任がある」と話している。

 

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