生活道路:車優先「考え変えて」 時速30キロに規制を

毎日新聞 2012年11月08日 12時34分(最終更新 11月08日 17時14分)

千葉県鎌ケ谷市東初富地区内に設けられた狭さく。オレンジ色のポールで車道を狭め、速度を落とさないと通れない仕組みにしている(画像を一部処理しています)=2012年6月、馬場直子撮影
千葉県鎌ケ谷市東初富地区内に設けられた狭さく。オレンジ色のポールで車道を狭め、速度を落とさないと通れない仕組みにしている(画像を一部処理しています)=2012年6月、馬場直子撮影

 全国の通学路や生活道路で交通事故が多発する中、政府や自治体の対応はなかなか進まない。生活道路対策の第一人者である久保田尚・埼玉大大学院教授に現状と対策を聞いた。【馬場直子】

 −−通学路で児童が犠牲になる事故が相次いでいます。

 路肩で車のぎりぎり真横を歩くなど、子供たちは非常に危険な状況で通学している。交通事故被害者の命運を分けるのは車の速度。時速30キロなら10人中9人が助かる。時速50キロになると10人中8人が亡くなる。通学路や生活道路は時速30キロにとどめるべきだ。

 −−どのような対策が有効でしょうか。

 制度自体は整備されてきた。96年、時速30キロに制限し交通弱者に配慮する「コミュニティ・ゾーン」がスタート。5年後、速度抑制に有効な対策として路面の一部を盛り上げる「ハンプ」や車道幅を部分的に狭める「狭さく」が道路構造令に盛り込まれた。昨年、一定地区に時速30キロ規制をかける「ゾーン30」も始まった。

 −−でも、街中の道路が安全になったとは感じられません。

 欧州連合(EU)の多くの都市は市街地にゾーン30を導入済みで、ドイツのケルン市は約350カ所ある。海外に比べ日本は遅れている。住民の要望の受け皿がなく、対策を始められない。行政の担当者がハンプや狭さくを知らない。知識がなければ対策は注意喚起の看板設置で終わってしまう。生活道路対策の予算もない。車優先の発想も残っている。通学時間帯に車を通行止めにする案が出ても「混雑する」という理由でストップがかかる。

 −−日本は無意識のうちに車優先の視点になっています。

 現在の道路法や道路交通法は生活道路や通学路を定義せず、(抜け道として使う)通過交通を排除する発想がない。そろそろ考えを変えるべきだ。韓国では抜本的な対策が始まり、学校の半径500メートル以内の安全策は徹底している。道路脇に自動速度計測器を設置し、車が時速30キロを超えると警告して、速度違反に一般道路の2倍の反則金を科している。片側3車線の幹線道路にもハンプを設けた。「子供の命が何より大切」という強いメッセージを国が打ち出し、政策を進めている。

 【ことば】狭さく

 車道にポールを立てたりカラー舗装したりして車道幅を狭くすることで、車の速度を抑制する仕組み。道路構造令で車道幅は4メートルと規定されているが、狭さくを設ける場合は3メートルまで狭めることができる。

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