一瞬、何を言っているのかわからなかった。
「次は、初回からいいピッチングができるよう修正しないといけないですね」
この夏の甲子園で、プロ注目の左腕、濱田達郎を擁する愛工大名電(愛知)は、初戦で浦添商(沖縄)と対戦。序盤で濱田が5失点し、最終的に4-6で敗れた。そして試合後、濱田はまるで明日また試合があるような調子でこうコメントしたのだ。
「次」――?
初戦敗退である。しかも、高校野球はこれで最後なのだ。
だが直後、「次」というのが、プロを指しているのだと理解した。プロ志向の強かった濱田らしいといえば、実に濱田らしい言い回しだった。
それにしても、最後の夏で敗れ、聞かれてもいないのに「次」の話をした選手というのは記憶にない。高校野球は、あくまで通過点。そう、露骨に言ってしまっているわけだ。
その濱田は先のドラフト会議で、中日から2位指名を受けた。今ドラフトで、濱田とは若干ニュアンスは異なるが、同じような志向を持つ左腕がいた。
ソフトバンクから5位指名を受けた福岡工大城東(福岡)の笠原大芽だ。
「プロに行きたい」ではなく「プロに行きます」という心構え。
笠原は「プロへ行くのは、当たり前だと思っていた」と語っている。
笠原の場合、それもわからない話ではない。父・栄一は1984年にロッテからドラフト1位指名を受けた元プロ野球選手。兄・将生も4年前、福岡工大城東を経て、ドラフト5位で巨人へ入団している。つまり、正真正銘のプロ一家なのだ。
福岡工大城東の山本宗一監督も、笠原が入学したときの印象をこう話していたものだ。
「衝撃的でしたよ。プロに行きたいじゃなくて、行きます、って感じ。普通、高校生なんて、甲子園行けたらいいな、って感じじゃないですか。だから、1人だけ雰囲気がぜんぜん違った」
こうした意識の差は、後に大きな差となって表れるのではないか。
その見本が、今や球界を代表する捕手であり、打者になった巨人の阿部慎之助なのである。
安田学園(東京)の前監督で、阿部の恩師である中根康高は、しみじみとこう語っていた。
「素質的にはこれまで見てきた選手の中でも、ベスト10に入るか入らないかでしょうね。でも、高校生ぐらいだと、普通は、周りが騒ぎ始め、スカウトが見に来て、初めてプロを意識する。それで指名されて、じゃあ、行こうってなるんです。阿部はそこらへんが違った。彼の場合は、入ったときから『プロへ行く』って言っていた。そこはやはりお父さんの影響でしょうね」
阿部の父・東司は習志野高校(千葉)出身で、高校時代はあの掛布雅之(元阪神)とクリーンナップを組んでいたほどの選手だった。それだけに、「プロ」がそもそも身近にあったのだ。
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